7・7シンポ…共同候補実現の条件2006/07/09

 さらに既成政党(社民党、共産党)の立場から見てみます。
 選挙協力によって当選可能性が高まるのだから既成政党にとっても、いい話なんじゃないの? 協力の方法や中身にもよるだろうけど、一般的にはそうもいえる。しかし具体的に考えると様々な問題があります。
 ①政党にとって選挙の取り組みは本業であり、政党として選挙をしないということは存在意義にも係わる問題。
 ②政党要件があるという優位性がなくなる。みんなが「政党要件を持つ自分たちに協力してくれればいい」のであって、どうして訳のわからない市民グループに協力しなくちゃならないのか、っていうのが政党の本心。現状ではアクティブな護憲派市民の多くが社民党か共産党に投票していると思われるので協力してもらう立場、これが市民団体に協力させられる立場になる。立場が逆転しちゃうし主導権を保てるかも分からない。
 ③共同候補になると政党名が出なくなり党の存在感が希薄になる。さらに現状の選挙の闘い方は、社民党も共産党も選挙区選挙と比例選挙を一体に位置づけて連携させて体制を組んでいるので、一部の共闘でも全体の体制に影響してしまう。
 ④政党助成金は当選者の数に基づく議員数割だけでなく、落選候補も含めた得票数割分がある。公認候補以外はカウントされないので、助成金が減ってしまう。現に昨年9月の総選挙では社民党は当選者を1名増やしたが、候補者が少なかったために助成金は少なくなっている。なお、共産党は政党助成金を受け取っていないので関係ない。
 まあ、こういうのはハッキリいって党利党略ですね。ただそういう政党の利害も踏まえてはおかないと。

 また、共同候補を目指したいという立場(←ワタクシメ)からも、様々な不安が残ります。
 ①参議院比例区の場合は、非拘束名簿式比例代表制度という複雑な制度であり、新しい候補者リスト(確認団体)の名前を現在の政党名以上に浸透させることが本当に出来るのか。これに失敗した場合、破滅的な事態になりかねない。社・共ともに得票の多くは党名で得ている(社民党で6割強、共産党で9割前後、全体では5割程度)ことを考えると、党名の投票が大量に無効票になり、かつ新リストが十分に浸透させられなかった場合は護憲派全体の得票が激減する可能性がある。実際いまでも「社会党」って票は結構出ているので、選挙時だけの取り組みでリスト名を浸透させるのはかなり難しいと思われる。
 ②選挙区の共同候補の場合、その選挙区における政党としての活動の多くが共同候補の活動に収れんされてしまい、比例票のための活動が困難になる。社・共とも議席の獲得は比例区頼みであることを考えると、選挙区と比例区をセットで政党選挙を志向した方が効率的であることは間違いない。

 その他もろもろありますが、善意で考えてもなかなか難しい。数十年単位で日常的に活動して一定の浸透を果たしている現在の政党名以上に、選挙時のみ活動で共同リストの名称を広く深く浸透させることが出来るのか。相当の実務能力と相当なブームが押し寄せないと難しいのじゃないか。正直に言ってそう思わざるを得ないのです。
 好意的な立場のワタクシメから見ても、ちょっと難しいと評価せざるを得ない状況です。

法制局からレク2006/07/10

 今日はT議員とK議員と衆法制局T氏に来てもらってレク。さすが条文を書いた人だけあって本当に詳しい。こちらの問題意識が知られてしまうというリスクもあるが、やはり立法者の意図や経緯を把握しておくことは大切だ。研究者の論文とかもそれなりに読ませてもらっているが、ソモソモ論の水準のものがほとんど。条文の適用のされ方や一般法との関係解釈の幅の見極めなど、法制局は研究者よりはるかに水準が高い。T氏は職務忠実、政治的には厳正中立の絵に描いたようないい意味での官僚だが、樋口陽一氏の教え子だそうで本当の内心は護憲派らしい。本人は決してそうは言わないのですが。

