NPT再検討会議はじまる2010/05/03

原水禁派遣団
 5月3日、ニューヨークの国連本部で核拡散防止条約(NPT)再検討会議が始また。会期は28日まで予定。NPT再検討会議は、95年に当初の期限を迎えたNPTの無期限延長を決める運用検討会議の際に採択された「再検討過程の強化」と「原則と目的」に基づいて、5年ごとに開くこととしたもの。再検討会議の3年前からは毎年準備会議を開いている。

※95年NPT再検討・延長会議では3つの「決定」を採択した。①NPT延長に関する決定、②条約の運用検討プロセスの強化に関する決定、③核不拡散と核軍縮のための原則と目標に関する決定、である。

 2000年のNPT再検討会議では、①CTBT早期発効及びそれまでの核実験モラトリアム、②カットオフ条約の即時交渉開始、③STARTプロセスの継続と一方的核軍縮の推進、④透明性の強化、⑤余剰核分裂性物質のIAEA等による国際管理と処分、等を明記した「最終文書」が採択することができたが、2005年のNPT再検討会議では01年の同時多発テロ以降の米ブッシュ政権の単独行動主義的政策の影響もあって合意に至らず決裂した。
 今回のNPT再検討会議では、オバマ米大統領が「核無き世界」を主張するなかで、前回2005年の失敗を取り戻すことが出来るのかが問われる重大な会議である。楽観はできないが、5日には中東非核化地帯創設をうたった中東決議の再確認を盛り込んだ共同声明を発表、これまで米国がCTBTを批准するまでは批准しないとしていたインドネシアがCTBTの批准手続に入ることを表明するなど、前向きな動きも出ている。オバマ政権が核無き世界を目指すと言っているこの機会を逃すことなく、核軍縮をドドッと前進させたいもの。

国家公務員の政治活動規制を見直せ2010/03/29

 3月29日。2003年11月の衆院選前に「しんぶん赤旗号外」などを配布したとして国家公務員法違反(政治的行為の制限)に問われた旧社会保険庁の職員の控訴審で、東京高裁は地裁判決を破棄し逆転無罪を言い渡した。
 06年6月の東京地裁判決は、国家公務員法の政治的行為の制限と制限行為を具体的に定めた人事院規則の規定を合憲とした74年の最高裁判決を踏襲し「公務員の政治的中立性を著しく損なう」として、罰金10万円、執行猶予2年の有罪判決を下していた。
 東京高裁の中山隆夫裁判長は「政党機関紙配布が行政の中立的運営を侵害するとは考えられず、罰則適用は国家公務員の政治活動の自由に必要限度を超えた制約を加えるもので、表現の自由を定めた憲法に違反する」と違憲判断を示した。国家公務員法と人事院規則自体は合憲としたが、最高裁判決が政治的行為の禁止について勤務時間の内外や職種を限定していないことについて「不必要に規制が広すぎる」と指摘。被告の職務が、社会保険事務所で年金相談に回答するという裁量の余地がなく、管理職でもない点、機関紙を配布した日が休日だった点などをあげ、「職務とかかわりなく政党機関紙を配布しても行政の中立的運営が損なわれる危険はない」と判断した。国家公務員の政治的行為についても「刑事罰の当否を含め再検討されるべきだ」と踏み込んでいる。
 確かに公務員の政治的中立は必要だが、休日に、職務と無関係に、公務員であることを明かさずに行ったにすぎないビラまきが、「国の行政の中立的運営や国民の信頼の確保を侵害するとは考えられない」という判断はまったく正当。これを処罰することが「国家公務員の政治活動の自由にやむを得ない限度を超えた制約を加えるもので、憲法21条などに違反する」と結論付けた判決内容は画期的なものといえる。
 立川自衛隊宿舎イラク反戦ビラ入れ事件では、地裁の無罪判決を覆して、東京高裁が住居侵入罪で有罪判決(05年12月、一審の地裁判決は無罪)を下すなど、体制に対して批判的な言論・表現活動への弾圧が相次いでいたなかで、流れを変える画期的な判決だ。そもそも日本の国家公務員に課されている政治的行為の禁止は、諸外国と比べ広範であり厳格だ。表現の自由の過度な規制は民主主義の根幹に係わる問題であり、せめて地方公務員なみに緩和すべきではないか。
 ちなみに、地方公務員は地公法36条によって一定の政治的行為が禁止されているが、その範囲は国公法よりも狭く罰則の規定もない。

1974年の最高裁判決(猿払事件最高裁判決)
 最高裁は74年11月、猿払事件、徳島郵便局事件、総理府統計局事件の3事件について判決を下した。その内容は、
・国家公務員法第102条第1項、人事院規則14-7は憲法第21条に違反しない。
・同法第110条第1項第19号の罰則は憲法第21条、第31条に違反しない。
・同法第102条第1項の人事院規則への委任は、憲法に違反する立法の委任ではない。
 たとえ非管理職の現業公務員であって、職務内容が機械的労務の提供にとどまるものであり、勤務時間外に、国の施設を利用することなく、職務を利用せず、職務の公正を害する意図がなく、労働組合活動の一環として行なわれた場合でも、国家公務員法第110条第1項第19号の違法性を失わせるものではない。このような事件に同法、同規則を適用しても憲法第21条、第31条に違反しないとして3事件の被告人らを逆転有罪(いずれも反対意見あり)とするものであった。

足利事件の菅谷さんが再審無罪に2010/03/26

宇都宮地裁前
 3月26日、無期懲役刑での服役中に釈放された足利事件の菅家利和さんに対する再審が開かれ、宇都宮地裁の佐藤正信裁判長は「菅家氏が犯人でないことは誰の目にも明らかだ」と無罪判決を下した。
 判決は、逮捕当時のDNA型鑑定について、「科学的に信頼できると認めるには疑問が残」り「証拠能力がない」とした。また、菅家さんの「自白」についても、「信用性は皆無」とした。さらに、92年12月、勾留中に否認に転じた菅家さんを検察官が法廷外で取り調べ、再び自白させたことについて「刑事訴訟法の大原則に反すると断罪した。  裁判長は「17年半もの長きにわたり自由を奪う結果となり、申し訳なく思う」と謝罪し、3人の裁判官が立ち上がって菅家さんに深々と頭を下げた。再審で無罪を求めた検察側は同日、控訴しないことを地裁に申し立て、無罪が確定した。
 当然と言えば当然だし、菅谷さんの奪われた時間が戻ってくるわけではないが、冤罪が晴れたのはとにかく良かった。関係者の努力には頭が下がります。しかし、この裏には晴らされていない多くの冤罪があることを肝に銘ずるべきだ。同様の信頼性に疑問の残るDNA型鑑定で死刑判決を受けた飯塚事件の久間三千年死刑囚などは、すでに死刑が執行されてしまっている。これが冤罪だったらいったいどうすんだよ。警察も検察も取り調べの全過程の可視化にいつまでも抵抗してんぢゃねえよ。直ちに可視化すべし。
 警察の見込み捜査と自白の強要による被害者は菅谷さんだけではない。結局、真犯人を取り逃がしてしまったわけだから、なにより被害者や遺族が浮かばれない。

