あてにならないDNA鑑定:飯塚事件2009/06/18

飯塚事件DNA鑑定
 部会で「飯塚事件」の再審請求代理人である岩田務弁護士から話を聞いた。
 いやあ、DNA鑑定ってどういうものかぜんぜん知らなかったんだけど、大変なものですね。なんとなく科学的で確実なもののような印象でいたのだけど、全然違う。塩基対の配列をデジタルに対照してるのだとばかり思っていたのだけど、初期のDNA鑑定は電気泳動にかけて一定の塩基配列の繰り返し数の違いを長さから判断しているだけ。ぜんぜんアナログな方法だ。マーカー(比較用の物差)の使い方もいい加減で、全然信用にならんぞ、こりゃ。
 イメージでは、パソコンで塩基対の型を照合しているような認識をしていたのだけど、実際はレントゲンのようなあいまいな画像をみながら、うーんこれかな、って感じで決まっていたわけです。鑑定人の能力による差も出そう。実際、飯塚事件の鑑定を科警研と別に実施した石山昱夫帝京大名誉教授は当時の科警研鑑定はズサンで、技術も未熟、「こんな鑑定は私の教室では通用しない」と法廷で発言している。うーん、まったくあてにならんぞDNA鑑定。
 飯塚事件では、足利事件以上に不出来だっと言われる「MCT118型鑑定」だけではなく、「HLADQα型鑑定」、「ミトコンドリア法鑑定」、「PM法鑑定」といくつもの方法で鑑定されているが、HLADQα型鑑定は鑑定が破綻して証拠として不採用、ミトコンドリア法では容疑者の久間さんと同じ型のDNAは出ずに別の型が検出され、PM法はプロトコル(実施要綱)違反で誤りの可能性が高いとさんざんな結果だ。
 ポリグラフ検査、面通しテスト、目撃証言の信頼性に関する鑑定結果等、消極的な証拠も多く、本人が一貫して否認しているなか、決定的な証拠とされたMCT118型DNA鑑定の信頼性が否定された以上、飯塚事件の死刑判決が誤りだったことは明らかだ。
 要するに警察ははじめから、久間さんを犯人として絞り込むといういわゆる「見込み捜査」を行なったのだろう。久間さんを真犯人と思い込み、消極的な材料からは目を背け、有罪に追い込むための証拠集めを行なった。MCT118型鑑定でクロという結果を押し出して、科学的な装いで有罪判決を勝ち取ったわけだ。
 真犯人を見つけるためではなく、犯人と思い込んだ相手を締め上げて「自白」させる、飯塚事件の久間さんは「自白」しなかったので「科学的」なDNA鑑定を押し出して裁判官をだまして有罪判決をとる。DNA鑑定の結果が揺らぎ、再審の議論がはじまったらさっさと死刑にしてしまう。ひでーよ。
 警察・検察は最後まで久間さんを真犯人だと決めつけていたようだが、これだけ証拠能力がゆらいでいるのだから、きちんとした再検証を行なうべきじゃないか。鑑定資料も警察が全部使い切っていて再鑑定が出来ないというのだから、そんなのを根拠に死刑ではかなわない。
 すくなくとも90年代初頭までのDNA検査は実験段階で実用に耐えるものではなかった。警察・法務当局はそれを承知、もしくは知らぬふりをして「科学的」な証拠として活用してきたわけだ。多分ほかにも、同様の「証拠能力のない証拠」によって有罪とされた容疑者が大勢いるのではないか。
 死刑が確定したあとに再審によって無罪となった冤罪事件だけでも、免田事件、財田川事件、島田事件、松山事件の4件がある。最近でも服役後に真犯人が見つかる氷見事件のような例が発生している。冤罪の可能性がある以上、やはり死刑制度を見直す必要があるな。遺族感情ということがいわれるが、真犯人を見逃して、無実の人が処刑されることが遺族感情に叶うとはとても思えない。

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