韓国のロケットと北朝鮮のミサイル2009/08/29

羅老号
 8月25日、韓国政府は同国南西端の全羅南道・高興の羅老宇宙センターから衛生ロケット「羅老(なろ)号」を打上げた。衛生の軌道投入に失敗、世界で10ヵ国目の「自前ロケットで人工衛星を打上げた国」への仲間入りは出来なかった。
 羅老号は2段式で、重さ約100キロの試験科学技術衛星を搭載。1段目のブースターの切り離しには成功したが、目標軌道に乗せることには失敗した模様。ロシアとの共同開発。  航空宇宙研究院は今回の打ち上げに続き、来年5月に2度目の羅老号テスト発射を行なう予定という。ちなみに自前で衛生を打ち上げた9ヵ国は、ソ連、米、仏、日本、中国、英、インド、イスラエル、イラン。(欧州宇宙機関、北朝鮮を除く)
 6月29日、米空軍はICBM(大陸間弾道ミサイル)「ミニットマン3」の発射実験を実施した。カリフォルニア州のバンデンバーグ空軍基地の地下サイロから8700キロを飛行して太平洋上のマーシャル諸島クエゼリン環礁近くの目標に着弾した。弾頭は搭載していなかったという。

 この件についての報道や政府、各党の態度は極めて静かだ。若干の報道はあったが、それ以外はほとんど無反応と言ってもよい状況だ。確かに、アメリカのミニットマンは1970年に開発・配備されたもので特に目新しいものではないが、核廃絶の決意を示したオバマ政権にとって射程1万キロともされるMIRV(多弾頭)弾道ミサイルの実験をこの時期にすることが適切か、極めて疑問だ。韓国の羅老号は、4月5日に北朝鮮が発射した「テポドン2(北朝鮮は「銀河(ウンハ)2号」)と変わらない。
 羅老号は特に問題とされず、テポドンは国際社会こぞって安保理決議だなんだと大騒ぎした揚げ句、制裁(結局「議長声明」となった)だ、船舶検査だということになった。北朝鮮から見たらこの差は納得いかないのは当然ではないか。現に北朝鮮外務省は羅老号打ち上げについて「今後、南朝鮮(韓国)の衛星打ち上げに対する6ヵ国協議参加国の反応と態度を見れば、平等の原則が存在するのか、もしくは崩れたのかが再度明白になるだろう」(北朝鮮外務省スポークスマ、8/10)というコメントを発表し牽制していた。まあ当然だよね。少なくとも平等ではないね。

 ※06年7月のテポドン2発射を受け決議1695を採択。06年10月の核実験に関連し決議第1718号を採択。

 まあ、北朝鮮は核実験をした後の安保理決議に対してあえて挑戦しているわけだから、条件は多少違うけど、彼らの立場からすれば不平等だと考えるのは理解は出来る。韓国のはロケットでOK、北朝鮮はミサイルだから袋だたきで制裁、アメリカなんかICBMそのものを撃っても誰も問題にしないわけだから。
 核の問題にしても、そもそも米ロ英仏中は核保有が許され他の国の核保有を禁止するというNPTの不平等性が根本にあるし、NPTに加盟しないイスラエルやインド、パキスタンの核が事実上放免されていることが公平でないことは間違いない。なぜ北朝鮮の核だけ大騒ぎしてヤレ決議だ、ヤレ制裁だとやられるのか。と思うでしょう。そりゃ。

 確かに北朝鮮はケシカラン国だ。北朝鮮の核実験なんか絶対許せないし、なんとしてでも止めなきゃならない。でも核兵器の攻撃力という面でいえば既存の核兵器国や印・パ・イスラエルは比較できないレベルだし、核拡散という観点でも北の独裁体制よりパキスタンの無秩序の方がよほど差し迫った危機だ。
 ここはやはり公平に国際的規制を強化して、その規制力を強めていくという正攻法しかないと思う。つまり、NPT未加入国には断固として加入を求める。アメリカはNPT未加入のままインドと原子力協定を結びウランを提供するべきではない。NPT未加入のイスラエルにバンバン軍事援助をするなんて論外。パキスタンがNPTに入らない限り一切の援助を凍結するべきだし、カーン博士の「核の闇市場」問題を国際社会の責任で徹底解明すべきだ。NPT再検討会議の議論を実質化しNPT体制を強化する。そしてなにより核兵器国はNPT6条の核軍縮義務を誠実に履行しなくては。
 弾道ミサイルの拡散防止のためには、とりあえずミサイル関連技術輸出規制(MTCR)、弾道ミサイル拡散防止のための行動規範(ICOC)など既存のミサイル拡散防止体制の強化をはかり、ミサイル不拡散体制の条約化の議論を開始すべきだ。弾道ミサイルの新たな開発は原則禁止し、技術的に区別が難しい人工衛生打ち上げロケットの開発にあたっては「実行可能な最大限度まで情報を提供」(宇宙条約11条)することを条件に国際的監視の下で行なうこととすればいい。ジュネーブ軍縮会議(CD)や、生物兵器禁止条約(BWC)、化学兵器禁止条約(CWC)の機能と権限の強化などなすべきことはいくらでもある。
 これまで、こうした国際的な規制の強化に反対してきたのは専ら米国だ。自らの行動が規制されることを嫌って、国際的な軍備管理体制の強化に多くの場合否定的な態度をとってきた。オバマ政権下でこうした姿勢が変化していくのを期待したい。
 結局、お互い様、みんなでやめていこうよ、というやり方しかないのだ。イスラエルはいいけどイランはダメ、韓国はいいけど北朝鮮はダメ、自分はいいけど他の国はダメ、というのじゃなくて。みんなで核兵器を無くしていきましょうよ。みんなで弾道ミサイルとかは持たないようにしていきましょうよ。と。
 誤解の無いように繰り返すけど、北朝鮮への制裁に反対しているのではない。パキスタンやインドへの制裁を早々に解除して、むしろ援助しちゃうなんて論外でしょう。イスラエルの核をどうしてほっておくのか。ということをいってるわけです。

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