「もんじゅ」の運転再開2010/05/06

もんじゅナトリウム漏洩場所
 5月6日、日本原子力研究機構は高速増殖炉「もんじゅ」の運転を再開した。
 1995年12月のナトリウム漏れ火災事故で停止中だった「もんじゅ」の運転は14年5ヵ月ぶり。核分裂の連鎖反応が持続する臨界に8日に達する見込みで、13年春に本格運転に移る予定という。
 1985年に着工した「もんじゅ」は、原子炉中で連鎖反応を起こしながら、核分裂しにくいウラン238に中性子を当てて核分裂性のプルトニウムをつくるという「高速増殖炉」の原型炉で、出力28万キロワット。ウランを燃やして発電すると同時に、新たに燃えるプルトニウム作っちゃうという夢のような話なんだけど、高速中性子を減速させないために冷却剤にナトリウムを使う厄介なシロモノだ。
 ナトリウムは水と激しく反応するので、取り扱いが極めて難しい。これが漏れちゃうと、14年前の事故のようなことになってしまうんだな。このときは、事故そのものの深刻さもさることながら、事故を小さく見せるために現場を撮影したビデオを改ざんしたり、虚偽報告がばれたりと事業主体の動力炉・核燃料開発事業団の「隠蔽体質」が大問題になった。
 当時、ビデオ隠しの特命内部調査員に任命されていた西村動燃総務部次長が急死し、警察は自殺としたが、遺族は他殺だとして告発。動燃を相手に損害賠償を求める訴訟が現在も続いている。当時の総務広報訴訟担当理事が怪しいと言われていたりするんだが、まあ真偽のほどは分からないけど、動燃という組織が、ひょっとしてそういうことがあるのかも、と思わせる怪しげな組織だったという面はある。97年には東海再処理施設アスファルト固化処理施設でも火災爆発事故を起こし、1998年には解体・改組され核燃料サイクル開発機構となった。その後、2005年には日本原子力研究所と統合され、現在は日本原子力研究開発機構となっている。
 運転再開のための改造工事後も、ナトリウム漏洩検出器の誤動作や排気ダクトの腐食などのトラブルが続いている。自治体への通報遅れも問題となっている。14年前の事故の教訓が生きているとはいえそうにない。
 一般には軽水炉も高速増殖炉も区別されない場合が多いけど、区別して考えなくては。軽水炉はなんだかんだ電力供給を担って現実の経済社会に組み込まれている現実の存在。直ちに止めるわけにもいかない。一方、高速増殖炉はこれまで一度も電力を生み出したことのない、むしろナトリウムが固まらないように大量の電力で暖め続けているだけの実験施設。これまで9200億円あまりの巨費を投じ、今後も年間230億円の経費が必要と見込まれる。しかも、その危険性は普通の原発の軽水炉とはケタ違いだ。政府は2050年頃の実用化を目標だとしているが、そんなん出来そうにないんだわ。だいたいそのころは人口も相当減っててどれだけ電力需要があるかも怪しい。高速増殖炉なんて、高度経済成長時代の見果てぬ夢なんだから、直ちに撤退するべきだと思うな。ほんと。

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