社民党と自衛隊 違憲か否か2010/03/12

村山総理
 3月12日の参議院予算委員会での福島党首の答弁が話題になっているらしい。現に「福島党首、自衛隊合憲認める」とか、「自衛隊は合憲 参院予算委で質問に“そうです”」などと報道されていて、問い合わせもある。
 実際には佐藤議員の質問には事実誤認が多いし、党首の答弁にも誤解を招きやすい不正確な部分がある。実際は自衛隊と憲法の問題ついて社民党としての認識はすでに固まっているのだが、今回に限らず党首の発言が党の公式見解を外れている場合が多い。党として自衛隊の存在は合憲としてきたし、そもそも与党として閣僚を出している以上、政府の組織を違憲だなどと言えるわけがないのである。当日、直前にもその旨は申し上げたのだが、たぶんその辺は腑に落ちていないのであろう。事務局の力不足にも責任があるかもしれない。

 ちなみに、社民党としての「自衛隊と憲法」の問題に関する認識は、村山政権時代に政策転換した内容が現在まで維持されている。

 具体的には、以下のようなものである。
●94年7月20日の衆院本会議の羽田孜議員の代表質問への村山総理答弁
 「私としては、専守防衛に徹し、自衛のための必要最小限度の実力組織である自衛隊は、憲法の認めるものであると認識するものであります。(拍手、発言する者あり)後が大事ですから、どうぞお聞きください。
 同時に、日本国憲法の精神と理念の実現できる世界を目指し、国際情勢の変化を踏まえながら、国際協調体制の確立と軍縮の推進を図りつつ、国際社会において名誉ある地位を占めることができるように全力を傾けてまいる所存であります。(拍手)」

●94年9月3日の社会党第61回臨時全国大会決定
①「非武装」は党是を超える人類の理想。「中立・非同盟」は東西対立が消滅し歴史的役割を終えた
②自衛のための必要最小限度の実力組織である自衛隊を認める。現在の自衛隊は憲法の枠内にある。日米安保条約は堅持する
③PKOには憲法の枠内で積極的に参加する。PKF凍結解除を含めた国際平和協力法の見直しはPKO協力の実績を踏まえて検討する

 61大会の議案の該当部分に対しては党の政策と内閣の政策を分け、党の政策は「自衛隊を違憲」としたまま維持すべきとする修正案が提案されたが、当時の久保書記長が「首相と党委員長で政策の使い分けはできない。自衛隊違憲を主張するだけでは政党の使命は果たせない」として否定し、修正案は賛成152反対222で否決、原案が採択されている。

 自社さ政権の崩壊後、村山政権時代の自衛隊容認を見直すべきとの声が上がり、98年1月の第4回党大会は以下のような決定を行ない、94年の政策転換を自己批判した。

●98年1月24日、社会民主党第4回定期全国大会決定
・1994年6月、社会党と新党さきがけの政策合意を自民党が承認することによって発足した村山政権は、自民党一党支配時代ではできなかった懸案(略)などに取り組み、リーダーシップを発揮しました。(略)
 就任直後の村山首相は、政権の首班として、また自衛隊の最高指揮官として、従来からの政府の憲法解釈を外交の継続性を尊重しました。村山首相は所信表明演説で「冷戦の終結によって、日本においてもイデオロギー対立の時代から現実に即した政策論争を行う時代へと大きく変わろうとしている」という認識を示し、「安保堅持・自衛隊合憲」というこれまでの社会党の基本政策とは異なる演説を行いました。しかし党員や支持者からは、この演説が突然のことであり、党内の手続を経ていなかったことに、不満が広がっていきました。
・社会党は1994年9月、第61回臨時大会を開催して安保・自衛隊などの基本政策の転換を行いました。その趣旨は、「自衛のための必要最小限度の実力組織である自衛隊を認め、現在の自衛隊は憲法の枠内にある」との新しい認識に立って「軍縮とシビリアン・コントロールを基本に、自衛隊の任務を厳しく限定し『目に見える専守防衛』に徹するための、防衛力の再編・整備と縮小に努める」とし、さらに「日米安保条約は、冷戦終結後の日米の役割増大や日本とアジアの関係を視野に入れて、引き続き堅持します」というものでした。
 少数党から送り出した首相を支え政権を安定させる責任がわが党にあったため、首相発言を契機に事後承認のかたちで転換が行われました。しかしこの転換は、党内論議の時間的余裕もなく、党大会での機関決定は行われましたが、党内外からさまざまな意見が寄せられました。また、市民・有権者の中には「基本政策を転換したことについてのきちんとした議論や説明がない」といった率直な疑問も存在しています。
 今後、これらの声に謙虚に耳を傾け、日米安保条約や自衛隊等の位置づけについては「2010年への政策ビジョン」の論議とあわせ、改めて国民的な議論を起こします。その際、私たちがめざすのは、単純に昔に戻ることではなく、21世紀の世界をリードできる平和・安保・外交政策をうちたてることです。

 この決定を受ける形で、99年になって当時の土井たか子党首を委員長に基本政策委員会を設置し、基本政策の再検討を行なうこととなった。事務局長を当時の田英夫外交防衛部会長が努めたこともあって、政審に着任したばかりの私が事務局を担当した。94年以前に戻すことも含めて、あらゆるパターンを検討したのだが、結局94年の政策転換を維持し、新たな基本政策を策定して上書きすることとしたのである。
 このような役割を果たすために作られたのが、2001年5月に公表された「二十一世紀の平和構想――核も不信もないアジアを」、通称「土井ドクトリン」と呼ばれている文章だ。土井ドクトリンでは、「憲法の理念」を強調し非軍事の世界を目指しながら、自衛隊自体は容認している。

