日米核密約:外務官僚が管理 ― 2009/06/01

今日の朝刊に「核密約」に関する記事が掲載された。共同通信配信の大スクープだ。
1960年の日米安保条約改定に際して、核兵器を積んだ米軍の艦船・航空機の日本立ち寄りを黙認することを合意した核持ち込みに関する「密約」を歴代の外務官僚が管理し引き継いできたことと、外務省側の判断で特定の首相・外相だけにこのことを伝えていたことが分かった、というものだ。今日は専らこの事実確認や資料整理。
正直いうと、核密約問題は2000年頃から共産党が熱心に取り組んでいたので、「共産党ネタ」という意識がどこかにあって、あまり熱心には取り組んでこなかった面があるんだけど、実際はこれ大事な問題だね。日本の政治の在り方の本質を象徴的に示している。
そもそも米国の核艦船の通過・寄港が日本の安全にとって不可欠だとか、日米関係を維持する上でどうしても必要なことであったなら、国民に向けてそう説明し説得をすべきだった。
それが出来ないがどうしても必要な約束なので秘密にしなきゃならないというなら、少なくともウソをつくべきではない。「いわゆる密約の存在についてはお答えできない」とでも言うべきでしょう。
ひょっとしたら池田勇人首相が「外務省から信頼」されておらずそもそも密約の存在を知らなかったのかもしれないが、それで結果的にウソになってしまったのなら、それが分かった後は訂正して謝罪すべきじゃないか。
米側の責任者をはじめ多くの関係者が認め、米側の情報公開で現物が明らかになり、今回は歴代4事務次官が認めた。これでもなおかつシラを切れると思っているのだろうか。すでに米国は91年以降、地上発射戦術核兵器、巡航ミサイルを含む水上艦艇と攻撃型原潜の戦術核兵器を海外から撤去しており(欧州配備航空機搭載戦術核除く)、少なくとも平時には核搭載艦船の通過・寄港問題は存在しない。核密約の存在を認めること自体が具体的な米軍の活動の障害とはならないのであり、日米間の深刻な問題をもたらすとは考えられない。あるのは、過ちを認めたくはないという保身、政府と官僚制度の無謬性護持の生理反応だけではないか。
交渉担当の元外務省アメリカ局長の吉野文六氏が認めてもなお事実を認めようとしない沖縄返還協定をめぐる密約・西山事件、大量破壊兵器の存在を理由にイラク戦争を支持しながらこれがでっち上げだったことが分かった後も開き直り続けるイラク派兵問題も、まったく同根だ。誰が見ても明らかなウソを認めようとせず、シラを切ってやり過ごそうという態度こそが自らを貶めていることになぜ気付かないのだろうか。不思議だ。
共同通信記者の取材に応じた次官の1人は、「(国会で)事実と違う答弁を続け)なんだか恥ずかしいなという思いがあった」と話している。この時期に4人の元事務次官が真実を語り出したのは、偽りのままで人生を終えたくないとの思いがあるのではないだろうか。
―――――――――――――――――――――――――――――
討論記録の該当部分(いわゆる「核密約」)
1959年6月(日米の代表が署名し公式の取決めとなったのは60年1月6日の藤山・マッカーサー会談)
A「装備における重要な変更」は、核兵器及び中・長距離ミサイルの日本への持ち込み(イントロダクション)並びにそれらの兵器のための基地の建設を意味するものと解釈されるが、たとえば、核物質部分をつけていない短距離ミサイルと含む非核兵器(ノン・ニュクリア・ウェポンズ)の持ち込みは、それに当たらない。
B「条約第5条の規定にもとづいておこなわれるものを除く戦闘作戦行動」は、日本国以外の地域にたいして日本国から起こされる戦闘作戦行動を意味するものと解される。
C「事前協議」は、合衆国軍隊とその装備の日本への配置、合衆国軍用機の飛来(エントリー)、合衆国艦船の日本領海や港湾への立ち入り(エントリー)に関する現行の手続に影響を与えるものとは解されない。合衆国軍隊の日本への配置における重要な変更の場合を除く。
D交換公文のいかなる内容も、合衆国軍隊の部隊とその装備の日本からの移動(トランスファー)に関し、「事前協議」を必要とするとは解釈されない。
※米国「国立公文書館」の「米陸軍参謀部資料」のなかの「琉球列島米国民政府の歴史」と題された文書群に収められていた公文書「日本と琉球諸島における合衆国の基地権の比較」に記載されていた。「密約」は66年9~12月に米国務省と国防総省国際安全保障担当が共同して作成し、66年末の米政府省庁間高官会議に提出した報告書「沖縄基地研究」の一部を成すもの。
※共産党・不破哲三委員長(当時)の国会質問資料より
―――――――――――――――――――――――――――――
いわゆる「密約」問題の概略は以下
●日米安保条約下で在日米軍が日本に核兵器を持ち込んでいるのではないかという疑惑は当初から持たれていた。日米安保条約第6条に関する交換公文で「装備の重要な変更」の際は「事前協議」を行なうとしているため、「事前協議がない以上、寄港も含めて核の持ち込みはない」との理屈で日本政府は現在に至るまでこれを否定している。
●一方で米側は、核の「持ち込み」は陸上配備のみに該当し、核を積んだ艦船や航空機が日本の港や飛行場に入る場合は日米間の「事前協議」が必要な「持ち込み」にはあたらないとの解釈を採用し、当時の岸信介政権はこの米側の解釈を黙認していたと疑われている。核艦船等の通過・寄港を事前協議の対象としないことを合意した「秘密議事録」が安保改定時にかわされたという疑いがささやかれてきた。この秘密議事録が「密約」とされるものだ。(←「密約」など許されない)
●岸内閣に変わった池田勇人内閣は核搭載艦船の寄稿も「持ち込み」にあたり条約で定めた「事前協議」の対象となると国会で答弁した。(←ウソの始まり)
※志賀健次郎防衛庁長官答弁「わが方は、日本の港に寄港する場合においては、核兵器は絶対に持ち込んでは相ならぬ、かように固い約束をいたしておる」。「われわれは信頼の上に立って、もしも核装備を、核弾頭なり核を装着したものを艦艇なりあるいは飛行機に持ってくるというような場合には、必ず事前協議に付せらるべきものであると信じておるし、またアメリカとかたい約束をしておるのであります」(63年3月2日、衆・予算)
※池田勇人首相答弁「私は、核弾頭を持った船は、日本に寄港はしてもらわないということを常に言っております」「核兵器を日本に持ち込むとかなんとかいうようなことは、全然話題にも何にもなっておりません」(63年3月6日、参・予算)
●こうした経緯を米政府は重視し、当時のライシャワー駐日大使は同年4月4日、大平正芳外相(当時、後に首相)と会談し「密約」の解釈の角煮を要求。この際に大平氏は初めて密約の存在を知り了承したという。こうした経緯や解釈が日本語の内部文書に明記され、外務省の北米局と条約局で管理されてきた。文書を見たという次官経験者は、「次官引継ぎ時に『核に関しては日米間で(非公開の)了解がある』と前任者から聞いて、次の次官に引き継いでいた」と述べた。別の次官経験者は橋本、小渕両氏ら外務省が信用した政治家だけに密約内容を知らせていたと語った。さらに別の経験者は「(密約内容を話していい首相、外相かどうか)役人が選別していた」と述べた。(←今回明らかになった)
●74年9月10日、ジーン・R・ラロック米退役海軍少将は米議会で証言し「核兵器を積載する能力のあるすべての船は、核兵器を積んでいる。それらの船が日本などの港に入る時も、核兵器を外すことはない」と述べた。
●81年5月17日、「密約」の存在を裏付ける「ライシャワー発言」が明るみに出て話題になった。駐日米大使だったライシャワー氏が帰国後、毎日新聞のインタビューに応じたもので、「核積載の米艦船・航空機の日本領海・領空の通過・寄港は『核持ち込みに当たらない』との日米口頭了解が60年安保改定当時に存在、核積載米艦船は日本に寄港している」との爆弾証言である。
●これに対して日本政府は「米国からの事前協議要請がないから、『核持ち込み』はない」と強弁し続けてきた。(←苦しい)
●2000年3~4月の国会で、共産党不破委員長(当時)が、アメリカ政府が情報公開法によって公開した外交文書に基づいて「核密約」の真相を得追及した。この文書によって60年1月6日に藤山外相とマッカーサー米大使の間で結ばれた核密約の全文が明らかになった。小渕内閣及び森内閣は、これを否定する答弁を繰り返した。その内容は①過去の歴代政府が核密約の存在を否定してきた、②米政府文書とされるものの性格が不明で、日本政府は関知しないものだ、③安保条約は日米間の信頼関係によって成り立っている、④日本政府自身が持っている外交文書を調べるつもりはない、というゴマカシで逃げ切った。(←ヒドイ!)
●今回の共同通信報道を受けて、河村建夫官房長官は6月1日の記者会見で、「(同条約で定めた)核持ち込みの事前協議がない以上、核持ち込みはなかったということに全く疑いを持っていない」と述べ、密約を改めて否定した。同日、藪中三十二外務事務次官も会見で「密約はないと歴代首相、外相が説明している。それに尽きる」と否定した。
1960年の日米安保条約改定に際して、核兵器を積んだ米軍の艦船・航空機の日本立ち寄りを黙認することを合意した核持ち込みに関する「密約」を歴代の外務官僚が管理し引き継いできたことと、外務省側の判断で特定の首相・外相だけにこのことを伝えていたことが分かった、というものだ。今日は専らこの事実確認や資料整理。
正直いうと、核密約問題は2000年頃から共産党が熱心に取り組んでいたので、「共産党ネタ」という意識がどこかにあって、あまり熱心には取り組んでこなかった面があるんだけど、実際はこれ大事な問題だね。日本の政治の在り方の本質を象徴的に示している。
そもそも米国の核艦船の通過・寄港が日本の安全にとって不可欠だとか、日米関係を維持する上でどうしても必要なことであったなら、国民に向けてそう説明し説得をすべきだった。
それが出来ないがどうしても必要な約束なので秘密にしなきゃならないというなら、少なくともウソをつくべきではない。「いわゆる密約の存在についてはお答えできない」とでも言うべきでしょう。
ひょっとしたら池田勇人首相が「外務省から信頼」されておらずそもそも密約の存在を知らなかったのかもしれないが、それで結果的にウソになってしまったのなら、それが分かった後は訂正して謝罪すべきじゃないか。
米側の責任者をはじめ多くの関係者が認め、米側の情報公開で現物が明らかになり、今回は歴代4事務次官が認めた。これでもなおかつシラを切れると思っているのだろうか。すでに米国は91年以降、地上発射戦術核兵器、巡航ミサイルを含む水上艦艇と攻撃型原潜の戦術核兵器を海外から撤去しており(欧州配備航空機搭載戦術核除く)、少なくとも平時には核搭載艦船の通過・寄港問題は存在しない。核密約の存在を認めること自体が具体的な米軍の活動の障害とはならないのであり、日米間の深刻な問題をもたらすとは考えられない。あるのは、過ちを認めたくはないという保身、政府と官僚制度の無謬性護持の生理反応だけではないか。
交渉担当の元外務省アメリカ局長の吉野文六氏が認めてもなお事実を認めようとしない沖縄返還協定をめぐる密約・西山事件、大量破壊兵器の存在を理由にイラク戦争を支持しながらこれがでっち上げだったことが分かった後も開き直り続けるイラク派兵問題も、まったく同根だ。誰が見ても明らかなウソを認めようとせず、シラを切ってやり過ごそうという態度こそが自らを貶めていることになぜ気付かないのだろうか。不思議だ。
共同通信記者の取材に応じた次官の1人は、「(国会で)事実と違う答弁を続け)なんだか恥ずかしいなという思いがあった」と話している。この時期に4人の元事務次官が真実を語り出したのは、偽りのままで人生を終えたくないとの思いがあるのではないだろうか。
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討論記録の該当部分(いわゆる「核密約」)
1959年6月(日米の代表が署名し公式の取決めとなったのは60年1月6日の藤山・マッカーサー会談)
A「装備における重要な変更」は、核兵器及び中・長距離ミサイルの日本への持ち込み(イントロダクション)並びにそれらの兵器のための基地の建設を意味するものと解釈されるが、たとえば、核物質部分をつけていない短距離ミサイルと含む非核兵器(ノン・ニュクリア・ウェポンズ)の持ち込みは、それに当たらない。
B「条約第5条の規定にもとづいておこなわれるものを除く戦闘作戦行動」は、日本国以外の地域にたいして日本国から起こされる戦闘作戦行動を意味するものと解される。
C「事前協議」は、合衆国軍隊とその装備の日本への配置、合衆国軍用機の飛来(エントリー)、合衆国艦船の日本領海や港湾への立ち入り(エントリー)に関する現行の手続に影響を与えるものとは解されない。合衆国軍隊の日本への配置における重要な変更の場合を除く。
D交換公文のいかなる内容も、合衆国軍隊の部隊とその装備の日本からの移動(トランスファー)に関し、「事前協議」を必要とするとは解釈されない。
※米国「国立公文書館」の「米陸軍参謀部資料」のなかの「琉球列島米国民政府の歴史」と題された文書群に収められていた公文書「日本と琉球諸島における合衆国の基地権の比較」に記載されていた。「密約」は66年9~12月に米国務省と国防総省国際安全保障担当が共同して作成し、66年末の米政府省庁間高官会議に提出した報告書「沖縄基地研究」の一部を成すもの。
※共産党・不破哲三委員長(当時)の国会質問資料より
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いわゆる「密約」問題の概略は以下
●日米安保条約下で在日米軍が日本に核兵器を持ち込んでいるのではないかという疑惑は当初から持たれていた。日米安保条約第6条に関する交換公文で「装備の重要な変更」の際は「事前協議」を行なうとしているため、「事前協議がない以上、寄港も含めて核の持ち込みはない」との理屈で日本政府は現在に至るまでこれを否定している。
●一方で米側は、核の「持ち込み」は陸上配備のみに該当し、核を積んだ艦船や航空機が日本の港や飛行場に入る場合は日米間の「事前協議」が必要な「持ち込み」にはあたらないとの解釈を採用し、当時の岸信介政権はこの米側の解釈を黙認していたと疑われている。核艦船等の通過・寄港を事前協議の対象としないことを合意した「秘密議事録」が安保改定時にかわされたという疑いがささやかれてきた。この秘密議事録が「密約」とされるものだ。(←「密約」など許されない)
●岸内閣に変わった池田勇人内閣は核搭載艦船の寄稿も「持ち込み」にあたり条約で定めた「事前協議」の対象となると国会で答弁した。(←ウソの始まり)
※志賀健次郎防衛庁長官答弁「わが方は、日本の港に寄港する場合においては、核兵器は絶対に持ち込んでは相ならぬ、かように固い約束をいたしておる」。「われわれは信頼の上に立って、もしも核装備を、核弾頭なり核を装着したものを艦艇なりあるいは飛行機に持ってくるというような場合には、必ず事前協議に付せらるべきものであると信じておるし、またアメリカとかたい約束をしておるのであります」(63年3月2日、衆・予算)
※池田勇人首相答弁「私は、核弾頭を持った船は、日本に寄港はしてもらわないということを常に言っております」「核兵器を日本に持ち込むとかなんとかいうようなことは、全然話題にも何にもなっておりません」(63年3月6日、参・予算)
●こうした経緯を米政府は重視し、当時のライシャワー駐日大使は同年4月4日、大平正芳外相(当時、後に首相)と会談し「密約」の解釈の角煮を要求。この際に大平氏は初めて密約の存在を知り了承したという。こうした経緯や解釈が日本語の内部文書に明記され、外務省の北米局と条約局で管理されてきた。文書を見たという次官経験者は、「次官引継ぎ時に『核に関しては日米間で(非公開の)了解がある』と前任者から聞いて、次の次官に引き継いでいた」と述べた。別の次官経験者は橋本、小渕両氏ら外務省が信用した政治家だけに密約内容を知らせていたと語った。さらに別の経験者は「(密約内容を話していい首相、外相かどうか)役人が選別していた」と述べた。(←今回明らかになった)
●74年9月10日、ジーン・R・ラロック米退役海軍少将は米議会で証言し「核兵器を積載する能力のあるすべての船は、核兵器を積んでいる。それらの船が日本などの港に入る時も、核兵器を外すことはない」と述べた。
●81年5月17日、「密約」の存在を裏付ける「ライシャワー発言」が明るみに出て話題になった。駐日米大使だったライシャワー氏が帰国後、毎日新聞のインタビューに応じたもので、「核積載の米艦船・航空機の日本領海・領空の通過・寄港は『核持ち込みに当たらない』との日米口頭了解が60年安保改定当時に存在、核積載米艦船は日本に寄港している」との爆弾証言である。
●これに対して日本政府は「米国からの事前協議要請がないから、『核持ち込み』はない」と強弁し続けてきた。(←苦しい)
●2000年3~4月の国会で、共産党不破委員長(当時)が、アメリカ政府が情報公開法によって公開した外交文書に基づいて「核密約」の真相を得追及した。この文書によって60年1月6日に藤山外相とマッカーサー米大使の間で結ばれた核密約の全文が明らかになった。小渕内閣及び森内閣は、これを否定する答弁を繰り返した。その内容は①過去の歴代政府が核密約の存在を否定してきた、②米政府文書とされるものの性格が不明で、日本政府は関知しないものだ、③安保条約は日米間の信頼関係によって成り立っている、④日本政府自身が持っている外交文書を調べるつもりはない、というゴマカシで逃げ切った。(←ヒドイ!)