インドならなぜ良いのか?2006/07/10

 インドは9日、東部オリッサ州で、核弾頭を搭載できる新型の中距離弾道ミサイル「アグニ3」の発射実験をした。高度12キロまで上昇し標的をとらえないまま海上に落下した。アグニ3は射程3500キロで北京・上海など中国の主要都市に届くとのこと。事前通告はあった模様。
 北朝鮮の味方するわけじゃないけど、インドは良くて北朝鮮だと悪いというのはなぜ?北朝鮮からすれば、自分たちだけよってたかって虐められていると思うのは当然じゃないか。アメリカは大陸間弾道ミサイルミニットマンⅢ等を500基以上も実戦配備しているし、ロシアはSS25等を700発近くも配備している。弾道ミサイル実験自身を禁止する国際法はない。
 インドはいいけど、北朝鮮はダメとかいうダブルスタンダードはやはり説得力を減少させる。金正日は特にケシカランけど、他の45の弾道ミサイル保有国もケシカランのじゃないか。
 現在、弾道ミサイル拡散を規制しているのは「ミサイル技術管理レジーム(MTCR)」、「弾道ミサイルの拡散に立ち向かうためのハーグ行動規範(HCOC)」等の強制力のない緩やかなものだけ。北朝鮮の1回の実験で大騒ぎするより、せめてNPTなみの規範力を持つ弾道ミサイル不拡散体制を確立することこそ必要なのではないのか。

7・7シンポ関係…共同候補の現実2006/07/12

 共同候補というと、まず沖縄の選挙が思い浮かぶ。最近崩れつつあるとはいえ、沖縄には長い革新共闘の歴史があり、革新候補が一本化出来ると高い確率で勝利できる。前回の参議院選挙の糸数候補しかり、4月の沖縄市長選の東門候補しかり。
 しかし、全国を見渡すと、共同候補が必ずしもプラスになるとは限らない例がたくさんあるのです。

 分かりやすいのは青森県知事選の例。
●95年の青森県知事選 社民系候補が9・9万票、共産系候補が3・0万票。
●99年の青森県知事選 社民党候補が8・9万票、共産系候補が3・6万票。
●03年の青森県知事選 共同の候補(社民、共産、新社)が3・5万票。

 03年の選挙の社民、共産、新社の共同の候補の平野良一さんは前回の共産党票にも及ばなかった。平野さんは元浪岡町長で長年にわたって反核燃運動を続けてきた人。高齢ではあったけど、人格・見識も申し分のない候補者だった。確かに告示一カ月前の決定で出遅れではあったけど、平野さんで共同候補でこんなボロ負けしたら、もうどうにもならないよって感じ。結局、この大敗北で旧革新勢力は総崩れになった。
 このとき当選した木村知事がセクハラ不倫疑惑で当選後すぐに辞職して半年後(03年6月)に出直し選挙になるんだけど、社民党は候補者を出せず民主党と相乗り、共産党候補は1.9万票に止まった。
 勝ったときしか報道されないから気付きにくいけど、共闘したら勝てるというのは実はウソ。沖縄はもともと革新が強くて、強いから勝ちに行く共闘が成立する。弱いのもが寄り添う形の共闘は実は多くが負けているのです。もちろんそれ以外にも様々な理由があるのだけど、まとまれば勝てるという大ざっぱな話ではなくて、勝てる共闘のために必要な条件を詳細にかつ具体的に考えていくことが必要じゃないか。
 もちろん勝負自体には負けても、次に繋がる、あるいはそれぞれに持ち帰ってプラスになるような負け方にできれば、共同の意味は大いにある。しかし、結局、マイナス効果が残るような「共闘」も少なくないということも認識はしておくべきだと思う。
 なお否定的なことばかり言っているようだけど、ぼく自身はあくまで革新共闘を推進する立場。ケチをつけて足を引っ張っているわけじゃありません。大ざっぱな善意だけの議論じゃなくて、緻密にプラスもマイナスも考えながら推進しましょうということです。

早めの夏休み2006/07/19

 夏休みの一部を先取りして、5泊6日で沖縄に遊びに行ってきました。
 沖縄には結構行っているんだけど、議員の随行で基地視察とか、自治体首長と会うとか、会合参加とかそういうのばかり。プライベートで友人と行ったときも、結局は基地や戦跡を案内したりということをしてしまう場合がほとんどでした。今回は同行者から、基地とか戦跡行くとか、地元の運動に参加するとかはダメよと言われていたので、本当にただの遊び。それでも1日だけ抜け出して、若手の仲間と、たまたま共通の知人だった若手の研究者とメシを食いましたが。活動家とは違う研究者の視点というのは結構参考になりました。
 日焼けで皮がむけて非常に汚くなっているので、しばらくは隠遁します。