●2001年5月「21世紀の平和構想」(土井ドクトリン)
 憲法第9条に基づいて「平和基本法」を制定し、肥大化した自衛隊の規模や装備を必要最小限の水準まで縮小するためのプログラムを策定します。当面、自衛隊に関しては、軍事力肥大を生む軍産複合体の増殖をおさえ、国会による文民統制のシステムを強化し、情報の公開を徹底させ、基本的人権に抵触する有事立法や秘密保護法をやめさせ、また隊内いじめ事件で発覚した自衛官の基本的人権侵害を防ぐ制度を創設します。(略)
 将来的には、いずれ自衛隊は国境警備、国土防衛、災害救助、国際協力などの任務別に分割し、縮小、改編することをめざします。

 土井ドクトリンの記述を見れば明らかなように、土井党首の基本的な立場は「ソモソモ論として違憲とは言わないが、周辺事態法以降の活動範囲をどんどん広げている自衛隊の実態は憲法の理念に反するのではないか」、「自衛隊の実態は憲法上問題がある」というものであった。
 2003年に党首となった福島党首は、こうした経緯や党の安全保障政策には直接関わった経緯がなかったこともあって、これまでの経緯とあまり関係なく、「法律論としては違憲」というトーンを打ち出すことも多かった。
 福島党首の下で、社民党の基本的な立場を再確認するために新たな「宣言」を策定することとなり、当時の保坂展人企画委員長の下で起草された。政審は直接担当せず企画委員会が事務局を担当したが、ここでは自衛隊は「現状、明らかに違憲状態」とされている。様々な議論の中で最終版で「現状」と「状態」を挿入する修正を加えたものであり、「ソモソモ論として違憲」ではないという判断が勝ったことを示している。

●06年2月「社会民主党宣言」社民党第10回全国大会決定
 現状、明らかに違憲状態にある自衛隊は縮小を図り、国境警備・災害救助・国際協力などの任務別組織に改編・解消して非武装の日本を目指します。また日米安全保障条約は、最終的に平和友好条約へと転換させ、在日米軍基地の整理・縮小・撤去を進めます。

 これが最新の党の公式見解である。その後の政策集等もこの立場で書いている。


 1、自衛隊の存在自体は憲法の枠内にあると考える。
 2、日本の平和や安全に関わりのないインド洋やアフガニスタンなどにまで活動範囲を拡大した自民党政権下の自衛隊の実態は違憲状態と言わざるをえない。
 3、鳩山内閣の下では、憲法の理念に基づいて自衛隊は運用されるはずであり、されていると考えている。


 存在自体は村山政権自体に合憲として現在まで変わらない。活動の実態と憲法の乖離はケースバイケースで判断していく。イラクやインド洋まで自衛隊を派遣していた自公政権下の活動の実態には違憲の疑いがあるが、鳩山政権下では憲法の理念に沿った運用がされるように努力するということだ。

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3月12日/参院予算委員会
(※当初、発言主旨を掲載したがご批判をいただいたので、事後に議事録に差替えた。)
佐藤正久君【以下敬称略】: 自民党の佐藤正久です。防衛政策について質問させていただきます。福島大臣、3月1日の予算委員会におきまして、自衛隊が合憲か違憲か、これについて社民党の見解を述べられております。覚えておられますか。
国務大臣(福島みずほ君)【以下敬称略】: 3月1日に述べたとおりです。
佐藤: 自衛隊は合憲か違憲か、まだ社民党は結論を出していないと言われました。思い出されましたか。
福島: そのとおりです。
佐藤: 自衛隊が合憲かどうか、政党としての基本的な考え方を持たなくて、本当に政党政治ができるんですか。今この瞬間も、自衛隊員は陸に海に空に、国内に国外に、防衛大臣の命令の下、体を張って国を守っているんですよ。与党の社民党が自衛隊が合憲、言わなくてどうするんですか。大問題だと私は思いますよ。平成18年の社民党大会におきまして、自衛隊は違憲状態と言われました。それから4年たって、今、社民党はもう与党です。与党の社民党が合憲と言わなくてどうするんですか。自衛隊は合憲ですよね、違いますか。
福島: 社民党宣言を私たちはつくりました。その社民党宣言をみんなで議論してつくったその結論をその後も変えておりません。当時、イラクに自衛隊が派遣をされている、そのような状況は問題であるというふうに考え、その状態は問題であるという議論を大いにいたしました。ですから、社民党としては、その社民党の宣言以上でも以下でもありません。それは社民党の見解です。
佐藤: やっぱり鳩山丸は泥船だというふうに多くの国民が思いますよ。与党の一員であってもそういうことを今でも言われている。国民は不安になりますよ。ほかの国から見ても異常です。国を守れずしてどうして命を守れるんですかと、そういう議論になりますよ。福島大臣、社民党はまだ決めていないと言われました。でも、福島大臣は閣僚です。一閣僚として、国務大臣として、自衛隊は合憲か違憲か、どちらですか。
福島: 社民党の見解は申し上げました。閣僚としての意見は控えさせていただきます。私は社民党党首ですから。
佐藤: 閣僚の意見を言わなくてどうして予算がこれは組めるんですか。もう一度お願いします。
福島: 社民党の見解は、以上、言ったとおりです。(発言する者あり)
 社民党の見解は申し上げたとおりです。閣僚としての発言は控えさせていただきます。
委員長(簗瀬進君)【以下敬称略】: 速記を止めてください。〔速記中止〕
簗瀬: 速記を起こしてください。暫時休憩します。
※午後2時12分~18分 休憩
簗瀬: ただいまから予算委員会を再開いたします。休憩前に引き続き、平成22年度総予算3案を一括して議題とし、質疑を行います。
福島: 内閣の一員としては、内閣の方針に従います。
佐藤: ということは、自衛隊を合憲と認めるということでいいですね。明確に御答弁をお願いします。
福島: 社民党の方針は変わりません。そして、内閣の一員として、内閣の方針に従います。したがって、自衛隊は違憲ではないということです。
佐藤: 福島大臣は自衛隊を合憲として認めたということでいいですね。お願いします。
福島: 内閣の一員として、内閣の方針に従います。
佐藤: はっきり答えてくださいよ。違憲じゃない、違憲じゃない、だけど、合憲と言っていないじゃないですか。明確にお願いしますよ。
福島: はっきり言っているじゃないですか。内閣の一員として内閣の方針に従います。
佐藤: 自衛隊は合憲ですか。福島大臣、もう一度お願いします。
福島: 内閣の一員として内閣の方針に従います。繰り返し申し上げているとおりです。
佐藤: 副総理、自衛隊は合憲ですか。
国務大臣(菅直人君)【以下敬称略】: 言うまでもありませんが、この予算には自衛隊の予算も入って、全員が閣議でサインをしておりますし、内閣としては自衛隊は合憲というふうにもちろん考えているというよりも、そういう形ですべてのことを進めております。
佐藤: 福島大臣、内閣の方針は自衛隊は合憲だということで、福島大臣も合憲と認めるということでいいですね。イエスかノーかでお願いします。
福島: そうです。
佐藤: 初めからそう言えばいいんですよ。この防衛予算というのは内閣全体で決めた意思でしょう。自分もサインしたんでしょう。それで、今この瞬間もハイチの方にも海外で隊員は行っているんですよ。何でここまで時間掛かるんですか。おかしいと思いますよ。防衛大臣、今のやり取りを聞いて、国の守り、あるいは隊員あるいは家族のことを考えたら、怒りとか憤りがわいてきませんか、防衛大臣。
国務大臣(北澤俊美君)【以下敬称略】: 国政の中核に位置する問題で、大臣を拝命しながら、感情的に怒りを爆発させるとか、そんなことは思いません。
佐藤: よく分からなかったんですけれども、防衛大臣、防衛大臣は指揮官なんですよ。このあいまいなままで防衛予算を作ったと。信じられませんよ。今この瞬間も隊員は動いているんですよ。その与党が合憲かどうか閣僚がなかなか言えない。大問題だと思いますよ。私も、ゴラン高原、イラクに隊員とともに赴きました。政権与党を信じていましたよ。その政権の与党の閣僚が合憲か違憲かなかなか言わない、これは前代未聞だと思いますよ。まさに、これは政権運営の中枢の人だと思いますよ。防衛大臣、なぜ今までこの件について福島大臣と話し合わなかったんですか。
北澤: 内閣の構成は、これが単独である場合と連立がありますが、連立の政権を組むときには、それに参画する各党の党首が寄って政権合意を作り上げるわけでありますから、その後に私は鳩山総理から任命を受けたわけであります。
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自衛隊は合憲 参院予算委で質問に「そうです」
3月12日/毎日新聞
 社民党党首の福島瑞穂消費者・少子化担当相は12日の参院予算委員会で、自衛隊を合憲と認める考えを示した。自民党の佐藤正久氏が「合憲と認めるか」とただしたのに対して、「そうです」と認めた。
 社民党は94年、村山富市首相(当時)が自衛隊を合憲と認めたが、自衛隊のイラク派遣を受け、06年の「社会民主党宣言」では「現状、明らかに違憲状態にある」としている。