●今回の共同通信報道を受けて、河村建夫官房長官は6月1日の記者会見で、「(同条約で定めた)核持ち込みの事前協議がない以上、核持ち込みはなかったということに全く疑いを持っていない」と述べ、密約を改めて否定した。同日、藪中三十二外務事務次官も会見で「密約はないと歴代首相、外相が説明している。それに尽きる」と否定した。
原爆症認定訴訟で原告が18連勝 ― 2009/05/28

原爆症の認定を却下された東京都と茨城県の被爆者30人(すでにうち14人が死亡)が、国に処分取り消しと損害賠償を求めた東京第一次訴訟の控訴審で、東京高裁(稲田龍樹裁判長)は新たに9人を原爆症と認定する判決を下した。08年4月からの「新基準」でも認定されなかった10人のうち9人が原爆症と認められた。
原爆症の認定は、被爆者手健康手帳を持つ人のうち原爆症認定者が1%に満たないという現実離れした厳格な運用が長年にわたって行なわれてきた。03年、認定を却下された被爆者らがその処分取り消しを求めて全国17地裁に集団で提訴。国が連敗を重ねる中で、厚労省は08年にようやく認定基準を緩和したのである。
しかしこの「新基準」によってもなお認定されない被爆者が少なくなく、訴訟が続いてきた。現在も全国で343人(遺族含む)が全国の地・高裁、最高裁で係争中。新基準でも認定されない被爆者を救済する司法判断が続いている。
河村官房長官は東京高裁判決を受けて、認定基準のさらなる緩和を検討する考えを示したようだが、当然だ。ヒロシマ・ナガサキの地獄のなかを生き延びた被爆者を、64年たってなお苦しめる官僚的対応はまったく度し難い。個々の被爆者の条件にケチをつけ執拗に争い続ける姿は、時間稼ぎをして被爆者が死に絶えてしまうのを待っているかのようにも見える。
高齢の被爆者には時間がない。国は直ちに全員を救済し、被爆者の皆さんに少しでも安心して生活をしてもらえるようにするべきだ。麻生首相がマンガしか見ないのならせめて『はだしのゲン』でも読んでみたらどうか。被爆国のトップとして最低限の責任は果たして欲しいものだ。
原爆症の認定は、被爆者手健康手帳を持つ人のうち原爆症認定者が1%に満たないという現実離れした厳格な運用が長年にわたって行なわれてきた。03年、認定を却下された被爆者らがその処分取り消しを求めて全国17地裁に集団で提訴。国が連敗を重ねる中で、厚労省は08年にようやく認定基準を緩和したのである。
しかしこの「新基準」によってもなお認定されない被爆者が少なくなく、訴訟が続いてきた。現在も全国で343人(遺族含む)が全国の地・高裁、最高裁で係争中。新基準でも認定されない被爆者を救済する司法判断が続いている。
河村官房長官は東京高裁判決を受けて、認定基準のさらなる緩和を検討する考えを示したようだが、当然だ。ヒロシマ・ナガサキの地獄のなかを生き延びた被爆者を、64年たってなお苦しめる官僚的対応はまったく度し難い。個々の被爆者の条件にケチをつけ執拗に争い続ける姿は、時間稼ぎをして被爆者が死に絶えてしまうのを待っているかのようにも見える。
高齢の被爆者には時間がない。国は直ちに全員を救済し、被爆者の皆さんに少しでも安心して生活をしてもらえるようにするべきだ。麻生首相がマンガしか見ないのならせめて『はだしのゲン』でも読んでみたらどうか。被爆国のトップとして最低限の責任は果たして欲しいものだ。
北朝鮮が2度目の核実験 ― 2009/05/26

北朝鮮が5月25日、核実験を実施したと発表した。
韓国気象庁によると25日午前9時54分に北朝鮮北東部の咸鏡北道(ハムギョンプクド)豊渓里でM4・5の人工的な揺れが観測された。日本の気象庁も25日9時54分40秒ごろ北朝鮮北東部を震源とする推定M5・3の地震波を観測。米地質調査所によると地震の規模はM4.7。CTBTOが世界39カ所の地震波観測網から収集したデータによると、震源地は前回(06年10月9日)の核実験実施場所とほぼ同じ、震源の深さは約0・1キロ、M4・5(前回はM4・1)。マグニチュードが0・2上がるごとにエネルギー量は2倍になるため、今回は4倍と推定される。
核専門家の多くは、今回の核爆発の規模をTNT火薬換算で4キロトン未満と分析(前回1キロトン前後)している。インタファクス通信などによると、ロシア国防省報道官は、核実験の爆発規模について、「10~20キロトンの威力」と指摘した。また、韓国の李相喜(イサンヒ)国防相は、国会国防委員会で「1キロトンから最大20キロトンだった」と述べている。
また、核実験後の25日正午過ぎに咸鏡北道花台(ファデ)郡舞水端里(ムスダンリ)付近から1発、午後5時過ぎに江原道(カンウォンド)元山(ウォンサン)付近から2発の短距離ミサイルが発射された。
―――――――――――――――――――――――――――――
■衆議院:北朝鮮核実験実施に対する抗議決議
(第171回、09年5月26日)全会一致
5月25日、北朝鮮は、国連決議や六者会合共同声明、更には日朝平壌宣言に明確に反して、2回目の核実験を強行した。
この暴挙は、先般のミサイル発射と並び、我が国を含む地域の平和と安定を脅かすものであり、我が国政府は、国際社会と連携しつつ、我が国の安全を確保すべく万全の措置を講ずるべきである。
同時に、度重なる核実験は、国際的な核不拡散体制に対する重大な挑戦であり、唯一の被爆国の我が国としては、決して容認できるものではない。特に、最近の核廃絶の気運の高まりに逆行するものであり遺憾の極みである。北朝鮮に対し、これまでの諸合意に従い、すべての核を放棄し、国際社会の査察を受け入れ、朝鮮半島の非核化に取り組むよう要求する。
政府は、北朝鮮に対して制裁を強めるなど断固たる措置をとるとともに、拉致問題、核、ミサイル等、北朝鮮との諸懸案を解決すべく、国際社会の理解と協力を得つつ、外交努力を倍加すべきである。
右決議する。
―――――――――――――――――――――――――――――
■参議院:北朝鮮核実験実施に対する抗議決議
(第171回、09年5月27日)全会一致
5月25日、北朝鮮は、国連決議や六者会合共同声明、更には日朝平壌宣言に明確に反して、2回目の核実験を強行した。
この暴挙は、先般のミサイル発射と並び、我が国を含む地域の平和と安定を脅かすものであり、我が国政府は、国際社会と連携しつつ、我が国の安全を確保すべく万全の措置を講ずるべきである。
同時に、度重なる核実験は、国際的な核不拡散体制に対する重大な挑戦であり、唯一の被爆国の我が国としては、決して容認できるものではない。特に、最近の核廃絶の気運の高まりに逆行するものである。北朝鮮に対し、これまでの諸合意に従い、すべての核を放棄し、国際社会の査察を受け入れ、朝鮮半島の非核化に取り組むよう要求する。
政府は、北朝鮮に対して制裁を強めるなど断固たる措置をとるとともに、国家主権並びに基本的人権・人道にも関わる極めて重大な拉致問題、核、ミサイル等、北朝鮮との諸懸案を解決すべく、国際社会と連携し、積極的な外交を推進すべきである。
右決議する。
―――――――――――――――――――――――――――――
■朝鮮民主主義人民共和国の核実験実施に強く抗議する
(09年5月25日)フォーラム平和・人権・環境/原水爆禁止国民会議
朝鮮民主主義人民共和国政府は(以下北朝鮮)は、5月25日、「再度の地下核実験を成功裏に実施した」と発表しました。
私たちは、この間2006年10月9日の北朝鮮の核実験に対して強く抗議をしてきました。そのことは、私たちが「人類と核は共存できない」とする立場から「あらゆる国の核実験・核兵器」に反対し、平和と核軍縮をめざしてきたからです。また北朝鮮のこの間の一連の核兵器にかかわる動きに対しては、NPT体制の強化・確立を基本に対応してきました。
こうした立場から、今回の北朝鮮の核実験については、東北アジアの非核と安全保障を揺るがすもので、世界的な核軍縮の流れに逆行するものであり、断じて許す事はできません。あらためて強く抗議します。今回の核実験は、北朝鮮が国際社会でますます孤立化することになるだけです。
私たちは、北朝鮮に対し、今回の核実験に対し強く抗議すると同時に、直ちに実験に関する施設の放棄を求めます。いかなる理由があれ、いかなる国であれ、核実験の準備、実験、そして核兵器保有は許されるものではありません。
私たちは、今ほど対話と協議が求められているときはないと認識します。2002年の日朝ピョンヤン宣言、2005年の6ヵ国共同声明に基づき、この間の6ヵ国協議の実績を踏まえ、関係各国は引き続き6ヵ国協議を誠実に進めることを求めるものです。さらに北朝鮮が、国際的な核軍縮の枠組みであるNPTへ早期に復帰し、国際的な信頼を回復するよう要請します。
東北アジアに非核・平和の確立、日朝国交正常化への道を確かなものにする必要があります。私たちは、そのため取り組みを引き続き強化する決意です。
―――――――――――――――――――――――――――――
■核実験に対する抗議(09年5月26日)
朝鮮民主主義人民共和国 国防委員長 金正日殿
日本労働組合総連合会/原水爆禁止日本国民会議/核兵器禁止平和建設国民会議
5月25日午前、貴国は「地下核実験」を実施したと発表しました。核実験は、朝鮮半島を含む北東アジア地域の安全・安定に対する暴挙であるばかりか、4月の弾道ミサイル発射行為とともに、世界の平和と安全に背を向けるものであり、断じて許されるものではありません。
貴国は国連加盟国として、国連安保理決議第1718号を履行する義務を負っています。核実験の強行という行動は、明白な国連決議違反であり、平和を願う国際世論に対する真っ向からの挑戦です。
こうした姿勢をあらため、核拡散防止条約(NPT)および国際原子力機関(IAEA)保障措置への早期復帰を約束した第4回六者会合・共同声明(2005.9.19)の完全実施を求めるものです。
私どもは、貴国の核実験に厳重に抗議し、直ちにすべての核兵器、核計画の放棄を 要求するとともに、国際社会の一員としての国際合意の誠実な履行を求めます。
以上
―――――――――――――――――――――――――――――
◆5月26日 朝鮮中央通信社報道
われわれの科学者、技術者の要求に応じて、共和国の自衛的核抑止力をあらゆる面から強化する措置の一環として2009年5月25日、もう一度の地下核実験を成功裏に行った。
今回の核実験は、爆発力と制御技術において新たな高い段階で安全に行われ、実験の結果、核兵器の威力をさらに高め、核技術を絶え間なく発展させられる科学技術上の問題を円滑に解決することとなった。
今回の核実験の成功は、強盛大国の大門を開け放つための新たな革命的大高揚の炎を激しく燃え上がらせ、150日戦闘にこぞって立ち上がったわが軍隊と人民を大いに鼓舞している。
核実験は、先軍の威力で国と民族の自主権と社会主義を守り、朝鮮半島と周辺地域の平和と安全を保障するうえで寄与するであろう。
―――――――――――――――――――――――――――――
韓国気象庁によると25日午前9時54分に北朝鮮北東部の咸鏡北道(ハムギョンプクド)豊渓里でM4・5の人工的な揺れが観測された。日本の気象庁も25日9時54分40秒ごろ北朝鮮北東部を震源とする推定M5・3の地震波を観測。米地質調査所によると地震の規模はM4.7。CTBTOが世界39カ所の地震波観測網から収集したデータによると、震源地は前回(06年10月9日)の核実験実施場所とほぼ同じ、震源の深さは約0・1キロ、M4・5(前回はM4・1)。マグニチュードが0・2上がるごとにエネルギー量は2倍になるため、今回は4倍と推定される。
核専門家の多くは、今回の核爆発の規模をTNT火薬換算で4キロトン未満と分析(前回1キロトン前後)している。インタファクス通信などによると、ロシア国防省報道官は、核実験の爆発規模について、「10~20キロトンの威力」と指摘した。また、韓国の李相喜(イサンヒ)国防相は、国会国防委員会で「1キロトンから最大20キロトンだった」と述べている。
また、核実験後の25日正午過ぎに咸鏡北道花台(ファデ)郡舞水端里(ムスダンリ)付近から1発、午後5時過ぎに江原道(カンウォンド)元山(ウォンサン)付近から2発の短距離ミサイルが発射された。
―――――――――――――――――――――――――――――
■衆議院:北朝鮮核実験実施に対する抗議決議
(第171回、09年5月26日)全会一致
5月25日、北朝鮮は、国連決議や六者会合共同声明、更には日朝平壌宣言に明確に反して、2回目の核実験を強行した。
この暴挙は、先般のミサイル発射と並び、我が国を含む地域の平和と安定を脅かすものであり、我が国政府は、国際社会と連携しつつ、我が国の安全を確保すべく万全の措置を講ずるべきである。
同時に、度重なる核実験は、国際的な核不拡散体制に対する重大な挑戦であり、唯一の被爆国の我が国としては、決して容認できるものではない。特に、最近の核廃絶の気運の高まりに逆行するものであり遺憾の極みである。北朝鮮に対し、これまでの諸合意に従い、すべての核を放棄し、国際社会の査察を受け入れ、朝鮮半島の非核化に取り組むよう要求する。
政府は、北朝鮮に対して制裁を強めるなど断固たる措置をとるとともに、拉致問題、核、ミサイル等、北朝鮮との諸懸案を解決すべく、国際社会の理解と協力を得つつ、外交努力を倍加すべきである。
右決議する。
―――――――――――――――――――――――――――――
■参議院:北朝鮮核実験実施に対する抗議決議
(第171回、09年5月27日)全会一致
5月25日、北朝鮮は、国連決議や六者会合共同声明、更には日朝平壌宣言に明確に反して、2回目の核実験を強行した。
この暴挙は、先般のミサイル発射と並び、我が国を含む地域の平和と安定を脅かすものであり、我が国政府は、国際社会と連携しつつ、我が国の安全を確保すべく万全の措置を講ずるべきである。
同時に、度重なる核実験は、国際的な核不拡散体制に対する重大な挑戦であり、唯一の被爆国の我が国としては、決して容認できるものではない。特に、最近の核廃絶の気運の高まりに逆行するものである。北朝鮮に対し、これまでの諸合意に従い、すべての核を放棄し、国際社会の査察を受け入れ、朝鮮半島の非核化に取り組むよう要求する。
政府は、北朝鮮に対して制裁を強めるなど断固たる措置をとるとともに、国家主権並びに基本的人権・人道にも関わる極めて重大な拉致問題、核、ミサイル等、北朝鮮との諸懸案を解決すべく、国際社会と連携し、積極的な外交を推進すべきである。
右決議する。
―――――――――――――――――――――――――――――
■朝鮮民主主義人民共和国の核実験実施に強く抗議する
(09年5月25日)フォーラム平和・人権・環境/原水爆禁止国民会議
朝鮮民主主義人民共和国政府は(以下北朝鮮)は、5月25日、「再度の地下核実験を成功裏に実施した」と発表しました。
私たちは、この間2006年10月9日の北朝鮮の核実験に対して強く抗議をしてきました。そのことは、私たちが「人類と核は共存できない」とする立場から「あらゆる国の核実験・核兵器」に反対し、平和と核軍縮をめざしてきたからです。また北朝鮮のこの間の一連の核兵器にかかわる動きに対しては、NPT体制の強化・確立を基本に対応してきました。
こうした立場から、今回の北朝鮮の核実験については、東北アジアの非核と安全保障を揺るがすもので、世界的な核軍縮の流れに逆行するものであり、断じて許す事はできません。あらためて強く抗議します。今回の核実験は、北朝鮮が国際社会でますます孤立化することになるだけです。
私たちは、北朝鮮に対し、今回の核実験に対し強く抗議すると同時に、直ちに実験に関する施設の放棄を求めます。いかなる理由があれ、いかなる国であれ、核実験の準備、実験、そして核兵器保有は許されるものではありません。
私たちは、今ほど対話と協議が求められているときはないと認識します。2002年の日朝ピョンヤン宣言、2005年の6ヵ国共同声明に基づき、この間の6ヵ国協議の実績を踏まえ、関係各国は引き続き6ヵ国協議を誠実に進めることを求めるものです。さらに北朝鮮が、国際的な核軍縮の枠組みであるNPTへ早期に復帰し、国際的な信頼を回復するよう要請します。
東北アジアに非核・平和の確立、日朝国交正常化への道を確かなものにする必要があります。私たちは、そのため取り組みを引き続き強化する決意です。
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■核実験に対する抗議(09年5月26日)
朝鮮民主主義人民共和国 国防委員長 金正日殿
日本労働組合総連合会/原水爆禁止日本国民会議/核兵器禁止平和建設国民会議
5月25日午前、貴国は「地下核実験」を実施したと発表しました。核実験は、朝鮮半島を含む北東アジア地域の安全・安定に対する暴挙であるばかりか、4月の弾道ミサイル発射行為とともに、世界の平和と安全に背を向けるものであり、断じて許されるものではありません。
貴国は国連加盟国として、国連安保理決議第1718号を履行する義務を負っています。核実験の強行という行動は、明白な国連決議違反であり、平和を願う国際世論に対する真っ向からの挑戦です。
こうした姿勢をあらため、核拡散防止条約(NPT)および国際原子力機関(IAEA)保障措置への早期復帰を約束した第4回六者会合・共同声明(2005.9.19)の完全実施を求めるものです。
私どもは、貴国の核実験に厳重に抗議し、直ちにすべての核兵器、核計画の放棄を 要求するとともに、国際社会の一員としての国際合意の誠実な履行を求めます。
以上
―――――――――――――――――――――――――――――
◆5月26日 朝鮮中央通信社報道
われわれの科学者、技術者の要求に応じて、共和国の自衛的核抑止力をあらゆる面から強化する措置の一環として2009年5月25日、もう一度の地下核実験を成功裏に行った。
今回の核実験は、爆発力と制御技術において新たな高い段階で安全に行われ、実験の結果、核兵器の威力をさらに高め、核技術を絶え間なく発展させられる科学技術上の問題を円滑に解決することとなった。
今回の核実験の成功は、強盛大国の大門を開け放つための新たな革命的大高揚の炎を激しく燃え上がらせ、150日戦闘にこぞって立ち上がったわが軍隊と人民を大いに鼓舞している。
核実験は、先軍の威力で国と民族の自主権と社会主義を守り、朝鮮半島と周辺地域の平和と安全を保障するうえで寄与するであろう。
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北朝鮮核実験 なに考えてんだ、この野郎! ― 2009/05/25

北朝鮮が2度目の核実験を行なった。冗談じゃねえよ。なに考えてんだ、この野郎!
