裁判員制度はじまる ― 2009/05/21

今日から裁判員法が施行される。もともと2004年5月に全会一致で成立した裁判員法だが、5年を経て施行が近づくにつれ、反対の声が大きくなり予定通りにスタート出来るか危ぶまれていたところだ。
全会一致案件なのでみんな反対しづらいのだけど、議員連盟(裁判員制度を問い直す議員連盟:亀井久興世話人)を作って、とりあえず施行の延期をしたらどうかとか、修正をしようとかいう議論をしてきたわけだ。議連にもあっと言う間に与党からも含めて60名もの参加者が集まり、反対論の根強さがわかる。
保守系議員の「そもそも市民に裁判が出来るわけはない、専門家に任しておくのがよいのだ」的反対論と、「市民の司法参加は総論賛成だが、条件が未整備で厳罰化や冤罪が心配」的反対論まで呉越同舟なのだが、とりあえずいったん止めて考え直そうという方向性で一致して取り組んできた。この手の超党派の取り組みとしては結構いいところまで行ったが、結局、「凍結・延期法案」提出には至らなかった。今後も法の修正や国会での徹底審議を目指す方針だ。
私個人は、裁判員制度には条件付賛成の立場。
行政主導の官僚司法を打ち破るためには市民の司法参加が欠かせないが、それを実施する上では様々な前提があるはず。前提が整わないまま拙速に実施することは制度を定着させる上でもマイナスだ。ということだ。現状は完全に前提が整ったとは言えないのは明らかだが、施行を凍結することまで必要かどうかは実は悩んでいた。
まあ、結局スタートしてしまったわけだから、前向きにとるものをとっていくべきではないか。例えば取り調べの可視化とか、証拠開示や公判前整理手続の運用のルール化、保釈の原則化、広範日程の確保等々。もちろん問題点の修正を目指すとかは当然すべきだけど、結局、危惧した不安だけ的中して、期待した前進はなにも得られないということだけは避けたいところだ。
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2009年5月21日/裁判員制度を問い直す議員連盟総会
裁判員制度施行にあたっての声明
私たちは、本日始まった「裁判員制度」に強い懸念と憂慮を持っています。4月1日、超党派で裁判員制度を問い直す議員連盟を結成し、院内勉強会を重ねてきました。連休前の4月28日には、この制度に宿る問題点を整理して「裁判員制度凍結・見直しにむけた12の論点」を確認し、「裁判員制度凍結・延期法案」の作成を進めました。そして、提出者4名、賛同者31名を得て、先週の5月15日に衆議院における議員立法として国会提出の直前まで至りました。残念ながら、制度施行前の提出は出来ませんでしたが、7月にも始まろうとしている裁判員裁判を前に「一時停止」も含めた徹底的な議論と行動が必要です。本日までに、本議員連盟に加入する衆参両院の国会議員は、60名となりました。私たちは、立法府の責務として、裁判員制度に対して、国民の多数が不安や疑問を覚えている状態に積極的に応えようと思います。
裁判員法(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律)は、5年前に衆議院で全会一致、参議院で2人(椎名素夫・山本正和議員)の反対を除いて、賛成多数で成立しました。(平成16年・2004年5月21日) しかし、私たちは国会で当時、十分な審議を行ってきたのかを自省と自戒をこめてふり返る必要があります。重大事件を対象とする刑事裁判の根幹を変更する法案だったにもかかわらず、衆参法務委員会での審議時間は、衆議院で31時間、参議院で21時間でしかありません。議事録も薄いもので、議論は全般に及んでいるものの、充実した審議があったとは言えません。
ただし、5年前の裁判員法は制度の骨格を決めたにすぎません。実施にむけた詳細な制度設計は、法曹三者に委ねられました。また、最高裁判所を中心として巨費を投じた「宣伝啓蒙活動」が続けられ、さすがにこの制度を知らないという国民は少なくなりました。私たちは、報道機関の世論調査の結果から、国民の中に「制度を知れば知るほど嫌になる」という傾向が存在することを認めざるをえません。
最高法規としての憲法の下に裁判員法が存在しているのであり、その逆ではありません。「私は人を裁きたくない」「思想・信条から宗教上の理由から辞退したい」という理由を認めない制度は違憲であるという各界からの指摘は当然です。刑事司法に市民が参加する裁判員制度は「権利」として語られながら、いつの間にか「義務」と称しています。国民の三大義務がいつから四大義務になったのでしょうか。裁判所から裁判員候補に指名された国民に届く文書は「呼出状」という呼称です。刑事司法の場に強制的に呼びだされて、数日間で「死刑か、無期懲役か」の判断をし、その評議の秘密は墓場まで持っていけと刑事罰で脅されるという制度に、国民世論は冷えきっています。
私たちは超党派の議員連盟として、国会議員の責任を果たし、国権の最高機関としての立法府の権能をとり戻すために立ち上がります。国民の声に率直に耳を傾ける姿勢こそ、政治の場に問われています。裁判員法は附則に「3年後の見直し規定」を置いていますが、とても3年待とうという状況ではありません。法や制度の不備があれば、躊躇なくこれをただしていくのが国会の役割です。
私たちは、本日をもって更に議員連盟を拡大し、活動を強めます。同時に、緊急の立法措置も講じます。裁判員制度に対しての立場や評価がさまざまであっても、多くの報道機関や人々が指摘する「国民に対しての罰則が厳しすぎる」という点については、裁判員法改正案を作成しました。この法案は、議員連盟の枠を超えて与野党各党に積極的検討を求めていきます。