福島党首、自衛隊合憲認める
3月12日/産経新聞
 社民党党首の福島瑞穂消費者・少子化担当相は12日の参院予算委員会で、自衛隊の憲法上の位置づけについて合憲と認めた。自民党の佐藤正久氏が「内閣の方針は合憲だ。合憲でよいか」とただしたのに対し、「そうです」と答えた。福島氏は1日の衆院予算委で「党として合憲か違憲か結論を出していない」と述べていた。

沖縄基地問題検討委員会への提案2010/03/08

提出後記者会見
 3月8日夕の沖縄基地問題検討委員会に阿部知子議員及び服部良一議員からの提案を提出した。
 提出したのは
○阿部・服部議員連名の「沖縄基地問題検討委員会への提案」
○阿部・服部議員連名の「普天間飛行場のグアム及び北マリアナ諸島への移設についての考え方」、同名のプレゼン資料、添付資料
○阿部議員の「私案」
○服部議員の「私案」
 2つの「私案」は平野官房長官に手渡し、内容については公表しないこととした。具体的な地名を含む「私案」はその内容が表に出ると、具体的な検討作業が困難となるためである。
 阿部「私案」は、国外への移設を実現するまでの間、普天間飛行場の機能を沖縄県外の地域の既存施設で分担して引き受けることとして、負担をなるだけ多くの地域で分かち合う内容。ヘリ基地機能のみを移転するのではなく、キャンプシュワブの地上舞台もセットで移転するという案だ。
 服部提案は、国外移設を前提に、沖縄に比較的近い無人島への移設を経過措置として提案する内容だ。
 全体は膨大な分量になるので、とりあえず最も基本となる「沖縄基地問題検討委員会への提案」(阿部議員・服部議員連名)を紹介したい。
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2010年3月8日 

沖縄基地問題検討委員会への提案

衆議院議員 阿部 知子 
衆議院議員 服部 良一 

 基本政策閣僚委員会の下に設置された「沖縄基地問題検討委員会」は、12月28日以降、積極的な議論を重ねてきた。社民党としても党内にプロジェクトチームを設け、本委員会の議論に並行して活発に検討作業をすすめてきたところである。これらの議論を踏まえ、本委員会委員阿部知子及び服部良一から、以下のように提案する。

○基本的考え方
 そもそも本委員会が設置された目的からしても、もっとも重要なことは沖縄県民の負担軽減である。沖縄の負担軽減を第一に考える以上、いかなる場合にも沖縄県内に新たな施設を提供すべきでないし県内施設の機能強化も認めるべきではない。辺野古への「代替施設」建設が選択肢とならないことは当然である。
 第二に、いわゆる「抑止力」の維持についても配慮をする。社民党としては、冷戦時代以来の我が国の安全保障政策の枠組みを根本から見直し、北東アジアに多国間の集団安全保障システムを構築しつつ、日米安保条約を経済や文化面での協力を中心にした平和友好条約に転換していくことを主張しているが、5月末までという限られた期間にこの議論を行ない結論を得ることは事実上困難と考えられる。国民的議論をすすめながら一定の方向性を出したうえ、米国の理解を求めていく必要があり、在日米軍の全体のあり方については中長期的な課題として取り組んでいく必要がある。
 第三には、米軍基地の恒久化につなげてはならないということである。戦後65年を経てなお日本には85の米軍基地が存在しているが、このような不正常な状態を固定化させるべきではない。地域の安全保障環境の改善をはかりつつ、在日米軍基地の整理縮小をすすめるべきであり、基地の拡大や恒久化につながるものとはすべきでない。
 なお、返還される施設・区域については日本政府が環境調査・浄化を行ない、跡地利用等についても責任を持って支援することは当然である。