オバマ新大統領の登場、特にプラハ演説以降、核問題に関して前向きな流れが生まれかけてきただけに、まさに冷や水を浴びせるようなこの核実験には怒り心頭だ。核をもてあそぶ瀬戸際外交なるものを断じて許すことはできない。
でも、頭に来たから感情のママに怒りをぶつけるというのは外交でも政策でもない。これを口実に核依存の世論の流れが作られることも警戒しつなくてはならないし、既成事実化が進む前に、どうすれば連中を変えることが出来るのかよほど真剣に取り組まないと。
金正日はカダフィの爪の垢でも煎じて飲めよ。
オバマ新大統領の登場、特にプラハ演説以降、核問題に関して前向きな流れが生まれかけてきただけに、まさに冷や水を浴びせるようなこの核実験には怒り心頭だ。核をもてあそぶ瀬戸際外交なるものを断じて許すことはできない。
でも、頭に来たから感情のママに怒りをぶつけるというのは外交でも政策でもない。これを口実に核依存の世論の流れが作られることも警戒しつなくてはならないし、既成事実化が進む前に、どうすれば連中を変えることが出来るのかよほど真剣に取り組まないと。
金正日はカダフィの爪の垢でも煎じて飲めよ。
消極的安全保証問題主意書に対して答弁書 ― 2009/05/22

辻元清美議員が提出していた、「消極的安全保証問題に関する質問主意書」に対する政府の答弁書が出た。
消極的安全保証というのは、核兵器国が核兵器を持たない国に対して核攻撃をかけないことを保証すること。世界の核軍縮をすすめる上で非常に意味があることと考えられている。核兵器国が核を持たない国を本当に攻撃しないのであれば核を持たない国が核を持とうとする意味を大きく減ずることが出来るからだ。
核兵器国とりわけ米国がこの立場をとろいうとする場合に日本の態度が大きな意味を持ってくる。日本政府が米国の「核の傘」に入ること、米国の拡大抑止に依存することを安全保障の要と考えているからだ。
つまり核兵器を持たない国に対して核兵器を使わないという立場を米国が明確にすると、日本が核兵器を持たない国から攻撃をされたときに米国は日本のために核兵器を使わないということを明確にするということになる。これは日本を攻撃しようとする国にとって有利であり、日本にとって抑止力が弱まることを意味するというわけだ。つまり米国はいつでもどんなときでも日本のために核兵器を使うという態度でいてください、ということ。
「抑止力」の発想からすれば当然ともいえる日本政府のこの立場が、実は米国の核軍縮の障害になっているとも言われている。日本が米国に守られていないと思えば、日本が米国から離れ、場合によっては独自の核武装をはかろうとするかも知れない。これは認められないから、アメリカ自身も核軍縮ができないという理屈だ。
オバマ政権が核廃絶を語り出すなかで、日本が米国の消極的安全保証に反対しないことを明確にすることは非常に重要だ。そのような立場が主意書の提出の背景にある。
これに対してこの答弁はなんだ。ヒドイ。何も答えていないのと一緒じゃないか。許せない。
-----------------------------------------------------------
平成21年5月13日提出
質問第394号
消極的安全保証問題に関する質問主意書
提出者 辻元清美
核兵器を持たない国には核攻撃をかけないことを核兵器国が保証する「消極的安全保証(NSA)」に関し、樽井澄夫軍縮代表部大使は、今年五月七日、二〇一〇年NPT再検討会議第三回準備委員会において、日本は一九七〇年にNPT(核拡散防止条約)に署名した際に、核兵器国は非核兵器国に対し核兵器の使用及び使用の威嚇をすべきでないと述べたと説明し、その立場に変更はなく、日本は「消極的安全保証」の考えを基本的に支持すると述べている。
また、米国は一九九五年四月五日、以下のように宣言している。
「米国は、以下の場合を除き、核兵器の不拡散に関する条約の締約国である非核兵器国に対して、核兵器を使用しないことを再確認する。すなわち、米国、その準州、その軍隊、もしくは、その他の兵員、その同盟国、又は、米国が安全保障上の約束を行っている国に対する侵略その他の攻撃が、核兵器国と連携し又は同盟して、当該非核兵器国により実施され又は支援される場合を除き、それらの非核兵器国に対して核兵器を使用しないことを再確認する。」
これら消極的安全保証に係わる我が国の認識は、世界の核軍縮を進めるに当たって、極めて重大な意味を持つものである。ついては、日本の「消極的安全保証(NSA)に対する基本的な支持」の意味について質問する。
一、日本政府による「NSAに対する基本的な支持」というのは、いかなる状況においても、非核兵器国に対する核兵器使用の禁止を日本が支持するという意味か示されたい。それは、生物・化学兵器あるいは大量の通常兵器による攻撃があった場合についても、非核兵器国に対する核兵器使用の禁止を日本が支持することを意味するのか示されたい。
二、日本政府による「NSAに対する基本的な支持」とは、「核兵器国の領土(準州を含む)、その軍隊、もしくは、その他の兵員、その同盟国、又は、同核兵器国が安全保障上の約束を行っている国に対する侵略その他の攻撃が、他の核兵器国と連携し又は同盟して、当該非核兵器国により実施され又は支援される場合を除き」というような条件付きで、非核兵器国に対する核兵器使用の禁止を日本が支持するという意味か示されたい。それは、生物・化学兵器あるいは大量の通常兵器による攻撃があった場合についても、それが「他の核兵器国と連携し又は同盟して、当該非核兵器国により実施され又は支援される場合を除き」、非核兵器国に対する核兵器使用の禁止を日本が支持するという意味か示されたい。
三、日本政府が支持できないNSAとは、どのようなものか示されたい。
右質問する。
―――――――――――――――――――――――――――――
内閣衆質171第394号
平成21年5月22日
内閣総理大臣 麻生太郎
衆議院議長 河野洋平殿
衆議院議員辻元清美君提出
消極的安全保証問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
議院議員辻元清美君提出消極的安全保証問題に関する質問に対する答弁書
1から3までについて
政府としては、消極的安全保証について、非核兵器国に対して核を使用しないという考え方は基本的に支持し得るものと考えているが、これを供与するのは核兵器国であり、この供与の在り方等について現時点では核兵器国間での見解の一致がみられていないと承知しており、お尋ねについてお答えすることは困難である。
消極的安全保証というのは、核兵器国が核兵器を持たない国に対して核攻撃をかけないことを保証すること。世界の核軍縮をすすめる上で非常に意味があることと考えられている。核兵器国が核を持たない国を本当に攻撃しないのであれば核を持たない国が核を持とうとする意味を大きく減ずることが出来るからだ。
核兵器国とりわけ米国がこの立場をとろいうとする場合に日本の態度が大きな意味を持ってくる。日本政府が米国の「核の傘」に入ること、米国の拡大抑止に依存することを安全保障の要と考えているからだ。
つまり核兵器を持たない国に対して核兵器を使わないという立場を米国が明確にすると、日本が核兵器を持たない国から攻撃をされたときに米国は日本のために核兵器を使わないということを明確にするということになる。これは日本を攻撃しようとする国にとって有利であり、日本にとって抑止力が弱まることを意味するというわけだ。つまり米国はいつでもどんなときでも日本のために核兵器を使うという態度でいてください、ということ。
「抑止力」の発想からすれば当然ともいえる日本政府のこの立場が、実は米国の核軍縮の障害になっているとも言われている。日本が米国に守られていないと思えば、日本が米国から離れ、場合によっては独自の核武装をはかろうとするかも知れない。これは認められないから、アメリカ自身も核軍縮ができないという理屈だ。
オバマ政権が核廃絶を語り出すなかで、日本が米国の消極的安全保証に反対しないことを明確にすることは非常に重要だ。そのような立場が主意書の提出の背景にある。
これに対してこの答弁はなんだ。ヒドイ。何も答えていないのと一緒じゃないか。許せない。
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平成21年5月13日提出
質問第394号
消極的安全保証問題に関する質問主意書
提出者 辻元清美
核兵器を持たない国には核攻撃をかけないことを核兵器国が保証する「消極的安全保証(NSA)」に関し、樽井澄夫軍縮代表部大使は、今年五月七日、二〇一〇年NPT再検討会議第三回準備委員会において、日本は一九七〇年にNPT(核拡散防止条約)に署名した際に、核兵器国は非核兵器国に対し核兵器の使用及び使用の威嚇をすべきでないと述べたと説明し、その立場に変更はなく、日本は「消極的安全保証」の考えを基本的に支持すると述べている。
また、米国は一九九五年四月五日、以下のように宣言している。
「米国は、以下の場合を除き、核兵器の不拡散に関する条約の締約国である非核兵器国に対して、核兵器を使用しないことを再確認する。すなわち、米国、その準州、その軍隊、もしくは、その他の兵員、その同盟国、又は、米国が安全保障上の約束を行っている国に対する侵略その他の攻撃が、核兵器国と連携し又は同盟して、当該非核兵器国により実施され又は支援される場合を除き、それらの非核兵器国に対して核兵器を使用しないことを再確認する。」
これら消極的安全保証に係わる我が国の認識は、世界の核軍縮を進めるに当たって、極めて重大な意味を持つものである。ついては、日本の「消極的安全保証(NSA)に対する基本的な支持」の意味について質問する。
一、日本政府による「NSAに対する基本的な支持」というのは、いかなる状況においても、非核兵器国に対する核兵器使用の禁止を日本が支持するという意味か示されたい。それは、生物・化学兵器あるいは大量の通常兵器による攻撃があった場合についても、非核兵器国に対する核兵器使用の禁止を日本が支持することを意味するのか示されたい。
二、日本政府による「NSAに対する基本的な支持」とは、「核兵器国の領土(準州を含む)、その軍隊、もしくは、その他の兵員、その同盟国、又は、同核兵器国が安全保障上の約束を行っている国に対する侵略その他の攻撃が、他の核兵器国と連携し又は同盟して、当該非核兵器国により実施され又は支援される場合を除き」というような条件付きで、非核兵器国に対する核兵器使用の禁止を日本が支持するという意味か示されたい。それは、生物・化学兵器あるいは大量の通常兵器による攻撃があった場合についても、それが「他の核兵器国と連携し又は同盟して、当該非核兵器国により実施され又は支援される場合を除き」、非核兵器国に対する核兵器使用の禁止を日本が支持するという意味か示されたい。
三、日本政府が支持できないNSAとは、どのようなものか示されたい。
右質問する。
―――――――――――――――――――――――――――――
内閣衆質171第394号
平成21年5月22日
内閣総理大臣 麻生太郎
衆議院議長 河野洋平殿
衆議院議員辻元清美君提出
消極的安全保証問題に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
議院議員辻元清美君提出消極的安全保証問題に関する質問に対する答弁書
1から3までについて
政府としては、消極的安全保証について、非核兵器国に対して核を使用しないという考え方は基本的に支持し得るものと考えているが、これを供与するのは核兵器国であり、この供与の在り方等について現時点では核兵器国間での見解の一致がみられていないと承知しており、お尋ねについてお答えすることは困難である。
忌野清志郎さんが死んじまった ― 2009/05/02

忌野清志郎が死んじまったよ。
ガンで闘病中だったことは知っていたけれど、58歳とはあまりにも早すぎる。再発がわかり秋のライブをキャンセルしたので心配はしていたけど、病状悪化の報道もなかったので、そのうちまた復活すんだろうくらいに思っていた。
06年7月にのどにがんが見つかった際も、がんを「新しいブルース」と表現し、「新しいブルースを楽しむような気持ちで治療に専念」すると前向きに病気と闘って、再発が分かったときも「このくらいのことは覚悟してたんで、ぜんぜんヘコんでないから。ブルースはまだまだ続いているというわけだ。すぐに帰ってくるから応援してくれ!」と書いた。しぶとく闘病するんじゃなかったのかよ。残念だよ。
最初に清志郎さんの曲に触れたのは、88年の『カバーズ』発禁騒動のときだった。反原発運動の中で「カバーズ」のコピーテープが出回ったのを聴いたのが最初。その後、タイマーズのヘルメットスタイルが、当時の僕の学生運動気分の琴線に触れてしばらくはよく聴いていた。でも、結局、当時は清志郎さんの歌は皮肉っぽく不真面目に聞こえて、もっとずっとストレートに感じられた浜田省吾の方に流れちゃったんだよね。
それが40を超して、なんか清志郎が分かるような気分になってきた頃には、もうがん闘病中。結局、ライブにも行ったこともないんだよね。間に合わなかったね。淋しいね。
<サマータイム・ブルース>
暑い夏がそこまで来てる
みんなが海へくり出していく
人気のない所で泳いだら
原子力発電所が建っていた
さっぱりわかんねえ、何のため?
