まだらめ先生、申し訳ありません2010/03/25

まだらめ先生
 3月25日の常幹で国会同意人事案の取扱いが決着した。今日の衆本会議で採決予定の同意人事への扱いがなかなか決まらずにいたもの。
 正直いって、同意人事の対応が大きな話題になることあまりない。おおよその枠組みがあって順送りの人事が慣例化しているので、野党でもたいていは賛成する。そもそも専門的な知識が必要な分野の委員を政治家や政党が評価すること自体が難しいのだ。
 反対するのは露骨な天下りだとか、委員会の機能自体に批判があるといった形式的な判断がほとんど。まれに問題になるのは、事後的に経歴詐称が明らかになったような瑕疵が明確な場合や、政局的なターゲットになった場合などくらい。
 今回は、原子力安全委員委員予定の班目(まだらめ)春樹氏と 日銀政策委員会審議委員予定の森本宜久氏が対象。班目氏は東大大学院工学系研究科原子力専攻教授で原子力関係の有力な研究者、森本氏は電気事業連合会副会長・東電取締役で原子力産業の人。 
 別にお2人の人物をどうかと言っているわけではないので、こうして大きなニュースになってしまったのはむしろ申し訳ない気もする。森本氏は直近まで「温暖化対策に原子力」との論陣をはられていた記憶が鮮明で、班目氏は珍しい名前で「まだらめはでたらめ」といって原子力批判派から批判されていた経緯が思い起こされちゃったわけです。
 銀行券を発行し通貨・金融の調節を行なうことが目的の日銀政策委員会審議委員に、巨大独占企業であり公益事業の電力業界が委員を出すことは必ずしも適切とは思わないけど、日銀が原子力に直接関係することはないので、関係ないといば関係ないし、まあ決定的に反対することではないかもしれない。ということで斑目さんが焦点に。
 報道では、原発推進だから反対という書き方のものもあったが、そんなことはない。そんなこといったら、もう一人の代谷先生にも反対しなくちゃならないし、もっと大勢反対しなくちゃならなくなる。班目氏は中越沖地震で柏崎原発が破損した後に、原子力安全・保安院が設けた「中越沖地震における原子力施設に関する調査・対策委員会」委員長になり、早々と安全宣言をしたうえ1~2年で運転再開ができるとの見通しを繰り返しコメントするなど、安全性軽視の姿勢を厳しく批判された。浜岡の裁判では中電側の証人として証言して、中電の広報宣伝マンのようだと批判された。ちなみに浜岡訴訟の原告側代理人が海渡弁護士。
 原子力安全委員会は、「原子力の安全確保を図るため」に「安全規制の基本的政策審議や安全審査指針・基準の策定」し、「行政庁による規制の状況を調査し、監視・監督」することが目的であるから、原子力の安全を軽視しているとされ、推進側にお墨付きを与えているのではないのかと疑われている人物を、据えることは確かに好ましくない。しかも、委員長就任が予定されているとのことだし。
 3月12日に人事案が提示されてから、福島党首も結構頑張ったのだが、最終的に23日の閣議では了承。これを受けて、25日の常幹でも賛成やむなしを決めた。班目さんの人事には賛成できないが、かといって連立を壊してまで反対する事案とまではいえない。官房長官から、班目氏に対して安全に十分配慮するよう注意してもらうこと、政府が今後の同意人事について与党内の合意がとれるよう配慮することを条件に、同意することにしたのである。
 僕自身はまだらめ先生とは面識もないし恨みもない。発言を見ると、おもしろいオッサンだなとも思うけど、律儀に安全配慮を徹底してくれると思えないのも事実だな。いずれにしてもまだらめ先生個人をターゲットにしたような感じになったのは申し訳ないです。本当は、いきなり事前に何の相談もなく提案されてきたことが問題で、連立政権内の意思形成や、同意人事の審査の空洞化した実態をどうするのか、というのが本質的な問題かと思います。
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■『六ヶ所村ラプソディ』 斑目春樹教授発言
技術の方はですね、とにかく分かんないけれどもやってみようが、どうしてもあります。で、だめ、危ない、となったら、ちょっとでもその兆候があったら、そこで手を打とうと。おそるおそるですよ。
原子力もそうなんですね。
原子力もそういうところ絶対あります。
だって、例えばですね、原子力発電所を設計した時には、応力腐食割れ、SCCなんてのは知らなかったんです。
だけど、あの、まだいろんなそういうわかんないことがあるから、あの、えーと、安全率っていうかですね、余裕をたーくさんもって、でその余裕に収まるだろうなーと思って始めてるわけですよ。
そしたら、SCCが出てきちゃった。
で、チェックしてみたら、まあこれはこのへんなんか収まって良かった、良かった。
今まで、良かった良かったで、きてます。
ただし、良かったじゃないシナリオもあるでしょうねって言われると思うんですよ。
その時は、原子力発電所止まっちゃいますね。
原子力発電に対して、安心する日なんかきませんよ。
せめて信頼して欲しいと思いますけど。
安心なんかできるわけないじゃないですか、あんな不気味なの。
廃棄物の最終処分をすることに技術的な問題はなくても、そこを受け入れる場所が、なければ、今、困っちゃいますもん。
ないですよね、探せても、イギリスまで、
うん、ないですよ。
それは、大きな問題じゃないですか
え、いや、だから、あのー、えーと、基本的に、その何ていうのかな、今の路線で、今の路線がほんとに正しいかどうかは別として、今の路線かなんかで、替えがあるだろうと思ってるわけですよ。
というのは、最後の処分地の話は、最後は結局お金でしょ。
あの、どうしても、その、えーと、みんなが受け入れてくれないっていうんだったら、じゃ、おたくには、今までこれこれっていってたけど2倍払いましょ。それでも手を挙げないんだったら、5倍払いましょ。10倍払いましょ。どっかで国民が納得することがでてきますよ。
それは、経済的インセンティブと、そのー、あの、処理費なんてたかが知れているから、えー、たぶん、その、齟齬は来さないですね。
今、たしか、最終処分地を受け入れてくれるボーリング調査させてくれるだけで、すごいお金流してますね。
20億円ですよ。
あれがたかが知れてるらしいですよ、あの世界は。
そうなんですか。
原子力発電所って、ものすごい儲かっているんでしょうね、きっとね。
そりゃそうですよ、原子力発電所1日止めると、1億どころじゃないわけですよね。
だから、そういう意味からいくと、今動いている原子力発電所をつぶす気なんてアメリカ毛頭ないし、日本も電力会社、あるものはあるもの、できる限り使いたいというのがこれが本当、本音ですよ。