1、A案: 在沖縄海兵隊の国外全面移転
 社民党は、日米関係を日本にとっての重要な二国間関係と認識しており、日米安保条約を直ちに変更する必要があるとは考えていないし、在日米軍の存在についても当分の間必要であると理解している。しかし、沖縄における米海兵隊の存在は、海兵隊という軍隊のそもそもの性格、在沖縄海兵隊部隊の現実の体制や機能から考えて、日本にとって必要不可欠な「抑止力」とはいえないと考える。検討委員会での議論でも納得のいく説明は得られなかった。
 仮に、在沖海兵隊の全部が撤退した場合にも沖縄県には、8000人以上の陸海空軍が存在し、極東最大の空軍基地である嘉手納飛行場や、原子力潜水艦が寄港するホワイトビーチ地区等も残る。海兵隊の撤退で地域の安全に大きな問題が生じるとは考えられない。  日本国外に撤退する場合の海兵隊部隊の移転先は米国政府が決めることだが、例えばグアム島やテニアン島などが候補地となりうるだろう。「沖縄からグアム及び北マリアナ・テニアンへの海兵隊移転の環境影響評価/海外環境影響評価書ドラフト」(米海軍・米グアム統合計画事務所/09年11月)では、グアムに在沖海兵隊全部と同規模の部隊を受け入れることが検討されている。グアムのカマチョ知事は「現行計画を超える兵力の移転は受け入れがたい」と述べたが、これはインフラ整備が追いつかないことが主な理由であり、道路や電気など社会資本整備で協力することが出来れば十分に交渉の余地があると考えられる。テニアン島は現行計画(グアム統合軍事開発計画/2006年7月)では訓練地として使用する予定とされているが、テニアン市のデラクルス市長は部隊自身の受け入れも可能としている。北マリアナのフィティアル知事も歓迎を表明しており、テニアンをはじめとした北マリアナ諸島への移転も現実的な選択肢である。
 すでに日米両政府間の「再編実施のための日米のロードマップ」(2006年5月)と「在沖縄海兵隊のグアム移転に係る協定」(2009年5月)に基づき、海兵隊の相当部分の移転の準備がすすんでいるが、この規模を拡大し実質的に全部が日本国外に移転することをまず第一に提案したい。この一部をテニアンなどの北マリアナ諸島に移転することも考えられる。この際、グアムへの移転を支援する現行の日米政府による枠組みを活用し、追加的な支援策を検討する必要がある。

①在沖縄海兵隊の全部が国外に撤退する。
②日本政府がグアムの受け入れ体制の整備を促進するために行なっている支援策について追加的な措置を実施する。
③テニアン等の訓練場整備費用、施設整備費用についても同様の支援策を実施する。
④受け入れ地のインフラ整備や地域振興等の民生面での協力を行なう。
⑤高速輸送船の提供と運用など、日本側が海兵隊訓練移転のためのインフラを提供する。
⑥返還された施設・区域の一部は日本政府の責任で使用もしくは管理し、必要に応じて米軍の訓練・補給のための共同利用、緊急時の一時利用を可能とする。
⑦「抑止力」の観点から返還される施設・区域(キャンプ・シュワーブを想定)の一部に日本の島嶼防衛部隊(陸自西部方面普通科連隊等)の移駐を検討する。

2、B案: グアムなどをキーステーションとしてローテーション部隊を日本本土で受け入れ
 沖縄駐留の海兵隊は、家族連れで2~3年の長期滞在するPCS(Permanent Change of Station)と、原則単身で赴任する6ヵ月ローテーションのUDP(Unit Deployment Program)の2タイプがある。PCSの兵員の多くは2006年の合意に基づいてグアムへ移転することが決まっており、現行案のまま実施した場合でも在沖縄海兵隊の多くはUDPとなると想定される。
 UDPの隊員は6ヵ月ごとのローテーションで運用され、沖縄に着任した海兵隊も沖縄を始点にオーストラリア、フィリピン、タイ、韓国などの訓練場や世界中の任務地へ派遣されており、必ずしも沖縄に常駐しているわけでもない。
 このローテーションの起点(キーステーション)をグアムなど日本国外に移したうえ、定期的な巡回パターンから沖縄を外し訓練等は日本本土で受け入れることを提案したい。普天間飛行場は閉鎖され、沖縄の海兵隊施設は全面返還となるが、代わりに日本立ち寄り時の訓練や補給の拠点となる施設・区域を日本本土に提供し、必要に応じて演習場等の一時利用も可能とする。

①第3海兵機動展開部隊(ⅢMEF)のUDPの起点を国外(グアム)に移転する。
②ⅢMEFのUDPの日本における展開地点を沖縄から日本本土に変更する。
③UDPの展開時に利用する滞在施設等を日本本土で提供し、必要に応じて演習場の一時利用を可能とする。
④普天間飛行場の第36海兵航空群は国外に移転することとするが、その一部及び支援部隊が常駐する施設を日本本土に提供することを検討する。
⑤日本政府がグアムの受け入れ体制の整備を促進するために行なっている支援策について調整を行なう。
⑥テニアン等の訓練場整備費用、施設整備費用についても支援策を検討する。
⑦受け入れ地のインフラ整備や地域振興等の民生面での協力について検討する。
⑧高速輸送船の提供と運用など、日本側が海兵隊訓練移転のためのインフラを提供する。
⑨返還された施設・区域の一部は日本政府の責任で使用もしくは管理し、必要に応じて米軍の訓練・補給のための共同利用、緊急時の一時利用を可能とする。
⑩「抑止力」の観点から返還される施設・区域(キャンプ・シュワーブを想定)の一部に日本の島嶼防衛部隊(陸自西部方面普通科連隊等)の移駐を検討する。
⑪受け入れ地のインフラ整備について日本政府が責任を持ち、新たな地域振興策を策定したうえ、住民の理解を得る努力を行なう。

3、C案: 在沖縄海兵隊基地機能の日本本土への移転
 最終的には普天間飛行場の国外移転を求めていくことは当然だが、それが実現するまでの間の普天間飛行場の危険を除去するために、辺野古の「代替施設」に移転する予定の普天間飛行場の機能を、そのまま沖縄県外に移設することも検討する。この場合、在沖海兵隊の他の要素との連携の必要に配慮する必要がある。
 一般的に、ヘリコプター部隊が単独で任務に着くことはなく、ヘリコプターが乗せる兵員、任務地まで移動するための揚陸艦や輸送艦、訓練設備や演習場、補給機能などの連携が重要であると考えられる。こうした要素間の距離が大きく運用上のデメリットが大きい場合、米国の理解を得ることが困難と考えられるので、あわせて移転先を用意するなどの相応の配慮を行なうこととする。