狭い日本のサマータイム・ブルース
熱い炎が先っちょまで出てる
東海地震もそこまで来てる
だけどもまだまだ増えていく
原子力発電所が建っていく
さっぱりわかんねえ、誰のため?
狭い日本のサマータイム・ブルース
寒い冬がそこまで来てる
あんたもこのごろ抜け毛が多い (悪かったな、何だよ)
それでもテレビは言っている
「日本の原発は安全です」
さっぱりわかんねえ、根拠がねえ
これが最後のサマータイム・ブルース
(以下略)
ガンで闘病中だったことは知っていたけれど、58歳とはあまりにも早すぎる。再発がわかり秋のライブをキャンセルしたので心配はしていたけど、病状悪化の報道もなかったので、そのうちまた復活すんだろうくらいに思っていた。
06年7月にのどにがんが見つかった際も、がんを「新しいブルース」と表現し、「新しいブルースを楽しむような気持ちで治療に専念」すると前向きに病気と闘って、再発が分かったときも「このくらいのことは覚悟してたんで、ぜんぜんヘコんでないから。ブルースはまだまだ続いているというわけだ。すぐに帰ってくるから応援してくれ!」と書いた。しぶとく闘病するんじゃなかったのかよ。残念だよ。
最初に清志郎さんの曲に触れたのは、88年の『カバーズ』発禁騒動のときだった。反原発運動の中で「カバーズ」のコピーテープが出回ったのを聴いたのが最初。その後、タイマーズのヘルメットスタイルが、当時の僕の学生運動気分の琴線に触れてしばらくはよく聴いていた。でも、結局、当時は清志郎さんの歌は皮肉っぽく不真面目に聞こえて、もっとずっとストレートに感じられた浜田省吾の方に流れちゃったんだよね。
それが40を超して、なんか清志郎が分かるような気分になってきた頃には、もうがん闘病中。結局、ライブにも行ったこともないんだよね。間に合わなかったね。淋しいね。
<サマータイム・ブルース>
暑い夏がそこまで来てる
みんなが海へくり出していく
人気のない所で泳いだら
原子力発電所が建っていた
さっぱりわかんねえ、何のため?
狭い日本のサマータイム・ブルース
熱い炎が先っちょまで出てる
東海地震もそこまで来てる
だけどもまだまだ増えていく
原子力発電所が建っていく
さっぱりわかんねえ、誰のため?
狭い日本のサマータイム・ブルース
寒い冬がそこまで来てる
あんたもこのごろ抜け毛が多い (悪かったな、何だよ)
それでもテレビは言っている
「日本の原発は安全です」
さっぱりわかんねえ、根拠がねえ
これが最後のサマータイム・ブルース
(以下略)
オバマ大統領は核政策を「チェンジ」できるか ― 2009/04/07

4月5日、NATO創設60周年の首脳会議に出席するためチェコを訪問中のバラク・オバマ米大統領は、首都プラハのフラッチャニ広場で演説し、「核兵器のない世界」の実現に向けた決意を示しました。国際社会はオバマ氏の提起を概ね好意的に受けとめ、核軍縮に向けた国際協力の機運が高まりつつあります。今回は、プラハ演説の意義やその背景について考えてみたいと思います。
■原爆投下の責任を認める
まず第一に、オバマ氏は「核兵器を使用したことがある唯一の核保有国として、米国には行動する道義的責任がある」と、広島・長崎への原爆投下の責任を認めました。米国の歴代政権は原爆投下を日本の無謀な戦争を止めるため必要だったと正当化しており、これまで決してその責任を認めませんでした。オバマ演説はこの道義的責任を認め、核廃絶の「先頭に立つ」とはっきり宣言しています。そのことだけでも今回の演説は画期的だと評価したいと思います。
■脆弱なNPT体制
第二には、この新たな核政策がオバマ氏の個人的信念や理想に由来するだけではなく、米国にとって必然であったということす。
現在、核を規制する制度は核不拡散条約(NPT)しかありません。そもそもNPTとは、核兵器保有国が米ソ(当時)2国から英、仏、中と拡がるなかで、それ以上の核拡散を防ぐための妥協の産物として生まれました。67年1月時点で核兵器を保有していた米ソ英仏中を「核兵器国」として認め、その他の「非核兵器国」の核保有を禁じたのです。「核兵器がこれ以上拡がると大変なので核兵器は持たないことにしましょう。核兵器国もちゃんと核軍縮をしますから。非核兵器国の核開発を厳しく監視するかわり平和利用を認めます」という内容です。
この条約には当初から、5国だけ核保有を認めるのは不平等だという批判が浴びせらました。核兵器国はいっこうに核軍縮の義務を果たそうとはしないのに、非核兵器国はIAEA(国際原子力機関)の査察で厳格に縛られる。NPTに入らず核開発をする国も出てくる。非核兵器国にとってはNPTに協力する必要性が弱い、ごくもろい制度なのです。にも係わらず核の拡散を防ぐ仕組みは他にない。核保有国は核を独占し続けるためにはNPTを守り核軍縮の努力をしなくてはならないわけです。
さらに核兵器をめぐる状況が大きく変わりました。冷戦時代には米ソが互いに1万発もの核兵器を突きつけあうことで奇妙な安定が生まれました。このような核抑止の構造には、相手が一定の合理的・理性的な判断をするだろうというある種の信頼関係が必要です。しかし新たな核保有国が合理的な判断するかどうかは怪しい。核が抑止力としての役割を果たせるか分からなくなってきたわけです。まして国土や国民を持たないテロリストが核を持てば抑止もヘチマもありません。
■核抑止力から核不拡散へ
このような状況の中で、抑止力としての核の必要性よりも、核の拡散防止の重要性が高まって来たわけです。すでに冷戦終結後こうした議論がはじまっていました。96年にはリー・バトラー元米戦略空軍司令官ら世界の17ヵ国の元将官60人による核兵器廃絶を求める声明を発表され、98年にはカーター元米大統領など46ヵ国117名の文民指導者の声明も発表されました。その後、ブッシュ政権の単独行動主義政策の下で冷静な議論はすすみませんでしたが、07年にはキャシンジャー元国務長官ら米政界の重鎮4人による提言(フーバープラン)が出され、再びこうした動きがはじまろうとしていました。オバマ氏のプラハ演説もこうした流れの中にあるものです。冷戦型の核抑止力が有効性を失い、核不拡散・反テロのためにも核軍縮をすすめる必要が高まっているわけです。
■米国民が核を手放せるか
第三には、それでもなお道は険しいということです。
オバマ氏は、①ロシアとの核軍縮条約締結、②CTBTの批准実現、③兵器級核物質の生産停止条約交渉の妥結、など多くの具体的目標を掲げました。しかしどれをとっても実現は容易ではありません。なにより長年、核大国の位置に安住してきた米国民にとって核兵器は肯定的な存在だということです。オバマ大統領は米国民を説得することが出来るのか、そこがカギになるかも知れません。長年、核を振りかざしてきた米国の取り組みがどこまで世界の信頼を得られるかも分かりません。オバマ氏がこの困難な道をどう切り開くのか米国の核政策の「チェンジ」に大いに期待したいと思います。
■原爆投下の責任を認める
まず第一に、オバマ氏は「核兵器を使用したことがある唯一の核保有国として、米国には行動する道義的責任がある」と、広島・長崎への原爆投下の責任を認めました。米国の歴代政権は原爆投下を日本の無謀な戦争を止めるため必要だったと正当化しており、これまで決してその責任を認めませんでした。オバマ演説はこの道義的責任を認め、核廃絶の「先頭に立つ」とはっきり宣言しています。そのことだけでも今回の演説は画期的だと評価したいと思います。
■脆弱なNPT体制
第二には、この新たな核政策がオバマ氏の個人的信念や理想に由来するだけではなく、米国にとって必然であったということす。
現在、核を規制する制度は核不拡散条約(NPT)しかありません。そもそもNPTとは、核兵器保有国が米ソ(当時)2国から英、仏、中と拡がるなかで、それ以上の核拡散を防ぐための妥協の産物として生まれました。67年1月時点で核兵器を保有していた米ソ英仏中を「核兵器国」として認め、その他の「非核兵器国」の核保有を禁じたのです。「核兵器がこれ以上拡がると大変なので核兵器は持たないことにしましょう。核兵器国もちゃんと核軍縮をしますから。非核兵器国の核開発を厳しく監視するかわり平和利用を認めます」という内容です。
この条約には当初から、5国だけ核保有を認めるのは不平等だという批判が浴びせらました。核兵器国はいっこうに核軍縮の義務を果たそうとはしないのに、非核兵器国はIAEA(国際原子力機関)の査察で厳格に縛られる。NPTに入らず核開発をする国も出てくる。非核兵器国にとってはNPTに協力する必要性が弱い、ごくもろい制度なのです。にも係わらず核の拡散を防ぐ仕組みは他にない。核保有国は核を独占し続けるためにはNPTを守り核軍縮の努力をしなくてはならないわけです。
さらに核兵器をめぐる状況が大きく変わりました。冷戦時代には米ソが互いに1万発もの核兵器を突きつけあうことで奇妙な安定が生まれました。このような核抑止の構造には、相手が一定の合理的・理性的な判断をするだろうというある種の信頼関係が必要です。しかし新たな核保有国が合理的な判断するかどうかは怪しい。核が抑止力としての役割を果たせるか分からなくなってきたわけです。まして国土や国民を持たないテロリストが核を持てば抑止もヘチマもありません。
■核抑止力から核不拡散へ
このような状況の中で、抑止力としての核の必要性よりも、核の拡散防止の重要性が高まって来たわけです。すでに冷戦終結後こうした議論がはじまっていました。96年にはリー・バトラー元米戦略空軍司令官ら世界の17ヵ国の元将官60人による核兵器廃絶を求める声明を発表され、98年にはカーター元米大統領など46ヵ国117名の文民指導者の声明も発表されました。その後、ブッシュ政権の単独行動主義政策の下で冷静な議論はすすみませんでしたが、07年にはキャシンジャー元国務長官ら米政界の重鎮4人による提言(フーバープラン)が出され、再びこうした動きがはじまろうとしていました。オバマ氏のプラハ演説もこうした流れの中にあるものです。冷戦型の核抑止力が有効性を失い、核不拡散・反テロのためにも核軍縮をすすめる必要が高まっているわけです。
■米国民が核を手放せるか
第三には、それでもなお道は険しいということです。
オバマ氏は、①ロシアとの核軍縮条約締結、②CTBTの批准実現、③兵器級核物質の生産停止条約交渉の妥結、など多くの具体的目標を掲げました。しかしどれをとっても実現は容易ではありません。なにより長年、核大国の位置に安住してきた米国民にとって核兵器は肯定的な存在だということです。オバマ大統領は米国民を説得することが出来るのか、そこがカギになるかも知れません。長年、核を振りかざしてきた米国の取り組みがどこまで世界の信頼を得られるかも分かりません。オバマ氏がこの困難な道をどう切り開くのか米国の核政策の「チェンジ」に大いに期待したいと思います。
オバマ大統領の4・5プラハ演説 ― 2009/04/06

4月6日、NATO(北大西洋条約機構)が創設60周年の首脳会議に出席するためチェコを訪問中のバラク・オバマ米大統領は、首都プラハのフラッチャニ広場で演説し、「核兵器のない世界」の実現に向けて世界をけん引してゆく決意を示した。
米国の歴代政権ははヒロシマ・ナガサキの原爆投下を日本の無謀な戦争を止めるための必要悪だったとして正当化し、責任を認めていない。
今回のオバマ演説の内容はその意味では画期的である。核兵器の先制使用戦略を公にし、使い勝手のよい小型核兵器の開発をめざし、国際政治の場では核軍縮を求める声に敵対し続けた前ブッシュ政権の路線とは大きく異なることは確かだ。
過剰な期待は禁物かもしれないが、核兵器をめぐる世界の流れを変える可能性があり、全体がよい方向に向かっていくための転換点となる可能性はあるかも知れない。
内容の分析については別途行なう予定だが、とりあえず演説の内容をupする。検索すると先に出るからかもしれないがasahi.comの「演説詳報」をもとにした論評が多いようだがこれは「主要部分」。米大使館のサイトに全訳がのっている。
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アメリカ合衆国大統領バラク・フセイン・オバマのプラハにおける演説(全訳)
2009年4月5日、於:チェコ共和国プラハ・フラッチャニ広場
温かい歓迎をありがとうございます。プラハの皆さん、ありがとうございます。そしてチェコ共和国の皆さん、ありがとうございます。本日私は、ヨーロッパの中心にあるこの素晴らしい都市の中心部に皆さんと共に立つことを誇りに思います。また、私の前任者の1人の表現を借りれば、ミシェル・オバマをプラハに連れてきた男であることを誇りに思います。
クラウス大統領、トポラーネク首相をはじめとする、ご臨席の政府要人の皆さん、温かいおもてなしに感謝します。そしてチェコ共和国民の皆さんの米国への友情に、お礼の言葉を申し上げます。
私は、シカゴで長年暮らす間に、チェコの人たちが陽気な、楽しい友人であることを知るようになりました。私の後ろには、チェコ国民の英雄トーマス・マサリク大統領の銅像があります。1918年に、米国がチェコの独立を支援することを誓約した後、マサリク大統領はシカゴで、10万人以上と推定される聴衆を前に演説をしました。私はマサリク大統領の記録に到達することはできないと思いますが、シカゴからプラハへ、彼の足跡をたどることを光栄に思います。
1000年以上にわたり、プラハは、世界のいかなる都市とも異なる、独自の道を歩んできました。皆さんは、戦争も平和も体験してきました。いくつもの帝国の盛衰を目の当たりにしてきました。そして、芸術と科学、政治と文学の世界で、革命の先頭に立ってきました。そうした中で、プラハの人々は、一貫して自らの道を追求し、自らの運命を切り開くことを主張してきました。そして、この古い歴史と若さを合わせ持つ「黄金の都」は、皆さんの不屈の精神を表す生きた記念碑となっています。
私が生まれたころ、世界は分裂しており、私たちの国は今とは大きく異なる状況に直面していました。当時、私のような人間がいつの日か米国大統領になると予想する人は、ほとんどいませんでした。米国大統領がいつの日かこのようにプラハの聴衆を前に話をすることができるようになると予想する人は、ほとんどいませんでした。そして、チェコ共和国が自由な国となり、北大西洋条約機構(NATO)の一員となり、統一されたヨーロッパを指導する立場になると予想する人はほとんどいませんでした。そのような考えは、夢のような話として片付けられたでしょう。
私たちが今日ここにいるのは、世界は変わることができないという声を意に介さなかった大勢の人々のおかげです。
私たちが今日ここにいるのは、壁のどちら側に住んでいようとも、またどのような外見であろうとも、すべての人間に自由という権利があると主張し、そのために危険を冒した人々の勇気のおかげです。
私たちが今日ここにいるのは、プラハの春のおかげです。信念に基づき、ひたすら自由と機会を追求する行動が、戦車と武器の力で国民の意思を弾圧しようとする人々を恥じ入らせてくれたおかげです。
私たちが今日ここにいるのは、今から20年前に、約束された新しい日の到来と、あまりに長い間与えられないままだった基本的人権を求めて、街頭デモを行ったプラハの市民のおかげです。「Sametová revoluce」、すなわち「ビロード革命」は、私たちに多くのことを教えてくれました。平和的な抗議が帝国の基礎を揺るがし、イデオロギーの空虚さを明るみに出すことができること、小国が世界の出来事に極めて重要な役割を果たせること、若者が先頭に立って旧来の対立を克服することができること、そして精神的なリーダーシップはいかなる武器よりも強力であるということを教えてくれたのです。
平和で統一された自由なヨーロッパの中心で、今、私が皆さんにお話しすることができるのはそのためです。指導者たちが信じなかったときでさえも、普通の人々が、分裂を克服できると信じたからです。壁を取り壊すことができると信じ、平和を達成できると信じたからです。
私たちが今日ここにいるのは、あらゆる困難にもかかわらず、米国民とチェコ国民が、この日が必ず来ると信じたからです。
私たちは、こうした歴史を共有しています。しかし今、この世代、私たちの世代が、何もせずにいることはできません。私たちも選択を迫られています。世界が統合に向かうにつれ、相互のつながりが増しています。そして、世界的な経済危機、気候変動、旧来の対立という根強い脅威、新たな脅威、壊滅的な効果を持つ兵器の拡散といった問題が、とても制御できないほどのスピードで進んできました。
いずれの課題も、すぐに、あるいは容易に解決できるものではありません。いずれも、解決するには、私たちが相互の意見に耳を傾けて協力すること、時に生じる意見の相違ではなく、共通の利害に重点を置くこと、そして私たちを分裂させ得るいかなる力よりも強い、共通の価値観を再確認することが必要な課題ばかりです。これこそ、私たちが続けていかなければならない取り組みです。私がヨーロッパへ来たのは、その取り組みを始めるためです。
私たちが再び繁栄するためには、国境を越えて協調した行動を取ることが必要です。そうした行動とは、新たな雇用をつくり出すために投資することであり、成長を阻む保護主義の壁に抵抗することです。また、金融システムを改革し、乱用や今後の危機を防ぐための新たな規則を定めることです。
そして私たちには、共通の繁栄と共通の人間性に対する義務を負っており、新興市場や、おそらく金融危機とはほとんど関係がなかったにもかかわらず、そのために最も苦しんでいる貧しい人々に手を差し伸べなければなりません。それ故、私たちは、誰もが一定の援助を受けることができるように、今週、国際通貨基金に1兆ドルを超える資金を拠出する決定を下しました。
地球を守るために、私たちのエネルギー消費の仕方を変えるのは今です。私たちは共に気候変動に対処するため、化石燃料への世界的な依存に終止符を打ち、風力や太陽光などの新たなエネルギー源を利用し、すべての国が責任を果たすことを要求しなければなりません。皆さんに誓って申し上げますが、米国は、こうした世界的な努力で先頭に立つ準備ができています。