もちろん、部分改正は本質的な解決ではありません。抜本的な見直しを3年後ではなく、この国会で実現すべく最大限の努力を続けます。
全会一致案件なのでみんな反対しづらいのだけど、議員連盟(裁判員制度を問い直す議員連盟:亀井久興世話人)を作って、とりあえず施行の延期をしたらどうかとか、修正をしようとかいう議論をしてきたわけだ。議連にもあっと言う間に与党からも含めて60名もの参加者が集まり、反対論の根強さがわかる。
保守系議員の「そもそも市民に裁判が出来るわけはない、専門家に任しておくのがよいのだ」的反対論と、「市民の司法参加は総論賛成だが、条件が未整備で厳罰化や冤罪が心配」的反対論まで呉越同舟なのだが、とりあえずいったん止めて考え直そうという方向性で一致して取り組んできた。この手の超党派の取り組みとしては結構いいところまで行ったが、結局、「凍結・延期法案」提出には至らなかった。今後も法の修正や国会での徹底審議を目指す方針だ。
私個人は、裁判員制度には条件付賛成の立場。
行政主導の官僚司法を打ち破るためには市民の司法参加が欠かせないが、それを実施する上では様々な前提があるはず。前提が整わないまま拙速に実施することは制度を定着させる上でもマイナスだ。ということだ。現状は完全に前提が整ったとは言えないのは明らかだが、施行を凍結することまで必要かどうかは実は悩んでいた。
まあ、結局スタートしてしまったわけだから、前向きにとるものをとっていくべきではないか。例えば取り調べの可視化とか、証拠開示や公判前整理手続の運用のルール化、保釈の原則化、広範日程の確保等々。もちろん問題点の修正を目指すとかは当然すべきだけど、結局、危惧した不安だけ的中して、期待した前進はなにも得られないということだけは避けたいところだ。
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2009年5月21日/裁判員制度を問い直す議員連盟総会
裁判員制度施行にあたっての声明
私たちは、本日始まった「裁判員制度」に強い懸念と憂慮を持っています。4月1日、超党派で裁判員制度を問い直す議員連盟を結成し、院内勉強会を重ねてきました。連休前の4月28日には、この制度に宿る問題点を整理して「裁判員制度凍結・見直しにむけた12の論点」を確認し、「裁判員制度凍結・延期法案」の作成を進めました。そして、提出者4名、賛同者31名を得て、先週の5月15日に衆議院における議員立法として国会提出の直前まで至りました。残念ながら、制度施行前の提出は出来ませんでしたが、7月にも始まろうとしている裁判員裁判を前に「一時停止」も含めた徹底的な議論と行動が必要です。本日までに、本議員連盟に加入する衆参両院の国会議員は、60名となりました。私たちは、立法府の責務として、裁判員制度に対して、国民の多数が不安や疑問を覚えている状態に積極的に応えようと思います。
裁判員法(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律)は、5年前に衆議院で全会一致、参議院で2人(椎名素夫・山本正和議員)の反対を除いて、賛成多数で成立しました。(平成16年・2004年5月21日) しかし、私たちは国会で当時、十分な審議を行ってきたのかを自省と自戒をこめてふり返る必要があります。重大事件を対象とする刑事裁判の根幹を変更する法案だったにもかかわらず、衆参法務委員会での審議時間は、衆議院で31時間、参議院で21時間でしかありません。議事録も薄いもので、議論は全般に及んでいるものの、充実した審議があったとは言えません。
ただし、5年前の裁判員法は制度の骨格を決めたにすぎません。実施にむけた詳細な制度設計は、法曹三者に委ねられました。また、最高裁判所を中心として巨費を投じた「宣伝啓蒙活動」が続けられ、さすがにこの制度を知らないという国民は少なくなりました。私たちは、報道機関の世論調査の結果から、国民の中に「制度を知れば知るほど嫌になる」という傾向が存在することを認めざるをえません。
最高法規としての憲法の下に裁判員法が存在しているのであり、その逆ではありません。「私は人を裁きたくない」「思想・信条から宗教上の理由から辞退したい」という理由を認めない制度は違憲であるという各界からの指摘は当然です。刑事司法に市民が参加する裁判員制度は「権利」として語られながら、いつの間にか「義務」と称しています。国民の三大義務がいつから四大義務になったのでしょうか。裁判所から裁判員候補に指名された国民に届く文書は「呼出状」という呼称です。刑事司法の場に強制的に呼びだされて、数日間で「死刑か、無期懲役か」の判断をし、その評議の秘密は墓場まで持っていけと刑事罰で脅されるという制度に、国民世論は冷えきっています。
私たちは超党派の議員連盟として、国会議員の責任を果たし、国権の最高機関としての立法府の権能をとり戻すために立ち上がります。国民の声に率直に耳を傾ける姿勢こそ、政治の場に問われています。裁判員法は附則に「3年後の見直し規定」を置いていますが、とても3年待とうという状況ではありません。法や制度の不備があれば、躊躇なくこれをただしていくのが国会の役割です。
私たちは、本日をもって更に議員連盟を拡大し、活動を強めます。同時に、緊急の立法措置も講じます。裁判員制度に対しての立場や評価がさまざまであっても、多くの報道機関や人々が指摘する「国民に対しての罰則が厳しすぎる」という点については、裁判員法改正案を作成しました。この法案は、議員連盟の枠を超えて与野党各党に積極的検討を求めていきます。
もちろん、部分改正は本質的な解決ではありません。抜本的な見直しを3年後ではなく、この国会で実現すべく最大限の努力を続けます。
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