■浜岡原発での証言
(事故・トラブルについて、制御棒落下事故が明らかになる前に)「これは, かなりの知見が蓄積されています。したがって, これから先, 新しい知見が出てくることはないとは, やっぱり思いません。これから先も, 新しい知見は出てくると思います。だけれども, 大きな知見については, もう, 大体出たんではないかなというのが, 実は,私の, これは個人的な考えです。」(第13回主尋問)
制御棒の2本以上の同時の落下について、「起きるとは, ちょっと私には思えません。どういうふうなことを考えるんですか。それに似たような事象があったら, 教えてください。」(反対尋問)
「非常用ディーゼルが2台動かなくても, 通常運転中だったら何も起きません。ですから非常用ディーゼルが2台同時に壊れて, いろいろな問題が起こるためには, そのほかにもあれも起こる, これも起こる,あれも起こる, これも起こると, 仮定の上に何個も重ねて, 初めて大事故に至るわけです。だからそういうときに, 非常用ディーゼル2個の破断も考えましょう, こう考えましょうと言っていると, 設計ができなくなっちゃうんですよ。つまり何でもかんでも, これも可能性ちょっとある, これはちょっと可能性がある, そういうものを全部組み合わせていったら, ものなんて絶対造れません。だからどっかでは割り切るんです。」
「どっかで割り切るということは, ものを造るために, この程度を考慮すれば造ってもいいだろうという感じですね。」
「そのとおりです。」
「非常用ディーゼル発電機2台が同時に動かないということは, それ自体は,地震が発生したときに, 非常用ディーゼル発電機に寄り掛かっている, 動かさなくちゃいけないものが止まってしまうということがあり得るわけですから, 非常用発電機2台が同時に動かないという事態自体は, 大きな問題ではないですか。」
「非常用ディーゼル発電機2台が動かないという事例が発見された場合には, 多分, 保安院にも特別委員会ができて, この問題について真剣に考え出します。事例があったら教えてください。ですからそれが重要な事態だということは認めます。」
「重要な事態であれば, 非常用発電機2台が同時に止まったときに, ほかに何か, 別の重要な事態が加わって, それで事故が発生するというのは, 幾つか想定しなくてはいけないことではないんですか。先ほどから証人は, それに加えるのは小さなこと小さなことを加えなきやいけないから大変だと言って, ここは割り切るとおっしゃっていますけれども, 足す別の重大な事象ということが, 大きいことがあり得るんだということは, お認めにはならない。」
「我々, ある意味では非常に謙虚です。こういう事態とこういう事態とこういう事態の重ね合わせくらいは考えたほうがいいかなということについては, 聞く耳を持っております。是非こういうことについては考えてほしい, それはなるほど問題視したほうがいいということだったらば, 当然, 国の方でもそういうことについて審議を始めます。聞く耳を持たないという態度ではないんです。ただ今みたいに抽象的に,あれも起こって, これも起こって, これも起こって, だから地震だったら大変なことになるんだからという, 抽象的なことを言われた場合には, お答えのしようがありません。」(第17回 反対尋問)

コメント

_ o-tsuka ― 2010/03/30 13:50

党内トリウム派はゲイツ原発の調査に夢中とみた。

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