私たちは、共通の安全保障を提供するために、同盟を強化しなければなりません。NATOが設立されたのは今から60年前、共産主義がチェコスロバキアを支配した後でした。この時、自由主義世界は、遅ればせながら、自由主義世界が分裂している場合ではないことを知ったのです。そこで私たちは団結して、史上最強の同盟を構築しました。そしてその後何年間も、何十年も協力を続けた結果、ついに鉄のカーテンが開かれ、自由が流れる水のように広がっていきました。
今年は、チェコ共和国はNATO加盟10周年を迎えます。20世紀には、チェコ共和国が参加することなく決断が下されたことが何度もありました。大国が皆さんを失望させ、あるいは皆さんの意見を聞かずに皆さんの運命を決めることもありました。私はここで約束します。米国は決してチェコ国民に背を向けることはない、と。私たちは、共通の価値観、共通の歴史によって…私たちは、共通の価値観、共通の歴史、そして永続的な同盟の約束によって結ばれています。北大西洋条約第5条には、一締約国に対する武力攻撃は全締約国に対する攻撃とみなす、と明記されています。これは、今の時代にも、いつの時代にも適用される約束です。
米国が攻撃を受けたとき、チェコ共和国の国民はこの約束を守りました。何千もの人々が米国の国土で殺害されたとき、NATOはそれに呼応しました。アフガニスタンにおけるNATOの任務は、大西洋の両側の人々の安全にとって不可欠なものです。私たちは、ニューヨークからロンドンまで各地を攻撃してきた、まさにそのアルカイダ・テロリストを標的とし、アフガニスタン国民が自らの将来に責任を負えるよう支援しています。私たちは、自由主義諸国が、共通の安全保障のために提携できることを実証しています。そして私は、米国民が、この努力に際してチェコ国民が払った犠牲に敬意を表し、犠牲となった方々を追悼していることをお伝えしたいと思います。
いかなる同盟も、手をこまねいている場合ではありません。私たちは、新しい脅威がどこで発生しようとも、それに対処するための危機管理計画を備えておくために、NATO加盟国として協力しなければなりません。国境を越えた危険に対処するために、相互の協力関係を強化し、世界各地の国家や機関との関係を強化しなければなりません。そして、共通の懸念事項に関して、ロシアと建設的な関係を構築すべく努力しなければなりません。
今日私が重点を置いてお話しする課題のひとつは、この両国の安全保障にとって、また世界の平和にとって根本的な課題、すなわち21世紀における核兵器の未来、という問題です。
何千発もの核兵器の存在は、冷戦が残した最も危険な遺産です。米国とソ連の間に核戦争が起きることはありませんでしたが、何世代にもわたり人々は、この世界が一瞬の閃光(せんこう)の下に消失してしまうこともあり得ると承知の上で生活していました。プラハのように何世紀にもわたって存在し、人類の美しさと才能を体現した都市が消え去ってしまう可能性がありました。
今日、冷戦はなくなりましたが、何千発もの核兵器はまだ存在しています。歴史の奇妙な展開により、世界規模の核戦争の脅威が少なくなる一方で、核攻撃の危険性は高まっています。核兵器を保有する国家が増えています。核実験が続けられています。闇市場では核の機密と核物質が大量に取引されています。核爆弾の製造技術が拡散しています。テロリストは、核爆弾を購入、製造、あるいは盗む決意を固めています。こうした危険を封じ込めるための私たちの努力は、全世界的な不拡散体制を軸としていますが、規則を破る人々や国家が増えるに従い、この軸が持ちこたえられなくなる時期が来る可能性があります。
これは、世界中のあらゆる人々に影響を及ぼします。ひとつの都市で1発の核兵器が爆発すれば、それがニューヨークであろうとモスクワであろうと、イスラマバードあるいはムンバイであろうと、東京、テルアビブ、パリ、プラハのどの都市であろうと、何十万もの人々が犠牲となる可能性があります。そして、それがどこで発生しようとも、世界の安全、安全保障、社会、経済、そして究極的には私たちの生存など、その影響には際限がありません。
こうした兵器の拡散を抑えることはできない、私たちは究極の破壊手段を保有する国家や人々がますます増加する世界に生きる運命にある、と主張する人もいます。このような運命論は、極めて危険な敵です。なぜなら、核兵器の拡散が不可避であると考えることは、ある意味、核兵器の使用が不可避であると認めることになるからです。
私たちは、20世紀に自由のために戦ったように、21世紀には、世界中の人々が恐怖のない生活を送る権利を求めて共に戦わなければなりません。そして、核保有国として、核兵器を使用したことがある唯一の核保有国として、米国には行動する道義的責任があります。米国だけではこの活動で成功を収めることはできませんが、その先頭に立つことはできます。その活動を始めることはできます。
従って本日、私は、米国が核兵器のない世界の平和と安全を追求する決意であることを、信念を持って明言いたします。私は甘い考えは持っていません。この目標は、すぐに達成されるものではありません。おそらく私の生きているうちには達成されないでしょう。この目標を達成するには、忍耐と粘り強さが必要です。しかし今、私たちは、世界は変わることができないという声を取り合ってはいけません。「イエス・ウィ・キャン」と主張しなければならないのです。
では、私たちが取らなければならない道筋を説明しましょう。まず、米国は、核兵器のない世界に向けて、具体的な措置を取ります。冷戦時代の考え方に終止符を打つために、米国は国家安全保障戦略における核兵器の役割を縮小し、他国にも同様の措置を取ることを求めます。もちろん、核兵器が存在する限り、わが国は、いかなる敵であろうとこれを抑止し、チェコ共和国を含む同盟諸国に対する防衛を保証するために、安全かつ効果的な兵器を維持します。しかし、私たちは、兵器の保有量を削減する努力を始めます。
米国は今年、弾頭と備蓄量を削減するために、ロシアと、新たな戦略兵器削減条約の交渉を行います。メドベージェフ大統領と私は、ロンドンでこの作業を開始しました。そして今年末までには、法的拘束力を持ち、十分に大胆な新しい合意を目指す予定です。これは、さらなる削減に向けた準備段階となるものであり、この努力にすべての核兵器保有国を参加させることを目指します。
全世界的な核実験の禁止を実現するために、私の政権は、米国による包括的核実験禁止条約の批准を直ちに、積極的に推し進めます。この問題については50年以上にわたって交渉が続けられていますが、今こそ、核兵器実験を禁止する時です。
そして、核爆弾の製造に必要な物質の供給を断つために、米国は、国家による核兵器製造に使用することを目的とする核分裂性物質の生産を、検証可能な形で禁止する新たな条約の締結に努めます。核兵器の拡散阻止に本気で取り組むのであれば、核兵器の製造に使われる兵器級物質の製造を停止すべきです。これが初めの1歩です。
第2に、私たちは共に、協力の基盤として、核不拡散条約を強化します。
条約の基本的な内容は、理にかなったものです。核保有国は軍縮へ向かって進み、核兵器を保有しない国は今後も核兵器を入手せず、すべての国々に対し原子力エネルギーの平和利用を可能にする、という内容です。不拡散条約を強化するために私たちが受け入れるべき原則がいくつかあります。国際的な査察を強化するための資源と権限の増強が必要です。規則に違反していることが発覚した国や、理由なしに条約を脱退しようとする国が、即座に実質的な報いを受けるような制度が必要です。
そして、私たちは、各国が、拡散の危険を高めることなく、平和的に原子力エネルギーを利用できるようにするために、国際燃料バンクなど、原子力の民生利用での協力に関する新たな枠組みを構築すべきです。これは、核兵器を放棄するすべての国、特に原子力の平和利用計画に着手しつつある開発途上国の権利でなければなりません。規則に従う国家の権利を拒否することを前提とする手法は、決して成功することはありません。私たちは、気候変動と戦い、すべての人々にとって平和の機会を推進するために、原子力エネルギーを利用しなければなりません。
しかし、私たちは前進するに当たり、幻想を抱いてはいません。規則を破る国も出てくると思われます。いかなる国であろうとも規則を破れば、必ずその報いを受けるような制度を整備する必要があるのは、そのためです。
今朝、私たちは、こうした脅威に対処するための新しい、より厳格な手段が必要であることを、改めて実感させられました。北朝鮮が再び規則を破り、長距離ミサイル用にも使うことが可能なロケットの発射実験を行ったのです。この挑発行為は、行動を取ることの必要性を浮き彫りにしています。それは、本日午後の国連安全保障理事会での行動だけでなく、核兵器の拡散を阻止するという決意の下に取る行動です。
規則は、拘束力を持たなければなりません。違反は、罰せられなければなりません。言葉は、実際に意味を持たなければなりません。世界は結束して、核兵器の拡散を防がなければなりません。今こそ、国際社会が断固とした対応を取る時です。北朝鮮は、脅威と違法な兵器によって安全保障と尊敬を勝ち取る道を切り開くことは決してできない、ということを理解しなければなりません。すべての国家が、より強力な国際体制を築くために協力しなければなりません。私たちが協力して北朝鮮に圧力をかけ、方針を変更するよう迫らなければならないのはそのためです。
イランは、まだ核兵器を製造していません。私の政権は、イランとの相互の利益と尊敬に基づき、イランとの関与を求めていきます。私たちは対話を信じています。しかし、対話の中で明確な選択肢を提示していきます。私たちは、イランが政治的にも経済的にも、国際社会の中で正当な位置を占めることを望んでいます。私たちは、厳しい査察の下で原子力エネルギーを平和的に利用するイランの権利を支持します。これこそ、イラン・イスラム共和国が取ることができる道です。一方で、イラン政府は、さらなる孤立と、国際的な圧力と、すべての国々にとって危険を高めることになる、中東地域における核軍拡競争の道を選ぶこともできます。
はっきり言いましょう。イランの核開発・弾道ミサイル開発活動は、米国だけでなく、イランの近隣諸国および米国の同盟国にも真の脅威を及ぼします。チェコ共和国とポーランドは勇敢にも、こうしたミサイルに対する防衛システムの配備に同意してくれました。イランからの脅威が続く限り、私たちは、費用対効果の高い、実績のあるミサイル防衛システムの導入を続けていきます。イランの脅威がなくなれば、私たちの安全保障の基盤が強化され、ヨーロッパにミサイル防衛システムを配備する動機がなくなります。
最後に、私たちは、テロリストが決して核兵器を入手することがないようにしなければなりません。これは、世界の安全保障に対する、最も差し迫った、かつ最大の脅威です。1人のテロリストが核兵器を持てば、膨大な破壊力を発揮することができます。アルカイダは、核爆弾の入手を目指す、そしてためらうことなくそれを使う、と言っています。そして、管理が不十分な核物質が世界各地に存在することが分かっています。国民を守るためには、直ちに、目的意識を持って行動しなければなりません。
本日、私は、世界中の脆弱(ぜいじゃく)な核物質を4年以内に保護管理することを目的とした、新たな国際活動を発表します。私たちは、新しい基準を設定し、ロシアとの協力を拡大し、こうした機微物質を管理するための新たなパートナーシップの構築に努めます。
また私たちは、闇市場を解体し、物質の輸送を発見してこれを阻止し、金融手段を使ってこの危険な取引を停止させる活動を拡充しなければなりません。この脅威は長期的なものとなるため、私たちは、「拡散に対する安全保障構想」や「核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアチブ」などの活動を、持続的な国際制度に転換するために協力すべきです。そして、手始めとして、米国の主催による核安全保障に関する国際サミットを今後1年以内に開催します。
私たちが、このように幅広い課題について行動を起こせるのかと疑問を持つ人もいると思います。国家間には避けられない立場の相違があるため、真の国際協力が可能であるかどうか疑問を持つ人もいます。そして、核兵器のない世界の話を聞き、実現不可能と思える目標を設定することに価値があるのかという疑問を持つ人もいます。
しかし間違ってはいけません。そうした考え方の行き着く先は分かっています。国家や国民が、相違点によって特徴付けられることを良しとするとき、相互の溝は深まります。私たちが平和の追求を怠るときには、永久に平和をつかむことができません。希望ではなく恐怖を選んだときにどうなるかは分かっています。協力を求める声を非難し、あるいは無視することは、容易であると同時に、卑劣なことでもあります。戦争はそのようにして始まります。人間の進歩はそこで止まってしまうのです。
この世界には暴力と不正があり、私たちはそれに立ち向かわなければなりません。その際に、私たちは、分裂するのではなく、自由な国家、自由な国民として結束しなければなりません。武器を捨てることを呼びかけるより、武器を取ることを呼びかける方が、人々の感情をかき立てるものです。だからこそ、私たちは団結して、平和と進歩を求める声を上げなければなりません。
それは、今もプラハの街にこだまする声です。1968年の亡霊です。ビロード革命のときに聞こえた歓喜に満ちた声です。一度も発砲することなく、核を保有する帝国の打倒に貢献したチェコの人々の声です。
人間の運命は、私たちが自ら切り開くものです。ここプラハで、より良い未来を求めることによって、私たちの過去に敬意を示そうではありませんか。私たちの間にある溝に橋を架け、希望を基にさらに前進し、これまでより大きな繁栄と平和をこの世界にもたらす責任を引き受けようではありませんか。共に手を携えれば、それを実現することができます。
ありがとうございました。プラハの皆さん、ありがとうございました。
(米大使館サイトの仮訳)
米国の歴代政権ははヒロシマ・ナガサキの原爆投下を日本の無謀な戦争を止めるための必要悪だったとして正当化し、責任を認めていない。
今回のオバマ演説の内容はその意味では画期的である。核兵器の先制使用戦略を公にし、使い勝手のよい小型核兵器の開発をめざし、国際政治の場では核軍縮を求める声に敵対し続けた前ブッシュ政権の路線とは大きく異なることは確かだ。
過剰な期待は禁物かもしれないが、核兵器をめぐる世界の流れを変える可能性があり、全体がよい方向に向かっていくための転換点となる可能性はあるかも知れない。
内容の分析については別途行なう予定だが、とりあえず演説の内容をupする。検索すると先に出るからかもしれないがasahi.comの「演説詳報」をもとにした論評が多いようだがこれは「主要部分」。米大使館のサイトに全訳がのっている。
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アメリカ合衆国大統領バラク・フセイン・オバマのプラハにおける演説(全訳)
2009年4月5日、於:チェコ共和国プラハ・フラッチャニ広場
温かい歓迎をありがとうございます。プラハの皆さん、ありがとうございます。そしてチェコ共和国の皆さん、ありがとうございます。本日私は、ヨーロッパの中心にあるこの素晴らしい都市の中心部に皆さんと共に立つことを誇りに思います。また、私の前任者の1人の表現を借りれば、ミシェル・オバマをプラハに連れてきた男であることを誇りに思います。
クラウス大統領、トポラーネク首相をはじめとする、ご臨席の政府要人の皆さん、温かいおもてなしに感謝します。そしてチェコ共和国民の皆さんの米国への友情に、お礼の言葉を申し上げます。
私は、シカゴで長年暮らす間に、チェコの人たちが陽気な、楽しい友人であることを知るようになりました。私の後ろには、チェコ国民の英雄トーマス・マサリク大統領の銅像があります。1918年に、米国がチェコの独立を支援することを誓約した後、マサリク大統領はシカゴで、10万人以上と推定される聴衆を前に演説をしました。私はマサリク大統領の記録に到達することはできないと思いますが、シカゴからプラハへ、彼の足跡をたどることを光栄に思います。
1000年以上にわたり、プラハは、世界のいかなる都市とも異なる、独自の道を歩んできました。皆さんは、戦争も平和も体験してきました。いくつもの帝国の盛衰を目の当たりにしてきました。そして、芸術と科学、政治と文学の世界で、革命の先頭に立ってきました。そうした中で、プラハの人々は、一貫して自らの道を追求し、自らの運命を切り開くことを主張してきました。そして、この古い歴史と若さを合わせ持つ「黄金の都」は、皆さんの不屈の精神を表す生きた記念碑となっています。
私が生まれたころ、世界は分裂しており、私たちの国は今とは大きく異なる状況に直面していました。当時、私のような人間がいつの日か米国大統領になると予想する人は、ほとんどいませんでした。米国大統領がいつの日かこのようにプラハの聴衆を前に話をすることができるようになると予想する人は、ほとんどいませんでした。そして、チェコ共和国が自由な国となり、北大西洋条約機構(NATO)の一員となり、統一されたヨーロッパを指導する立場になると予想する人はほとんどいませんでした。そのような考えは、夢のような話として片付けられたでしょう。
私たちが今日ここにいるのは、世界は変わることができないという声を意に介さなかった大勢の人々のおかげです。
私たちが今日ここにいるのは、壁のどちら側に住んでいようとも、またどのような外見であろうとも、すべての人間に自由という権利があると主張し、そのために危険を冒した人々の勇気のおかげです。
私たちが今日ここにいるのは、プラハの春のおかげです。信念に基づき、ひたすら自由と機会を追求する行動が、戦車と武器の力で国民の意思を弾圧しようとする人々を恥じ入らせてくれたおかげです。