あなたが超A級戦犯ではないのか?2006/07/20

 今日の報道によると、1988年4月頃に昭和天皇が靖国神社のA級戦犯合祀に強い不快感を示していたそうな。当時の宮内庁長官・富田朝彦氏(故人)の手帳に残されていたことが分かったんだって。富田氏は74年に宮内庁次長に就任し88年に長官を退任するまでの昭和天皇との会話などを日記や手帳に残していたとのこと。昭和天皇は78年のA級戦犯合祀以降靖国神社を参拝しなかったが、その理由がこれで明確になった。
 確かに、天皇に否定されたら合祀されているA級戦犯の遺族や靖国神社は困るだろうし、天皇・A級戦犯・靖国神社を一体に崇めていたような連中は混乱するだろうし、それはそれで愉快な面はあるけど、あまり喜んでもいられないのじゃないか。当然、最近、強まっている分祀論が背景にあるわけだし、仮にA級戦犯分祀が実現でもしたら靖国神社それで良しということになってしまう。古賀さんや山拓さんや中曽根さんの分祀論は、A級戦犯がいるといろいろ批判されちゃうし正当化しづらい、分祀して正々堂々天皇にもお参りしてもらうって話だから。
 A級戦犯の扱いに関わりなく、侵略戦争遂行の重大な責任を負い、戦争自体を肯定するイデオロギーを持つ靖国神社には問題がある。また18万余の宗教法人の一つに過ぎない靖国神社を天皇、首相、閣僚等が参拝し、援助・助長・促進することは憲法第20条が定める政教分離原則からいっても許されないことなんだから。いくなら戦争犠牲者を追悼しているすべての宗教団体に行け!って感じ。
 だいたい昭和天皇自身が超A級戦犯なんであって、A級戦犯の合祀に不快感を感じる前に、自らの戦争責任を深く感じろって思うんですが。

●富田メモ靖国部分の全文
 私は 或る時に、A級が合祀されその上 松岡、白取までもが、
 筑波は慎重に対処してくれたと聞いたが
 松平の子の今の宮司がどう考えたのか 易々と
 松平は 平和に強い考があったと思うのに 親の心子知らずと思っている
 だから 私あれ以来参拝していない それが私の心だ(原文ママ)

※「松岡」はA級戦犯として合祀されている日独伊三国同盟を締結した松岡洋右元外相(東京裁判の公判中死亡)、「白取」は白鳥敏夫元駐伊大使(同裁判で終身禁固刑・収監中に死亡)、「筑波」は66年に旧厚生省からA級戦犯の祭神名票を受け取りながら合祀しなかった筑波藤麿・靖国神社宮司(故人)と考えられる。「松平」は終戦直後の最後の宮内相、松平慶民氏(故人)。「松平の子」は慶民氏の長男で78年10月にA級戦犯を合祀した当時の靖国神社宮司、松平永芳氏(故人)らしい。
※昭和天皇は45~75年に8回靖国神社を参拝した。

後生畏るべし2006/07/21

 今日は職場に来客ラッシュ。
 元衆議員Hさんが国会見学のついでに顔を見せ、元職員S君・元バイトN君もあらわれた。
 夕方は別の元職員Sさんを囲んで暑気払い。退職後、韓国に留学して、いまはアメリカの大学院に行っているSさんの帰国にあわせたもの。世界をまたにかけて、どこでもなんでもみてやろうという若い人の姿を見ると、うらやましい気がする。自分は相変わらずの陣地戦で、しかもずんずん陣地が狭まっているわけだから(涙)。