①沖縄を除く日本国内に普天間飛行場の第36海兵航空群を移転する。
②地理的条件によっては地上部隊等を同時に移転することも検討する。
③訓練移転のための費用の負担について調整(増額)する。
④返還された施設・区域の一部は日本政府の責任で使用もしくは管理し、必要に応じて米軍の訓練・補給のための共同利用、緊急時の一時利用を可能とする。
⑤「抑止力」の観点から返還される施設・区域(キャンプ・シュワーブを想定)の一部に日本の島嶼防衛部隊(陸自西部方面普通科連隊等)の移駐を検討する。
⑥受け入れ地のインフラ整備について日本政府が責任を持ち、新たな地域振興策を策定したうえ、住民の理解を得る努力を行なう。

○移設先候補地について
 移設先候補地の具体的な絞り込みに当たっては、①これまで非公式に検討された経緯のあった、あるいはあったと報じられた場所、②既存の自衛隊基地・米軍基地、③不採算で撤退が検討されるなど受け入れ可能性があると思われる地方空港、を中心に検討した。沖縄基地問題検討委員会の議論のなかで、これまで政府が沖縄県外への移転を真剣に検討したことがないことが分かっているが、沖縄の負担軽減をいうのであれば、沖縄県外への移設についても十分に検討すべきだと考える。限られた時間の中ではあるが、拙速に陥ることなく慎重な検証作業を行なうよう求めたい。
 今回、新たに提供される施設・区域については使用の期限を設け、定期的に延長の必要性について検証することに同意を求めることとしたい。またいずれの場合にも地域住民にていねいに説明し同意を得る誠実な努力が求められる。「望まれないところには配備しない」という米軍の立場を尊重するためにも、地域の同意と理解を得ること原則としたい。
 なお、具体的な移転先名の提案については、別途行なうこととする。
以上

「児童ポルノ禁止法」改正問題の論点メモ2009/12/10

うちの子です。児童ポルノかな?
 12月9日、法務担当の近藤議員と児童ポルノ問題にこだわって取り組んで来た保坂前議員が、民主党の小宮山議員、枝野議員とあい、今後の方向性等について協議した。
 選挙前に自公の旧与党が提出した児童ポルノ禁止法の改正案と民主党の改正案の修正協議が、政権交代を間に挟んで、概ね合意に至りつつある。こうした、状況を受けて、社民党としても態度を決めなくてはならない。
 児童ポルノの取り締まり強化自体には誰も異論がないが、場合によっては表現の自由への規制となるなるおそれもあり、このバランスが難しいところだ。
 具体的な対応については別途にまとめる予定だが、現段階での社民党としての基本的な考え方をとりあえず下記のようにまとめた(12月10日の常任幹事会で報告)ので、ご参考まで。
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2009年12月9日/社民党政審事務局

「児童ポルノ禁止法」改正問題の論点メモ

1、慎重審議の必要性
 児童ポルノの撲滅が国際的な重要課題となるなかで、日本においても児童ポルノ禁止法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律)を改正して、児童への性的虐待を防止することが強く求められている。しかし、児童ポルノの取り締まり強化が、運用次第で表現の自由を侵害するおそれも指摘されていることから、法律の改正にあたっては慎重な対応が求められる。旧与党案(自公案)をベースとした児童ポルノ禁止法改正案(修正案)には、いまだ疑問点が残り、社民党としてはこれを委員会審査を省略して拙速に成立させることには同意できない。改正論議の開始当初とは政治状況も大きく変わっており、当初の民主党案をベースに内閣提出法案とすることを検討すべきである。

2、定義の明確化・用語の改正等
 いわゆる「3号ポルノ」の定義を明確化(改正案第2条3関係)することは評価できるが、「性的な部位」としてあらたに「臀部」や「胸部」を加えるなど規制対象の範囲を広げていることには疑問がある。「性欲」というごく主観的な内容に関するものであるから可能な限り限定的に規定するべきではないか。例えば学術的・芸術的・文化的な価値のあるものを除外することを明記するなど、実態に即してより明確な規定とするべきである。

3、所持の禁止規程等の新設
 児童ポルノ等を所持・保管した者に対する罰則(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)が新設(改正案第7条関係)されているが、捜査当局による恣意的な運用によって表現の自由が侵されるおそれがいぜん否定できない。修正によって「自己の意思に基づいて保管するに至った者」、「当該者であることが明らかに認められる者」に限定するなど、実質的に「取得罪」とほぼ同様の立証が課されることとなったことは評価できるが、民主党案が当初規定(民主党案第7条)していた「有償」や「反復」といった要件を加えることがより望ましいのではないか。

4、被害児童の保護に関する制度の充実・強化
 被害児童の保護のための措置を講ずる主体や責任の所在を明確化し、被害児童の保護に関する施策や、フォローアップ体制を強化(改正案第3章関係)することは評価できる。改正案は関係行政機関の規定について社会保障審議会、犯罪被害者等施策推進会議が連携して検証・評価を行なうこととしているが、具体的な連携のあり方等について所管庁間の対応について確認し、具体的な認識を共有しておく必要がある。

5、インターネットの利用に関わる事業者の努力規定
 インターネット事業者の捜査機関への協力や、管理権限に基づく情報送信防止措置等を講ずることが、努力規定として定められている(改正案第16条3関係)が、通信の秘密を侵し表現の自由を侵害するおそれはないか。児童ポルノ掲示のために使用されているサーバーの管理者等はともかく、アクセスプロバイダまで対象とすることは、インターネット関係事業のすべてに負担を課すこととなり、対象が広範すぎる。

6、施行期日等の規定
 施行期日に関して、法律施行前に取得した児童ポルノの所持・保管については対象とすべきではなく、廃棄・削除義務を課すことで十分である。改正案では「当分の間」は適用しない(附則第1条関係)ことととしているが、立法者の意図をより明確にするためには「当分の間」との文言を削除すべきである。

7、「児童ポルノに類する漫画等」に関する調査研究
 旧与党案では、検討条項として「漫画、アニメーション、コンピュータを利用して作成された映像、外見上児童の姿態であると認められる児童以外の者の姿態を描写した写真等であって児童ポルノに類するもの」について調査研究を推進することが規定(附則第2条)されていが、これは「児童の権利を擁護する」(現行法第1条)という法の本来の目的を超えてるものであり、この法律の枠組みとは別のものと考えるべきだ。こうした認識を確認し、本改正案が表現の自由の規制に至るのではないかとの懸念を払拭する必要がある。保護法益を混同するべきではなく、附則や附帯決議にこれらを盛り込むことも避けるべきだ。