私たちが今日ここにいるのは、今から20年前に、約束された新しい日の到来と、あまりに長い間与えられないままだった基本的人権を求めて、街頭デモを行ったプラハの市民のおかげです。「Sametová revoluce」、すなわち「ビロード革命」は、私たちに多くのことを教えてくれました。平和的な抗議が帝国の基礎を揺るがし、イデオロギーの空虚さを明るみに出すことができること、小国が世界の出来事に極めて重要な役割を果たせること、若者が先頭に立って旧来の対立を克服することができること、そして精神的なリーダーシップはいかなる武器よりも強力であるということを教えてくれたのです。
平和で統一された自由なヨーロッパの中心で、今、私が皆さんにお話しすることができるのはそのためです。指導者たちが信じなかったときでさえも、普通の人々が、分裂を克服できると信じたからです。壁を取り壊すことができると信じ、平和を達成できると信じたからです。
私たちが今日ここにいるのは、あらゆる困難にもかかわらず、米国民とチェコ国民が、この日が必ず来ると信じたからです。
私たちは、こうした歴史を共有しています。しかし今、この世代、私たちの世代が、何もせずにいることはできません。私たちも選択を迫られています。世界が統合に向かうにつれ、相互のつながりが増しています。そして、世界的な経済危機、気候変動、旧来の対立という根強い脅威、新たな脅威、壊滅的な効果を持つ兵器の拡散といった問題が、とても制御できないほどのスピードで進んできました。
いずれの課題も、すぐに、あるいは容易に解決できるものではありません。いずれも、解決するには、私たちが相互の意見に耳を傾けて協力すること、時に生じる意見の相違ではなく、共通の利害に重点を置くこと、そして私たちを分裂させ得るいかなる力よりも強い、共通の価値観を再確認することが必要な課題ばかりです。これこそ、私たちが続けていかなければならない取り組みです。私がヨーロッパへ来たのは、その取り組みを始めるためです。
私たちが再び繁栄するためには、国境を越えて協調した行動を取ることが必要です。そうした行動とは、新たな雇用をつくり出すために投資することであり、成長を阻む保護主義の壁に抵抗することです。また、金融システムを改革し、乱用や今後の危機を防ぐための新たな規則を定めることです。
そして私たちには、共通の繁栄と共通の人間性に対する義務を負っており、新興市場や、おそらく金融危機とはほとんど関係がなかったにもかかわらず、そのために最も苦しんでいる貧しい人々に手を差し伸べなければなりません。それ故、私たちは、誰もが一定の援助を受けることができるように、今週、国際通貨基金に1兆ドルを超える資金を拠出する決定を下しました。
地球を守るために、私たちのエネルギー消費の仕方を変えるのは今です。私たちは共に気候変動に対処するため、化石燃料への世界的な依存に終止符を打ち、風力や太陽光などの新たなエネルギー源を利用し、すべての国が責任を果たすことを要求しなければなりません。皆さんに誓って申し上げますが、米国は、こうした世界的な努力で先頭に立つ準備ができています。
私たちは、共通の安全保障を提供するために、同盟を強化しなければなりません。NATOが設立されたのは今から60年前、共産主義がチェコスロバキアを支配した後でした。この時、自由主義世界は、遅ればせながら、自由主義世界が分裂している場合ではないことを知ったのです。そこで私たちは団結して、史上最強の同盟を構築しました。そしてその後何年間も、何十年も協力を続けた結果、ついに鉄のカーテンが開かれ、自由が流れる水のように広がっていきました。
今年は、チェコ共和国はNATO加盟10周年を迎えます。20世紀には、チェコ共和国が参加することなく決断が下されたことが何度もありました。大国が皆さんを失望させ、あるいは皆さんの意見を聞かずに皆さんの運命を決めることもありました。私はここで約束します。米国は決してチェコ国民に背を向けることはない、と。私たちは、共通の価値観、共通の歴史によって…私たちは、共通の価値観、共通の歴史、そして永続的な同盟の約束によって結ばれています。北大西洋条約第5条には、一締約国に対する武力攻撃は全締約国に対する攻撃とみなす、と明記されています。これは、今の時代にも、いつの時代にも適用される約束です。
米国が攻撃を受けたとき、チェコ共和国の国民はこの約束を守りました。何千もの人々が米国の国土で殺害されたとき、NATOはそれに呼応しました。アフガニスタンにおけるNATOの任務は、大西洋の両側の人々の安全にとって不可欠なものです。私たちは、ニューヨークからロンドンまで各地を攻撃してきた、まさにそのアルカイダ・テロリストを標的とし、アフガニスタン国民が自らの将来に責任を負えるよう支援しています。私たちは、自由主義諸国が、共通の安全保障のために提携できることを実証しています。そして私は、米国民が、この努力に際してチェコ国民が払った犠牲に敬意を表し、犠牲となった方々を追悼していることをお伝えしたいと思います。
いかなる同盟も、手をこまねいている場合ではありません。私たちは、新しい脅威がどこで発生しようとも、それに対処するための危機管理計画を備えておくために、NATO加盟国として協力しなければなりません。国境を越えた危険に対処するために、相互の協力関係を強化し、世界各地の国家や機関との関係を強化しなければなりません。そして、共通の懸念事項に関して、ロシアと建設的な関係を構築すべく努力しなければなりません。
今日私が重点を置いてお話しする課題のひとつは、この両国の安全保障にとって、また世界の平和にとって根本的な課題、すなわち21世紀における核兵器の未来、という問題です。
何千発もの核兵器の存在は、冷戦が残した最も危険な遺産です。米国とソ連の間に核戦争が起きることはありませんでしたが、何世代にもわたり人々は、この世界が一瞬の閃光(せんこう)の下に消失してしまうこともあり得ると承知の上で生活していました。プラハのように何世紀にもわたって存在し、人類の美しさと才能を体現した都市が消え去ってしまう可能性がありました。
今日、冷戦はなくなりましたが、何千発もの核兵器はまだ存在しています。歴史の奇妙な展開により、世界規模の核戦争の脅威が少なくなる一方で、核攻撃の危険性は高まっています。核兵器を保有する国家が増えています。核実験が続けられています。闇市場では核の機密と核物質が大量に取引されています。核爆弾の製造技術が拡散しています。テロリストは、核爆弾を購入、製造、あるいは盗む決意を固めています。こうした危険を封じ込めるための私たちの努力は、全世界的な不拡散体制を軸としていますが、規則を破る人々や国家が増えるに従い、この軸が持ちこたえられなくなる時期が来る可能性があります。
これは、世界中のあらゆる人々に影響を及ぼします。ひとつの都市で1発の核兵器が爆発すれば、それがニューヨークであろうとモスクワであろうと、イスラマバードあるいはムンバイであろうと、東京、テルアビブ、パリ、プラハのどの都市であろうと、何十万もの人々が犠牲となる可能性があります。そして、それがどこで発生しようとも、世界の安全、安全保障、社会、経済、そして究極的には私たちの生存など、その影響には際限がありません。
こうした兵器の拡散を抑えることはできない、私たちは究極の破壊手段を保有する国家や人々がますます増加する世界に生きる運命にある、と主張する人もいます。このような運命論は、極めて危険な敵です。なぜなら、核兵器の拡散が不可避であると考えることは、ある意味、核兵器の使用が不可避であると認めることになるからです。
私たちは、20世紀に自由のために戦ったように、21世紀には、世界中の人々が恐怖のない生活を送る権利を求めて共に戦わなければなりません。そして、核保有国として、核兵器を使用したことがある唯一の核保有国として、米国には行動する道義的責任があります。米国だけではこの活動で成功を収めることはできませんが、その先頭に立つことはできます。その活動を始めることはできます。
従って本日、私は、米国が核兵器のない世界の平和と安全を追求する決意であることを、信念を持って明言いたします。私は甘い考えは持っていません。この目標は、すぐに達成されるものではありません。おそらく私の生きているうちには達成されないでしょう。この目標を達成するには、忍耐と粘り強さが必要です。しかし今、私たちは、世界は変わることができないという声を取り合ってはいけません。「イエス・ウィ・キャン」と主張しなければならないのです。
では、私たちが取らなければならない道筋を説明しましょう。まず、米国は、核兵器のない世界に向けて、具体的な措置を取ります。冷戦時代の考え方に終止符を打つために、米国は国家安全保障戦略における核兵器の役割を縮小し、他国にも同様の措置を取ることを求めます。もちろん、核兵器が存在する限り、わが国は、いかなる敵であろうとこれを抑止し、チェコ共和国を含む同盟諸国に対する防衛を保証するために、安全かつ効果的な兵器を維持します。しかし、私たちは、兵器の保有量を削減する努力を始めます。
米国は今年、弾頭と備蓄量を削減するために、ロシアと、新たな戦略兵器削減条約の交渉を行います。メドベージェフ大統領と私は、ロンドンでこの作業を開始しました。そして今年末までには、法的拘束力を持ち、十分に大胆な新しい合意を目指す予定です。これは、さらなる削減に向けた準備段階となるものであり、この努力にすべての核兵器保有国を参加させることを目指します。
全世界的な核実験の禁止を実現するために、私の政権は、米国による包括的核実験禁止条約の批准を直ちに、積極的に推し進めます。この問題については50年以上にわたって交渉が続けられていますが、今こそ、核兵器実験を禁止する時です。
そして、核爆弾の製造に必要な物質の供給を断つために、米国は、国家による核兵器製造に使用することを目的とする核分裂性物質の生産を、検証可能な形で禁止する新たな条約の締結に努めます。核兵器の拡散阻止に本気で取り組むのであれば、核兵器の製造に使われる兵器級物質の製造を停止すべきです。これが初めの1歩です。
第2に、私たちは共に、協力の基盤として、核不拡散条約を強化します。
条約の基本的な内容は、理にかなったものです。核保有国は軍縮へ向かって進み、核兵器を保有しない国は今後も核兵器を入手せず、すべての国々に対し原子力エネルギーの平和利用を可能にする、という内容です。不拡散条約を強化するために私たちが受け入れるべき原則がいくつかあります。国際的な査察を強化するための資源と権限の増強が必要です。規則に違反していることが発覚した国や、理由なしに条約を脱退しようとする国が、即座に実質的な報いを受けるような制度が必要です。
そして、私たちは、各国が、拡散の危険を高めることなく、平和的に原子力エネルギーを利用できるようにするために、国際燃料バンクなど、原子力の民生利用での協力に関する新たな枠組みを構築すべきです。これは、核兵器を放棄するすべての国、特に原子力の平和利用計画に着手しつつある開発途上国の権利でなければなりません。規則に従う国家の権利を拒否することを前提とする手法は、決して成功することはありません。私たちは、気候変動と戦い、すべての人々にとって平和の機会を推進するために、原子力エネルギーを利用しなければなりません。
しかし、私たちは前進するに当たり、幻想を抱いてはいません。規則を破る国も出てくると思われます。いかなる国であろうとも規則を破れば、必ずその報いを受けるような制度を整備する必要があるのは、そのためです。
今朝、私たちは、こうした脅威に対処するための新しい、より厳格な手段が必要であることを、改めて実感させられました。北朝鮮が再び規則を破り、長距離ミサイル用にも使うことが可能なロケットの発射実験を行ったのです。この挑発行為は、行動を取ることの必要性を浮き彫りにしています。それは、本日午後の国連安全保障理事会での行動だけでなく、核兵器の拡散を阻止するという決意の下に取る行動です。
規則は、拘束力を持たなければなりません。違反は、罰せられなければなりません。言葉は、実際に意味を持たなければなりません。世界は結束して、核兵器の拡散を防がなければなりません。今こそ、国際社会が断固とした対応を取る時です。北朝鮮は、脅威と違法な兵器によって安全保障と尊敬を勝ち取る道を切り開くことは決してできない、ということを理解しなければなりません。すべての国家が、より強力な国際体制を築くために協力しなければなりません。私たちが協力して北朝鮮に圧力をかけ、方針を変更するよう迫らなければならないのはそのためです。
イランは、まだ核兵器を製造していません。私の政権は、イランとの相互の利益と尊敬に基づき、イランとの関与を求めていきます。私たちは対話を信じています。しかし、対話の中で明確な選択肢を提示していきます。私たちは、イランが政治的にも経済的にも、国際社会の中で正当な位置を占めることを望んでいます。私たちは、厳しい査察の下で原子力エネルギーを平和的に利用するイランの権利を支持します。これこそ、イラン・イスラム共和国が取ることができる道です。一方で、イラン政府は、さらなる孤立と、国際的な圧力と、すべての国々にとって危険を高めることになる、中東地域における核軍拡競争の道を選ぶこともできます。
はっきり言いましょう。イランの核開発・弾道ミサイル開発活動は、米国だけでなく、イランの近隣諸国および米国の同盟国にも真の脅威を及ぼします。チェコ共和国とポーランドは勇敢にも、こうしたミサイルに対する防衛システムの配備に同意してくれました。イランからの脅威が続く限り、私たちは、費用対効果の高い、実績のあるミサイル防衛システムの導入を続けていきます。イランの脅威がなくなれば、私たちの安全保障の基盤が強化され、ヨーロッパにミサイル防衛システムを配備する動機がなくなります。
最後に、私たちは、テロリストが決して核兵器を入手することがないようにしなければなりません。これは、世界の安全保障に対する、最も差し迫った、かつ最大の脅威です。1人のテロリストが核兵器を持てば、膨大な破壊力を発揮することができます。アルカイダは、核爆弾の入手を目指す、そしてためらうことなくそれを使う、と言っています。そして、管理が不十分な核物質が世界各地に存在することが分かっています。国民を守るためには、直ちに、目的意識を持って行動しなければなりません。
本日、私は、世界中の脆弱(ぜいじゃく)な核物質を4年以内に保護管理することを目的とした、新たな国際活動を発表します。私たちは、新しい基準を設定し、ロシアとの協力を拡大し、こうした機微物質を管理するための新たなパートナーシップの構築に努めます。
また私たちは、闇市場を解体し、物質の輸送を発見してこれを阻止し、金融手段を使ってこの危険な取引を停止させる活動を拡充しなければなりません。この脅威は長期的なものとなるため、私たちは、「拡散に対する安全保障構想」や「核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアチブ」などの活動を、持続的な国際制度に転換するために協力すべきです。そして、手始めとして、米国の主催による核安全保障に関する国際サミットを今後1年以内に開催します。
私たちが、このように幅広い課題について行動を起こせるのかと疑問を持つ人もいると思います。国家間には避けられない立場の相違があるため、真の国際協力が可能であるかどうか疑問を持つ人もいます。そして、核兵器のない世界の話を聞き、実現不可能と思える目標を設定することに価値があるのかという疑問を持つ人もいます。
しかし間違ってはいけません。そうした考え方の行き着く先は分かっています。国家や国民が、相違点によって特徴付けられることを良しとするとき、相互の溝は深まります。私たちが平和の追求を怠るときには、永久に平和をつかむことができません。希望ではなく恐怖を選んだときにどうなるかは分かっています。協力を求める声を非難し、あるいは無視することは、容易であると同時に、卑劣なことでもあります。戦争はそのようにして始まります。人間の進歩はそこで止まってしまうのです。
この世界には暴力と不正があり、私たちはそれに立ち向かわなければなりません。その際に、私たちは、分裂するのではなく、自由な国家、自由な国民として結束しなければなりません。武器を捨てることを呼びかけるより、武器を取ることを呼びかける方が、人々の感情をかき立てるものです。だからこそ、私たちは団結して、平和と進歩を求める声を上げなければなりません。
それは、今もプラハの街にこだまする声です。1968年の亡霊です。ビロード革命のときに聞こえた歓喜に満ちた声です。一度も発砲することなく、核を保有する帝国の打倒に貢献したチェコの人々の声です。
人間の運命は、私たちが自ら切り開くものです。ここプラハで、より良い未来を求めることによって、私たちの過去に敬意を示そうではありませんか。私たちの間にある溝に橋を架け、希望を基にさらに前進し、これまでより大きな繁栄と平和をこの世界にもたらす責任を引き受けようではありませんか。共に手を携えれば、それを実現することができます。
ありがとうございました。プラハの皆さん、ありがとうございました。
(米大使館サイトの仮訳)
オバマ大統領の4・6プラハ演説(英文) ― 2009/04/05

April 5, 2009
REMARKS BY
PRESIDENT BARACK OBAMA
Hradcany Square
Prague, Czech Republic
Thank you so much. Thank you for this wonderful welcome. Thank you to the people of Prague. Thank you to the people of the Czech Republic. (Applause.) Today, I'm proud to stand here with you in the middle of this great city, in the center of Europe. (Applause.) And, to paraphrase one of my predecessors, I am also proud to be the man who brought Michelle Obama to Prague. (Applause.)