麻垣康三っていうけれど…2006/07/23

 ポスト小泉の有力4候補は「麻垣康三」と言われてきた。麻生太郎(河野グループ)、谷垣禎一(谷垣派)、福田康夫(森派)、安倍晋三(森派)の4人で、政治評論家の有馬晴海氏による造語だそうな。その後、出馬表明した河野太郎氏を加えて麻垣康三郎っていわれたりもした。最有力とされているのが安部さんで、その対抗馬とされていたのが福田さん。二人は同派閥なのでどうなるかとも言われたけど、福田さんが出馬すれば森派外からも幅広く支持を集めて、いい勝負になるとも言われていた。その福田さんが7月20日に不出馬を表明、安部独走態勢に。あ~ぁ、安部晋三で決まりかぁ。まあ福田さんがそれほどいいとも思わないけどねぇ。
 タカ派色がハッキリしている安部さんが相手の方が、野党は戦いやすいという見方もあるけど、これはあまり賛同できない。左の勢力では「窮乏化革命論」っていって、労働者が困窮すればいずれ忍耐の限界に達して決起する=革命が起こるっていう無茶な理論が結構広く信じられていたけど、左の立場から安部政権の方がいいというのはこれに近いのではないか。政権党の政策が右に行けば行くほど批判が高まって揺り戻す? そうは言えないでしょう。確かに対立点を明確にしやすいし、批判もしやすい。でもそのまま、すーと右に行っちゃう可能性だって高いんだから、やっぱ少しでもハト派になるにこしたことはないんじゃないでしょうか。

 それにしても、そろいも揃って世襲議員ですね。
●小泉純一郎:3世(祖父が小泉又次郎、父が小泉純也)
●麻生太郎:5世(大久保利通―麻生太吉―吉田茂―麻生太賀吉/義父鈴木善幸)
●谷垣禎一:2世(父が谷垣専一)
●福田康夫:2世(父が福田赳夫)
●安倍晋三:3世(祖父が安倍寛・岸信介、父が安倍晋太郎)
●河野太郎:3世(祖父が河野一郎、父が河野洋平)
 対する民主党だって代表小沢さんも幹事長の鳩山さんも世襲議員。
○小沢一郎:2世(父が小沢佐重喜)
○鳩山由紀夫:4世(鳩山和夫―鳩山一郎―鳩山威一郎、弟が鳩山邦夫)
 別に世襲だからそれだけでいかんとは思わないけど、全部が全部世襲ばかりっていうのは、やはり世の中の実態を反映している面があるのじゃないでしょうか。これだけどみても、やはり機会均等な世の中とは言えない。再チャレンジもヘチマもないんじゃないの。

国交がなきゃ文句も言いづらいんじゃん2006/07/24

 北朝鮮・拉致問題の話をしていたときに「北朝鮮のような非民主的な軍事独裁国と国交を結ぶ必要はない」と言われた。う~ん。日本が国交結んでいるのって全部民主的な国だっけ?と思ったので調べてみた。ただ民主的かどうかってなかなか判断が難しい。
 例えば、日本では普通、中国のことを「一党独裁」の国としているけど事実ではない。実際は中国共産党以外に八つの党(中国国民党革命委員会、中国民主同盟会、中国民主建国会、中国民主促進会、中国農工民主党、中国致公党、九三学社、台湾民主自治同盟)が存在している。個人的な体験でも来日した大衆組織の幹部達と交流した際、その長が共産党以外の政党の幹部だったことに驚いたこともある。もちろん中国憲法は共産党の指導的地位を明記しているので政党間の公平な競争が行なわれているとは言えないし、規模も比較にならない。共産党以外の人間を重用してみせるのもアリバイ的で、実際は共産党員が回りを囲んでしまうわけだから実質上の意味はない。でも、限りなく一党独裁的ではあるけど、制度としては「中国共産党の指導する多党協力と政治協商の制度」っていうんだってよ。
 日本だって、戦後一時を除いて自民党の一党政治が続いているわけだから、政権交代って視点で見たらかなり成績は低い方でしょう。
 それはそれとしていろいろ探したんだけど、とりあえずFREEDOM HOUSE(http://www.freedomhouse.org/)って団体が提供しているインデックスで分けてみた。政治的権利と市民的自由を1~7の数値で表している。米、英、独、仏、豪、加なんかが(1・1)、日本は(1・2)、北朝鮮とかスーダン、シリア、ウズベキスタンなんかが(7・7)って感じ。この数値を細かく見ていくと必ずしも公平と言えないような部分もあるんだけど、まあキリがないのでとりあえず良しとして、エクセルで足して並び替えてみると、国連加盟国数191+台湾の192ヵ国のうち日本より指数が上なのは46ヵ国。5ポイントと10ポイントで一応切って、5ポイント以下を自由で民主的な国ってすると89ヵ国、10ポイント以下の政治的権利と市民的自由のない国が45ヵ国、その間が58ヵ国でした。人口比で行くと、Freeが46%、Partly Freeが18%、Not Freeが36%、中国がNot Freeに入るからどうしても多くなっちゃう。
 要するに、一応民主的な国っていうのは半分ないんだよね。国交結ぶかどうかは相手がどんな国かなんて関係ないっていうこと。日本は190ヵ国を承認してるけど(国連非加盟のバチカンと国交があるので数が合わない)、北朝鮮だけ承認せず国交もないっていうのはやはり異常。文句言うのもいいずらいじゃん。