8、保護の対象とする年齢
 「児童」という特質を前提とする法であることを踏まえれば、民法上の成人年齢や結婚可能年齢、児童ポルノ禁止条約(児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約)や児童ポルノ禁止法が規定する「児童」の年齢等の差について整理していく必要があるのではないか。

以上

必殺仕分け作業はじまる2009/11/11

事業仕分け
 11月11日、行政刷新会議の下で予算の無駄を洗い出す「事業仕分け」が始まった。国立印刷局市ヶ谷センター体育館で、そんなものが市ヶ谷にあったんだねー。
 27日まで計9日間にわたり、447事業の必要性について判断するとのこと。「仕分け人」の国会議員や民間有識者らが3班に分かれ、国や独法の事業について担当省庁から説明を受け、1項目あたり1時間程度をかけて各事業を、①廃止②地方自治体に移管③10年度予算での計上見送り④予算の縮減などに仕分ける。一般の人も先着順で傍聴ができ、インターネットでも生中継される。
 9日には、事業仕分けにあたる民間有識者56人も決定している。知ってる顔ぶれも何人かいますね。へぇ~、て感じ。「構想日本」の加藤秀樹代表が刷新会議の事務局長に就任したことで、かねて「構想日本」が提唱していた「事業仕分け」みたいなかとをやることは分かっていたわけだけど、想像していたより大きな規模で全面公開でやるということなので、成り行きが注目されるところ。
 ひとたび制度化されるとなかなか変わらなかった行政の予算のシステムに風穴があく可能性もあるかも知れないけど、ポピュリズムで人民裁判的にパンパン決めていくことで、地味で多くの人に容易に理解してもらうことは出来ないけど本当は必要な内容が見捨てられていくおそれも否定できない
 ところで、こんなの行政評価局(旧総務庁行政監察局)がしっかりやってればよかっただけのような気もするけど、やっぱり霞が関の仲間内では出来なかったのかなぁ。
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行政刷新会議ワーキンググループ評価者
(国会議員)
【全WG】
枝野幸男・衆議院議員

【第1WG】
津川祥吾・衆議院議員、寺田学・衆議院議員
【第2WG】
菊田真紀子・衆議院議員、尾立源幸・参議院議員
【第3WG】
田嶋要・衆議院議員、蓮舫・参議院議員

【全WG】
泉健太・内閣府大臣政務官、大串博志・財務大臣政務官
※事業仕分けの対象事業ごとに、担当府省の副大臣又は政務官の一人を指名
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(民間有識者)
【第1WG】
青木宗明・神奈川大学経営学部教授、安念潤司・中央大学法科大学院教授、井澤幸雄・小田原市職員、石渡秀朗・三浦市職員、石渡進介・弁護士、内田勝也・情報セキュリティ大学院大学教授/横浜市CIO補佐監、翁百合・(株)日本総合研究所理事、奥真美・首都大学東京都市教養学部都市政策コース教授、川本裕子・早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授、田近栄治・一橋大学大学院経済学研究科教授/理事/副学長、辻琢也・一橋大学大学院法学研究科教授、富田俊基・中央大学法学部教授、新倉聡・横須賀市職員、ロバート・アラン・フェルドマン・モルガン・スタンレー証券(株)経済調査部長、福嶋浩彦・中央学院大学教授/前我孫子市長、政野淳子・環境行政改革フォーラム幹事

【第2WG】
飯田哲也・NPO法人環境エネルギー政策研究所所長、石弘光・放送大学学長、市川眞一・クレディ・スイス証券(株)チーフ・マーケット・ストラテジスト、長隆・東日本税理士法人代表社員、海東英和・前高島市長、梶川融・太陽ASG有限責任監査法人総括代表社員、木下敏之・前佐賀市長/木下敏之行政経営研究所代表、熊谷哲・京都府議会議員、河野龍太郎・BNPパリバ証券チーフエコノミスト、小瀬村寿美子・厚木市職員、露木幹也・小田原市職員、土居丈朗・慶應義塾大学経済学部教授、中里実・東京大学大学院法学政治学研究科教授、福井秀夫・政策研究大学院大学教授、船曳鴻紅・(株)東京デザインセンター代表取締役社長、松本悟・一橋大学大学院社会学研究科教員、丸山康幸・フェニックス・シーガイア・リゾート取締役会長、村藤功・九州大学ビジネススクール専攻長、森田朗・東京大学公共政策大学院教授、吉田あつし・筑波大学大学院システム情報工学研究科教授、和田浩子・Office WaDa代表

【第3WG】
赤井伸郎・大阪大学大学院国際公共政策研究科准教授、荒井英明・厚木市職員、小幡純子・上智大学法科大学院長、金田康正・東京大学大学院教授、伊永隆史・首都大学東京教授、高田創・みずほ証券金融市場調査部長チーフストラテジスト、高橋進・(株)日本総合研究所副理事長、中村桂子・JT生命誌研究館館長、永久寿夫・PHP総合研究所常務取締役、西寺雅也・山梨学院大学法学部政治行政学科教授、原田泰・(株)大和総研 常務理事チーフエコノミスト、速水亨・速水林業代表、藤原和博・東京学芸大学客員教授/大阪府知事特別顧問、星野朝子・日産自動車(株) 執行役員市場情報室長、松井孝典・東京大学名誉教授、南学・横浜市立大学エクステンションセンター長、山内敬・前高島市副市長/高島一徹堂顧問、吉田誠・三菱商事(株)生活産業グループ次世代事業開発ユニット/農業・地域対応チームシニアアドバイザー、渡辺和幸・経営コンサルタント/(株)水族館文庫代表取締役