To Mr. President, Mr. Prime Minister, to all the dignitaries who are here, thank you for your extraordinary hospitality. And to the people of the Czech Republic, thank you for your friendship to the United States. (Applause.)
I've learned over many years to appreciate the good company and the good humor of the Czech people in my hometown of Chicago. (Applause.) Behind me is a statue of a hero of the Czech people ?- Tomas Masaryk. (Applause.) In 1918, after America had pledged its support for Czech independence, Masaryk spoke to a crowd in Chicago that was estimated to be over 100,000. I don't think I can match his record -- (laughter) -- but I am honored to follow his footsteps from Chicago to Prague. (Applause.)
For over a thousand years, Prague has set itself apart from any other city in any other place. You've known war and peace. You've seen empires rise and fall. You've led revolutions in the arts and science, in politics and in poetry. Through it all, the people of Prague have insisted on pursuing their own path, and defining their own destiny. And this city ?- this Golden City which is both ancient and youthful -? stands as a living monument to your unconquerable spirit.
When I was born, the world was divided, and our nations were faced with very different circumstances. Few people would have predicted that someone like me would one day become the President of the United States. (Applause.) Few people would have predicted that an American President would one day be permitted to speak to an audience like this in Prague. (Applause.) Few would have imagined that the Czech Republic would become a free nation, a member of NATO, a leader of a united Europe. Those ideas would have been dismissed as dreams.
We are here today because enough people ignored the voices who told them that the world could not change.
We are here today because of the courage of those who stood up and took risks to say that freedom is a right for all people, no matter what side of a wall they live on, and no matter what they look like.
We are here today because of the Prague Spring ?- because the simple and principled pursuit of liberty and opportunity shamed those who relied on the power of tanks and arms to put down the will of a people.
We are here today because 20 years ago, the people of this city took to the streets to claim the promise of a new day, and the fundamental human rights that had been denied them for far too long. Sametova Revoluce -- (applause) -- the Velvet Revolution taught us many things. It showed us that peaceful protest could shake the foundations of an empire, and expose the emptiness of an ideology. It showed us that small countries can play a pivotal role in world events, and that young people can lead the way in overcoming old conflicts. (Applause.) And it proved that moral leadership is more powerful than any weapon.
That's why I'm speaking to you in the center of a Europe that is peaceful, united and free -? because ordinary people believed that divisions could be bridged, even when their leaders did not. They believed that walls could come down; that peace could prevail.
We are here today because Americans and Czechs believed against all odds that today could be possible. (Applause.)
Now, we share this common history. But now this generation -? our generation -? cannot stand still. We, too, have a choice to make. As the world has become less divided, it has become more interconnected. And we've seen events move faster than our ability to control them -? a global economy in crisis, a changing climate, the persistent dangers of old conflicts, new threats and the spread of catastrophic weapons.
None of these challenges can be solved quickly or easily. But all of them demand that we listen to one another and work together; that we focus on our common interests, not on occasional differences; and that we reaffirm our shared values, which are stronger than any force that could drive us apart. That is the work that we must carry on. That is the work that I have come to Europe to begin. (Applause.)
To renew our prosperity, we need action coordinated across borders. That means investments to create new jobs. That means resisting the walls of protectionism that stand in the way of growth. That means a change in our financial system, with new rules to prevent abuse and future crisis. (Applause.)
And we have an obligation to our common prosperity and our common humanity to extend a hand to those emerging markets and impoverished people who are suffering the most, even though they may have had very little to do with financial crises, which is why we set aside over a trillion dollars for the International Monetary Fund earlier this week, to make sure that everybody -- everybody -- receives some assistance. (Applause.)
Now, to protect our planet, now is the time to change the way that we use energy. (Applause.) Together, we must confront climate change by ending the world's dependence on fossil fuels, by tapping the power of new sources of energy like the wind and sun, and calling upon all nations to do their part. And I pledge to you that in this global effort, the United States is now ready to lead. (Applause.)
To provide for our common security, we must strengthen our alliance. NATO was founded 60 years ago, after Communism took over Czechoslovakia. That was when the free world learned too late that it could not afford division. So we came together to forge the strongest alliance that the world has ever known. And we should -- stood shoulder to shoulder -- year after year, decade after decade ?- until an Iron Curtain was lifted, and freedom spread like flowing water.
This marks the 10th year of NATO membership for the Czech Republic. And I know that many times in the 20th century, decisions were made without you at the table. Great powers let you down, or determined your destiny without your voice being heard. I am here to say that the United States will never turn its back on the people of this nation. (Applause.) We are bound by shared values, shared history -- (applause.) We are bound by shared values and shared history and the enduring promise of our alliance. NATO's Article V states it clearly: An attack on one is an attack on all. That is a promise for our time, and for all time.
The people of the Czech Republic kept that promise after America was attacked; thousands were killed on our soil, and NATO responded. NATO's mission in Afghanistan is fundamental to the safety of people on both sides of the Atlantic. We are targeting the same al Qaeda terrorists who have struck from New York to London, and helping the Afghan people take responsibility for their future. We are demonstrating that free nations can make common cause on behalf of our common security. And I want you to know that we honor the sacrifices of the Czech people in this endeavor, and mourn the loss of those you've lost.
But no alliance can afford to stand still. We must work together as NATO members so that we have contingency plans in place to deal with new threats, wherever they may come from. We must strengthen our cooperation with one another, and with other nations and institutions around the world, to confront dangers that recognize no borders. And we must pursue constructive relations with Russia on issues of common concern.
Now, one of those issues that I'll focus on today is fundamental to the security of our nations and to the peace of the world -? that's the future of nuclear weapons in the 21st century.
The existence of thousands of nuclear weapons is the most dangerous legacy of the Cold War. No nuclear war was fought between the United States and the Soviet Union, but generations lived with the knowledge that their world could be erased in a single flash of light. Cities like Prague that existed for centuries, that embodied the beauty and the talent of so much of humanity, would have ceased to exist.
Today, the Cold War has disappeared but thousands of those weapons have not. In a strange turn of history, the threat of global nuclear war has gone down, but the risk of a nuclear attack has gone up. More nations have acquired these weapons. Testing has continued. Black market trade in nuclear secrets and nuclear materials abound. The technology to build a bomb has spread. Terrorists are determined to buy, build or steal one. Our efforts to contain these dangers are centered on a global non-proliferation regime, but as more people and nations break the rules, we could reach the point where the center cannot hold.
Now, understand, this matters to people everywhere. One nuclear weapon exploded in one city -? be it New York or Moscow, Islamabad or Mumbai, Tokyo or Tel Aviv, Paris or Prague ?- could kill hundreds of thousands of people. And no matter where it happens, there is no end to what the consequences might be -? for our global safety, our security, our society, our economy, to our ultimate survival.
Some argue that the spread of these weapons cannot be stopped, cannot be checked -? that we are destined to live in a world where more nations and more people possess the ultimate tools of destruction. Such fatalism is a deadly adversary, for if we believe that the spread of nuclear weapons is inevitable, then in some way we are admitting to ourselves that the use of nuclear weapons is inevitable..
Just as we stood for freedom in the 20th century, we must stand together for the right of people everywhere to live free from fear in the 21st century. (Applause.)
And as nuclear power ?- as a nuclear power, as the only nuclear power to have used a nuclear weapon, the United States has a moral responsibility to act. We cannot succeed in this endeavor alone, but we can lead it, we can start it
So today, I state clearly and with conviction America's commitment to seek the peace and security of a world without nuclear weapons. (Applause.) I'm not naive. This goal will not be reached quickly ?- perhaps not in my lifetime. It will take patience and persistence. But now we, too, must ignore the voices who tell us that the world cannot change.
We have to insist, "Yes, we can."(Applause.)
Now, let me describe to you the trajectory we need to be on. First, the United States will take concrete steps towards a world without nuclear weapons. To put an end to Cold War thinking, we will reduce the role of nuclear weapons in our national security strategy, and urge others to do the same. Make no mistake: As long as these weapons exist, the United States will maintain a safe, secure and effective arsenal to deter any adversary, and guarantee that defense to our allies ?- including the Czech Republic. But we will begin the work of reducing our arsenal.
To reduce our warheads and stockpiles, we will negotiate a new Strategic Arms Reduction Treaty with the Russians this year. (Applause.) President Medvedev and I began this process in London, and will seek a new agreement by the end of this year that is legally binding and sufficiently bold. And this will set the stage for further cuts, and we will seek to include all nuclear weapons states in this endeavor.
To achieve a global ban on nuclear testing, my administration will immediately and aggressively pursue U.S. ratification of the Comprehensive Test Ban Treaty. (Applause.) After more than five decades of talks, it is time for the testing of nuclear weapons to finally be banned.
And to cut off the building blocks needed for a bomb, the United States will seek a new treaty that verifiably ends the production of fissile materials intended for use in state nuclear weapons. If we are serious about stopping the spread of these weapons, then we should put an end to the dedicated production of weapons-grade materials that create them. That's the first step.
Second, together we will strengthen the Nuclear Non-Proliferation Treaty as a basis for cooperation.
The basic bargain is sound: Countries with nuclear weapons will move towards disarmament, countries without nuclear weapons will not acquire them, and all countries can access peaceful nuclear energy. To strengthen the treaty, we should embrace several principles. We need more resources and authority to strengthen international inspections. We need real and immediate consequences for countries caught breaking the rules or trying to leave the treaty without cause.
And we should build a new framework for civil nuclear cooperation, including an international fuel bank, so that countries can access peaceful power without increasing the risks of proliferation. That must be the right of every nation that renounces nuclear weapons, especially developing countries embarking on peaceful programs. And no approach will succeed if it's based on the denial of rights to nations that play by the rules. We must harness the power of nuclear energy on behalf of our efforts to combat climate change, and to advance peace opportunity for all people.
But we go forward with no illusions. Some countries will break the rules. That's why we need a structure in place that ensures when any nation does, they will face consequences.
Just this morning, we were reminded again of why we need a new and more rigorous approach to address this threat. North Korea broke the rules once again by testing a rocket that could be used for long range missiles. This provocation underscores the need for action ?- not just this afternoon at the U.N. Security Council, but in our determination to prevent the spread of these weapons.
Rules must be binding. Violations must be punished. Words must mean something. The world must stand together to prevent the spread of these weapons. Now is the time for a strong international response -- (applause) -- now is the time for a strong international response, and North Korea must know that the path to security and respect will never come through threats and illegal weapons. All nations must come together to build a stronger, global regime. And that's why we must stand shoulder to shoulder to pressure the North Koreans to change course.
Iran has yet to build a nuclear weapon. My administration will seek engagement with Iran based on mutual interests and mutual respect. We believe in dialogue. (Applause.) But in that dialogue we will present a clear choice. We want Iran to take its rightful place in the community of nations, politically and economically. We will support Iran's right to peaceful nuclear energy with rigorous inspections. That's a path that the Islamic Republic can take. Or the government can choose increased isolation, international pressure, and a potential nuclear arms race in the region that will increase insecurity for all.
So let me be clear: Iran's nuclear and ballistic missile activity poses a real threat, not just to the United States, but to Iran's neighbors and our allies. The Czech Republic and Poland have been courageous in agreeing to host a defense against these missiles. As long as the threat from Iran persists, we will go forward with a missile defense system that is cost-effective and proven. (Applause.) If the Iranian threat is eliminated, we will have a stronger basis for security, and the driving force for missile defense construction in Europe will be removed. (Applause.)
So, finally, we must ensure that terrorists never acquire a nuclear weapon. This is the most immediate and extreme threat to global security. One terrorist with one nuclear weapon could unleash massive destruction. Al Qaeda has said it seeks a bomb and that it would have no problem with using it. And we know that there is unsecured nuclear material across the globe. To protect our people, we must act with a sense of purpose without delay.