拉致をする国2006/07/26

 報道によれば、韓国・国家情報院の真相調査委員会が金大中氏拉致事件をKCIA(韓国中央情報部/現在の国家情報院)の組織的犯行と結論づける報告書をまとめたことが明らかになった。これを韓国政府が正式に認めれば、韓国による主権侵害が明確になる。なお、韓国外交通商省は同委員会に慎重な対応を要請していて正式発表が遅れる可能性もあるとのこと。
 金大中事件っていっても、いまではほとんど忘れ去られてしまったけど、大事件だったよね。73年当時韓国は朴正熙(パクチョンヒ)大統領の軍事独裁政権下で、金大中氏は亡命同然の暮らしを余儀なくされながら海外で反朴運動を行なっていた。73年8月8日、九段下のホテルグランドパレスから金大中氏が突如拉致され、8月13日にソウルの自宅前で解放された。日本側の捜査で、車とモーターボートで韓国船籍の「龍金号」に連れ込まれ出国したことや、拉致現場の指紋から駐日韓国大使館一等書記官・金東雲氏の関与も明らかになっていた。98年2月には「東亜日報」が国家安全企画部の極秘文書を入手し報道し、KCIA部長の李厚洛氏が責任者として立案し、駐日大使館員や大阪総領事館員らが実行した全容が明らかになっていた。今回の真相調査委員会の報告書で、これが概ね裏付けられたようだ。
 李厚洛(イフラク)元KCIA部長は健康上の理由で調査できず、金東雲(キムドンウン)元在日韓国大使館一等書記官は事件への関与を認めているとのこと。朴正煕大統領の指示を裏付ける証拠は今回も見つかっていない。
 結局、拉致事件自体は、73年11月の当時の金鍾泌(キムジョンピル)首相の訪日と75年7月の宮沢喜一外相(同)の訪韓によって政治決着し、捜査は打ち切られた。その後も、元陸上自衛隊二佐・松本重夫氏など自衛隊OBの関与が噂されたり、田中首相が政治決着に先立って李秉禧韓国無任所大臣から現金を受け取ったとも言われたりして、時々話題になった。韓国政府は金書記官がKCIA職員とは認めずに不起訴処分として、国家機関の関与も否定してきた。

 このときは反共同盟国として関係悪化を避け事件に蓋しようとする日・韓政府VS拉致問題の真相解明を求める朴独裁政権に批判的な社会党などの左派・リベラル派という構造だった。昨今の北朝鮮の拉致問題とプレーヤーの立ち位置が入れ替わっているのは面白い。

 戦前の日本は120万人(67万人、81~94万人、600万人、「そもそも強制連行はない」など諸説あり)も朝鮮半島から強制連行して来ているわけだし、北東アジアの国ってみんな拉致が好きなんかな。

 金大中なんて、その後、韓国大統領になってノーベル平和賞までもらったわけだけど、彼は拉致のことは何も言わずに封印してしまった。それほど国家犯罪の後始末っていうのは困難なことなのだなあ。今回「真相調査」が進んでいるのも、朴正煕の娘の朴槿恵ハンナラ党代表への攻撃クサイんだけど、あんまり党利党略を絡金大中が生きているうちに真実を解明しておいた方がいいと思うね。そろそろ時効だしね。