拉致をする国2006/07/26

 報道によれば、韓国・国家情報院の真相調査委員会が金大中氏拉致事件をKCIA(韓国中央情報部/現在の国家情報院)の組織的犯行と結論づける報告書をまとめたことが明らかになった。これを韓国政府が正式に認めれば、韓国による主権侵害が明確になる。なお、韓国外交通商省は同委員会に慎重な対応を要請していて正式発表が遅れる可能性もあるとのこと。
 金大中事件っていっても、いまではほとんど忘れ去られてしまったけど、大事件だったよね。73年当時韓国は朴正熙(パクチョンヒ)大統領の軍事独裁政権下で、金大中氏は亡命同然の暮らしを余儀なくされながら海外で反朴運動を行なっていた。73年8月8日、九段下のホテルグランドパレスから金大中氏が突如拉致され、8月13日にソウルの自宅前で解放された。日本側の捜査で、車とモーターボートで韓国船籍の「龍金号」に連れ込まれ出国したことや、拉致現場の指紋から駐日韓国大使館一等書記官・金東雲氏の関与も明らかになっていた。98年2月には「東亜日報」が国家安全企画部の極秘文書を入手し報道し、KCIA部長の李厚洛氏が責任者として立案し、駐日大使館員や大阪総領事館員らが実行した全容が明らかになっていた。今回の真相調査委員会の報告書で、これが概ね裏付けられたようだ。
 李厚洛(イフラク)元KCIA部長は健康上の理由で調査できず、金東雲(キムドンウン)元在日韓国大使館一等書記官は事件への関与を認めているとのこと。朴正煕大統領の指示を裏付ける証拠は今回も見つかっていない。
 結局、拉致事件自体は、73年11月の当時の金鍾泌(キムジョンピル)首相の訪日と75年7月の宮沢喜一外相(同)の訪韓によって政治決着し、捜査は打ち切られた。その後も、元陸上自衛隊二佐・松本重夫氏など自衛隊OBの関与が噂されたり、田中首相が政治決着に先立って李秉禧韓国無任所大臣から現金を受け取ったとも言われたりして、時々話題になった。韓国政府は金書記官がKCIA職員とは認めずに不起訴処分として、国家機関の関与も否定してきた。

 このときは反共同盟国として関係悪化を避け事件に蓋しようとする日・韓政府VS拉致問題の真相解明を求める朴独裁政権に批判的な社会党などの左派・リベラル派という構造だった。昨今の北朝鮮の拉致問題とプレーヤーの立ち位置が入れ替わっているのは面白い。

 戦前の日本は120万人(67万人、81~94万人、600万人、「そもそも強制連行はない」など諸説あり)も朝鮮半島から強制連行して来ているわけだし、北東アジアの国ってみんな拉致が好きなんかな。

 金大中なんて、その後、韓国大統領になってノーベル平和賞までもらったわけだけど、彼は拉致のことは何も言わずに封印してしまった。それほど国家犯罪の後始末っていうのは困難なことなのだなあ。今回「真相調査」が進んでいるのも、朴正煕の娘の朴槿恵ハンナラ党代表への攻撃クサイんだけど、あんまり党利党略を絡金大中が生きているうちに真実を解明しておいた方がいいと思うね。そろそろ時効だしね。