So today I am announcing a new international effort to secure all vulnerable nuclear material around the world within four years. We will set new standards, expand our cooperation with Russia, pursue new partnerships to lock down these sensitive materials.
We must also build on our efforts to break up black markets, detect and intercept materials in transit, and use financial tools to disrupt this dangerous trade. Because this threat will be lasting, we should come together to turn efforts such as the Proliferation Security Initiative and the Global Initiative to Combat Nuclear Terrorism into durable international institutions. And we should start by having a Global Summit on Nuclear Security that the United States will host within the next year. (Applause.)
Now, I know that there are some who will question whether we can act on such a broad agenda. There are those who doubt whether true international cooperation is possible, given inevitable differences among nations. And there are those who hear talk of a world without nuclear weapons and doubt whether it's worth setting a goal that seems impossible to achieve.
But make no mistake: We know where that road leads. When nations and peoples allow themselves to be defined by their differences, the gulf between them widens. When we fail to pursue peace, then it stays forever beyond our grasp. We know the path when we choose fear over hope. To denounce or shrug off a call for cooperation is an easy but also a cowardly thing to do. That's how wars begin. That's where human progress ends.
There is violence and injustice in our world that must be confronted. We must confront it not by splitting apart but by standing together as free nations, as free people. (Applause.) I know that a call to arms can stir the souls of men and women more than a call to lay them down. But that is why the voices for peace and progress must be raised together. (Applause.)
Those are the voices that still echo through the streets of Prague. Those are the ghosts of 1968. Those were the joyful sounds of the Velvet Revolution. Those were the Czechs who helped bring down a nuclear-armed empire without firing a shot.
Human destiny will be what we make of it. And here in Prague, let us honor our past by reaching for a better future. Let us bridge our divisions, build upon our hopes, accept our responsibility to leave this world more prosperous and more peaceful than we found it. (Applause.)
Together we can do it.
Thank you very much. Thank you, Prague. (Applause.)
REMARKS BY
PRESIDENT BARACK OBAMA
Hradcany Square
Prague, Czech Republic
Thank you so much. Thank you for this wonderful welcome. Thank you to the people of Prague. Thank you to the people of the Czech Republic. (Applause.) Today, I'm proud to stand here with you in the middle of this great city, in the center of Europe. (Applause.) And, to paraphrase one of my predecessors, I am also proud to be the man who brought Michelle Obama to Prague. (Applause.)
To Mr. President, Mr. Prime Minister, to all the dignitaries who are here, thank you for your extraordinary hospitality. And to the people of the Czech Republic, thank you for your friendship to the United States. (Applause.)
I've learned over many years to appreciate the good company and the good humor of the Czech people in my hometown of Chicago. (Applause.) Behind me is a statue of a hero of the Czech people ?- Tomas Masaryk. (Applause.) In 1918, after America had pledged its support for Czech independence, Masaryk spoke to a crowd in Chicago that was estimated to be over 100,000. I don't think I can match his record -- (laughter) -- but I am honored to follow his footsteps from Chicago to Prague. (Applause.)
For over a thousand years, Prague has set itself apart from any other city in any other place. You've known war and peace. You've seen empires rise and fall. You've led revolutions in the arts and science, in politics and in poetry. Through it all, the people of Prague have insisted on pursuing their own path, and defining their own destiny. And this city ?- this Golden City which is both ancient and youthful -? stands as a living monument to your unconquerable spirit.
When I was born, the world was divided, and our nations were faced with very different circumstances. Few people would have predicted that someone like me would one day become the President of the United States. (Applause.) Few people would have predicted that an American President would one day be permitted to speak to an audience like this in Prague. (Applause.) Few would have imagined that the Czech Republic would become a free nation, a member of NATO, a leader of a united Europe. Those ideas would have been dismissed as dreams.
We are here today because enough people ignored the voices who told them that the world could not change.
We are here today because of the courage of those who stood up and took risks to say that freedom is a right for all people, no matter what side of a wall they live on, and no matter what they look like.
We are here today because of the Prague Spring ?- because the simple and principled pursuit of liberty and opportunity shamed those who relied on the power of tanks and arms to put down the will of a people.
We are here today because 20 years ago, the people of this city took to the streets to claim the promise of a new day, and the fundamental human rights that had been denied them for far too long. Sametova Revoluce -- (applause) -- the Velvet Revolution taught us many things. It showed us that peaceful protest could shake the foundations of an empire, and expose the emptiness of an ideology. It showed us that small countries can play a pivotal role in world events, and that young people can lead the way in overcoming old conflicts. (Applause.) And it proved that moral leadership is more powerful than any weapon.
That's why I'm speaking to you in the center of a Europe that is peaceful, united and free -? because ordinary people believed that divisions could be bridged, even when their leaders did not. They believed that walls could come down; that peace could prevail.
We are here today because Americans and Czechs believed against all odds that today could be possible. (Applause.)
Now, we share this common history. But now this generation -? our generation -? cannot stand still. We, too, have a choice to make. As the world has become less divided, it has become more interconnected. And we've seen events move faster than our ability to control them -? a global economy in crisis, a changing climate, the persistent dangers of old conflicts, new threats and the spread of catastrophic weapons.
None of these challenges can be solved quickly or easily. But all of them demand that we listen to one another and work together; that we focus on our common interests, not on occasional differences; and that we reaffirm our shared values, which are stronger than any force that could drive us apart. That is the work that we must carry on. That is the work that I have come to Europe to begin. (Applause.)
To renew our prosperity, we need action coordinated across borders. That means investments to create new jobs. That means resisting the walls of protectionism that stand in the way of growth. That means a change in our financial system, with new rules to prevent abuse and future crisis. (Applause.)
And we have an obligation to our common prosperity and our common humanity to extend a hand to those emerging markets and impoverished people who are suffering the most, even though they may have had very little to do with financial crises, which is why we set aside over a trillion dollars for the International Monetary Fund earlier this week, to make sure that everybody -- everybody -- receives some assistance. (Applause.)
Now, to protect our planet, now is the time to change the way that we use energy. (Applause.) Together, we must confront climate change by ending the world's dependence on fossil fuels, by tapping the power of new sources of energy like the wind and sun, and calling upon all nations to do their part. And I pledge to you that in this global effort, the United States is now ready to lead. (Applause.)
To provide for our common security, we must strengthen our alliance. NATO was founded 60 years ago, after Communism took over Czechoslovakia. That was when the free world learned too late that it could not afford division. So we came together to forge the strongest alliance that the world has ever known. And we should -- stood shoulder to shoulder -- year after year, decade after decade ?- until an Iron Curtain was lifted, and freedom spread like flowing water.
This marks the 10th year of NATO membership for the Czech Republic. And I know that many times in the 20th century, decisions were made without you at the table. Great powers let you down, or determined your destiny without your voice being heard. I am here to say that the United States will never turn its back on the people of this nation. (Applause.) We are bound by shared values, shared history -- (applause.) We are bound by shared values and shared history and the enduring promise of our alliance. NATO's Article V states it clearly: An attack on one is an attack on all. That is a promise for our time, and for all time.
The people of the Czech Republic kept that promise after America was attacked; thousands were killed on our soil, and NATO responded. NATO's mission in Afghanistan is fundamental to the safety of people on both sides of the Atlantic. We are targeting the same al Qaeda terrorists who have struck from New York to London, and helping the Afghan people take responsibility for their future. We are demonstrating that free nations can make common cause on behalf of our common security. And I want you to know that we honor the sacrifices of the Czech people in this endeavor, and mourn the loss of those you've lost.
But no alliance can afford to stand still. We must work together as NATO members so that we have contingency plans in place to deal with new threats, wherever they may come from. We must strengthen our cooperation with one another, and with other nations and institutions around the world, to confront dangers that recognize no borders. And we must pursue constructive relations with Russia on issues of common concern.
Now, one of those issues that I'll focus on today is fundamental to the security of our nations and to the peace of the world -? that's the future of nuclear weapons in the 21st century.
The existence of thousands of nuclear weapons is the most dangerous legacy of the Cold War. No nuclear war was fought between the United States and the Soviet Union, but generations lived with the knowledge that their world could be erased in a single flash of light. Cities like Prague that existed for centuries, that embodied the beauty and the talent of so much of humanity, would have ceased to exist.
Today, the Cold War has disappeared but thousands of those weapons have not. In a strange turn of history, the threat of global nuclear war has gone down, but the risk of a nuclear attack has gone up. More nations have acquired these weapons. Testing has continued. Black market trade in nuclear secrets and nuclear materials abound. The technology to build a bomb has spread. Terrorists are determined to buy, build or steal one. Our efforts to contain these dangers are centered on a global non-proliferation regime, but as more people and nations break the rules, we could reach the point where the center cannot hold.
Now, understand, this matters to people everywhere. One nuclear weapon exploded in one city -? be it New York or Moscow, Islamabad or Mumbai, Tokyo or Tel Aviv, Paris or Prague ?- could kill hundreds of thousands of people. And no matter where it happens, there is no end to what the consequences might be -? for our global safety, our security, our society, our economy, to our ultimate survival.
Some argue that the spread of these weapons cannot be stopped, cannot be checked -? that we are destined to live in a world where more nations and more people possess the ultimate tools of destruction. Such fatalism is a deadly adversary, for if we believe that the spread of nuclear weapons is inevitable, then in some way we are admitting to ourselves that the use of nuclear weapons is inevitable..
Just as we stood for freedom in the 20th century, we must stand together for the right of people everywhere to live free from fear in the 21st century. (Applause.)
And as nuclear power ?- as a nuclear power, as the only nuclear power to have used a nuclear weapon, the United States has a moral responsibility to act. We cannot succeed in this endeavor alone, but we can lead it, we can start it
So today, I state clearly and with conviction America's commitment to seek the peace and security of a world without nuclear weapons. (Applause.) I'm not naive. This goal will not be reached quickly ?- perhaps not in my lifetime. It will take patience and persistence. But now we, too, must ignore the voices who tell us that the world cannot change.
We have to insist, "Yes, we can."(Applause.)
Now, let me describe to you the trajectory we need to be on. First, the United States will take concrete steps towards a world without nuclear weapons. To put an end to Cold War thinking, we will reduce the role of nuclear weapons in our national security strategy, and urge others to do the same. Make no mistake: As long as these weapons exist, the United States will maintain a safe, secure and effective arsenal to deter any adversary, and guarantee that defense to our allies ?- including the Czech Republic. But we will begin the work of reducing our arsenal.
To reduce our warheads and stockpiles, we will negotiate a new Strategic Arms Reduction Treaty with the Russians this year. (Applause.) President Medvedev and I began this process in London, and will seek a new agreement by the end of this year that is legally binding and sufficiently bold. And this will set the stage for further cuts, and we will seek to include all nuclear weapons states in this endeavor.
To achieve a global ban on nuclear testing, my administration will immediately and aggressively pursue U.S. ratification of the Comprehensive Test Ban Treaty. (Applause.) After more than five decades of talks, it is time for the testing of nuclear weapons to finally be banned.
And to cut off the building blocks needed for a bomb, the United States will seek a new treaty that verifiably ends the production of fissile materials intended for use in state nuclear weapons. If we are serious about stopping the spread of these weapons, then we should put an end to the dedicated production of weapons-grade materials that create them. That's the first step.
Second, together we will strengthen the Nuclear Non-Proliferation Treaty as a basis for cooperation.
The basic bargain is sound: Countries with nuclear weapons will move towards disarmament, countries without nuclear weapons will not acquire them, and all countries can access peaceful nuclear energy. To strengthen the treaty, we should embrace several principles. We need more resources and authority to strengthen international inspections. We need real and immediate consequences for countries caught breaking the rules or trying to leave the treaty without cause.
And we should build a new framework for civil nuclear cooperation, including an international fuel bank, so that countries can access peaceful power without increasing the risks of proliferation. That must be the right of every nation that renounces nuclear weapons, especially developing countries embarking on peaceful programs. And no approach will succeed if it's based on the denial of rights to nations that play by the rules. We must harness the power of nuclear energy on behalf of our efforts to combat climate change, and to advance peace opportunity for all people.
But we go forward with no illusions. Some countries will break the rules. That's why we need a structure in place that ensures when any nation does, they will face consequences.
Just this morning, we were reminded again of why we need a new and more rigorous approach to address this threat. North Korea broke the rules once again by testing a rocket that could be used for long range missiles. This provocation underscores the need for action ?- not just this afternoon at the U.N. Security Council, but in our determination to prevent the spread of these weapons.
Rules must be binding. Violations must be punished. Words must mean something. The world must stand together to prevent the spread of these weapons. Now is the time for a strong international response -- (applause) -- now is the time for a strong international response, and North Korea must know that the path to security and respect will never come through threats and illegal weapons. All nations must come together to build a stronger, global regime. And that's why we must stand shoulder to shoulder to pressure the North Koreans to change course.
Iran has yet to build a nuclear weapon. My administration will seek engagement with Iran based on mutual interests and mutual respect. We believe in dialogue. (Applause.) But in that dialogue we will present a clear choice. We want Iran to take its rightful place in the community of nations, politically and economically. We will support Iran's right to peaceful nuclear energy with rigorous inspections. That's a path that the Islamic Republic can take. Or the government can choose increased isolation, international pressure, and a potential nuclear arms race in the region that will increase insecurity for all.
So let me be clear: Iran's nuclear and ballistic missile activity poses a real threat, not just to the United States, but to Iran's neighbors and our allies. The Czech Republic and Poland have been courageous in agreeing to host a defense against these missiles. As long as the threat from Iran persists, we will go forward with a missile defense system that is cost-effective and proven. (Applause.) If the Iranian threat is eliminated, we will have a stronger basis for security, and the driving force for missile defense construction in Europe will be removed. (Applause.)
So, finally, we must ensure that terrorists never acquire a nuclear weapon. This is the most immediate and extreme threat to global security. One terrorist with one nuclear weapon could unleash massive destruction. Al Qaeda has said it seeks a bomb and that it would have no problem with using it. And we know that there is unsecured nuclear material across the globe. To protect our people, we must act with a sense of purpose without delay.
So today I am announcing a new international effort to secure all vulnerable nuclear material around the world within four years. We will set new standards, expand our cooperation with Russia, pursue new partnerships to lock down these sensitive materials.
We must also build on our efforts to break up black markets, detect and intercept materials in transit, and use financial tools to disrupt this dangerous trade. Because this threat will be lasting, we should come together to turn efforts such as the Proliferation Security Initiative and the Global Initiative to Combat Nuclear Terrorism into durable international institutions. And we should start by having a Global Summit on Nuclear Security that the United States will host within the next year. (Applause.)
Now, I know that there are some who will question whether we can act on such a broad agenda. There are those who doubt whether true international cooperation is possible, given inevitable differences among nations. And there are those who hear talk of a world without nuclear weapons and doubt whether it's worth setting a goal that seems impossible to achieve.
But make no mistake: We know where that road leads. When nations and peoples allow themselves to be defined by their differences, the gulf between them widens. When we fail to pursue peace, then it stays forever beyond our grasp. We know the path when we choose fear over hope. To denounce or shrug off a call for cooperation is an easy but also a cowardly thing to do. That's how wars begin. That's where human progress ends.
There is violence and injustice in our world that must be confronted. We must confront it not by splitting apart but by standing together as free nations, as free people. (Applause.) I know that a call to arms can stir the souls of men and women more than a call to lay them down. But that is why the voices for peace and progress must be raised together. (Applause.)
Those are the voices that still echo through the streets of Prague. Those are the ghosts of 1968. Those were the joyful sounds of the Velvet Revolution. Those were the Czechs who helped bring down a nuclear-armed empire without firing a shot.
Human destiny will be what we make of it. And here in Prague, let us honor our past by reaching for a better future. Let us bridge our divisions, build upon our hopes, accept our responsibility to leave this world more prosperous and more peaceful than we found it. (Applause.)
Together we can do it.
Thank you very much. Thank you, Prague. (Applause.)
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