安保理で「核なき世界」決議2009/09/25

鳩山総理
 9月24日、国連安全保障理事会は核軍縮・不拡散をテーマにした初の首脳級会合を開催し、米国が提出した「核兵器のない世界」に向けた取り組みについての決議案を全会一致で採択した。安保理として初めての決議だ。
 今回初めて安保理議長を務めたオバマ米大統領は「歴史的な決議だ」と意義を強調した。5常任理事国からはオバマ氏のほかロシアのメドベージェフ大統領、中国の胡錦濤国家主席、ブラウン英首相、フランスのサルコジ大統領の各首脳がそろい、鳩山首相を含む10非常任理事国の首脳らも出席した。
 鳩山首相は「世界の指導者にぜひ広島、長崎を訪れて核兵器の悲惨さを心に刻んでいただければと思う」と呼びかけた。被爆国の責任として「日本は核兵器開発の潜在能力があるにもかかわらず、核軍拡の連鎖を断ち切る道を選んだ」と強調、北朝鮮の核問題に直面しながらも核軍拡競争には加わらない立場を鮮明にし、非核三原則の堅持を表明した。鳩山首相は英語で演説したが、国連の演説は通常は母国語で行なうので、日本語で演説すべきではなかったかという批判もあるが。内容は具体性があるとはいえないかもしれないけど、まあ良かったのでは。
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核不拡散・核軍縮に関する国連安保理首脳会合の決議(要旨)
(前文)
 安全保障理事会は、核不拡散条約(NPT)の目標に沿って、核兵器のない世界に向けた条件を構築することを決議する。
 すべての加盟国に軍縮に関する義務の履行や大量破壊兵器の拡散防止を求めた、92年1月31日の国連安保理首脳会議での声明を再確認する。
 大量破壊兵器の拡散や運搬は国際的な平和や安全保障を脅かすことを再確認する。
 NPTは核不拡散体制の礎で、核軍縮の追求や核の平和利用に不可欠な基礎だと強調する。
 核兵器国による核軍縮の努力を歓迎する。
 米ロの第1次戦略兵器削減条約(START1)後継に向けた交渉決定を歓迎する。
 非核兵器地帯条約の締結に向けた取り組みを支持する。
 09年の1874決議(対北朝鮮制裁決議)や08年の決議1803(対イラン追加制裁決議)を再確認する。
 核テロの脅威に深刻な懸念を表明し、テロリストを利する核物質・技術支援を防ぐ効果的な措置をすべての国が取る必要性を認識する。
 来年の核安全保障サミットの開催を支持する。

(本文)
 核不拡散の義務を順守しない状況は安保理で問われることとなり、国際的な平和や安全保障への脅威となるか見極めることを強調する。
 NPT締約国に、NPTに基づき義務を全うすることを求め、NPT非加盟国には、非核兵器国としてNPTに加盟するよう求める。
 来年のNPT再検討会議がNPTを強化するものとなり、核不拡散・核の平和利用・核軍縮というNPTの3つの柱に現実的かつ達成可能な目標を設定できるよう、NPT加盟国に協力を求める。
 すべての国に対し、核爆発実験をせず、包括的核実験禁止条約(CTBT)に署名、批准するよう求める。
兵器用核分裂性物質生産禁止条約(カットオフ条約)の早期交渉入りを求める。
 核燃料サイクルへの多国間の取り組みに関する国際原子力機関(IAEA)の作業を奨励する。
 IAEA追加議定書への署名や批准、履行をすべての国に求める。
 NPTを脱退した国は、脱退以前のNPT違反について責任を負うことを確認する。

すべての権力を内閣に!2009/09/24

レーニンの画
 まるで「すべての権力をソビエトへ!」をスローガンに、あらゆる国家権力を簒奪していったボルシェビキの革命を見ているようだ。確かに革命を遂行するうえで、権力の一元化は必要だった面もあったのだが…。
 議員立法禁止という報道の元ネタは、9月18日に議員会館の民主党議員の事務所に配布された小沢幹事長名の文書らしい。小沢さんは、鳩山政権が出来るやいなや、政調の廃止を命じて、この紙を配って、イギリスに行ってしまった。たらたら党内論議をしていたらとてもまとまらない可能性があったと思うが、なにしろ本人がいないんだから押し戻しようもない。渋々ながら、小沢さんの指示した方向にすすめて行かざるをえないだろう。帰国した頃にはすでに既成事実化しつつあるわけだ。見事だよ。
 政権交代の成果を手っ取り早く実現するには、意志決定や権限を一元化することが効果的なのは事実だろうが、日本の議会制民主主義がどこまで耐えられるのか、絶対に安心とも言い切れない。一直線に独裁政権になるとはぜんぜん思わないけど、こういった手法が危険で、不安を感じさせるのは事実だ。
 古くさいナンセンスな慣例主義や前例踏襲の保守性、現状維持の弥縫策に長けた官僚政治、ナアナアの国対政治といった55年体制以来の日本政治の実態は、ある意味の安定感を持ち、擬似的に国民のコンセンサスを得るシステムとして機能してきた。
 法的にはかなり強力な権限を持つ総理大臣も、キングメーカーのような有力者が裏にいたり、派閥のボス連中の合意が前提だったり、族議員がいたり、役所の協力が必要だったり、産業界との綱引きが必要だったりと、非常に多元的な力関係の中に存在していた。公式・非公式の複雑な意思形成のバランスの上の存在であり、そうそう勝手気ままに振る舞うことは出来なかったのである。
 選挙で多数になったのだから法律通りに多数決でガンガン行きます。意思形成のプロセスは一元化してシンプルにすすめます。党内の足の引っ張り合いなんて認めませんよ、って方向なんだろうけど。大騒ぎして意見を出し合いながら「落としどころ」を探ってきたコンセンス型の「民主主義」に慣れた日本社会とは馴染まないんじゃないだろうか。
(※内容については別に)

政府・与党の一元化について2009/09/24

政府与党の一元化について
 議員立法の全面禁止とも報道された民主党の文書「政府・与党一元化における政策の決定について」の内容は下のようなもの。確かに政策機能をすべて政府に一元化し、「法律案の提出は内閣の責任で政府提案として行う」と書かれている。さらに、「優れて政治的な問題」については、「党で論議し、役員会において決定する」、それに係わる法律案の提出は、党の責任で議員提案として行う」とも。「議員立法原則禁止」と読めないこともない。
 でも、これだけではなんともいえないな。そもそも一般行政に関する法律案を政府提案とすべきであることは当然だ。内閣法制局を通らないような法案を安直に依頼立法するようなことは、本来、認めるべきではない。
 また、「優れて政治的な問題」については、これまでも議員立法と処理されてきたし、実質的には党で論議し各党の決定を基にして立法されてきた。政治倫理関係など立法のことだ。これもこれだけなら別に問題はない。
 問題はこれ以外の議員個人の自発的な立法活動を認めないのかどうかだ。一応、ここでは「党の決定を受けていない議員立法は一切禁止」とまでは明記されていない。漏れ伝わるところでは、小沢さんは党の決定と無関係に勝手に議員立法なんてダメと言っているようで、あわせて考えると「議員立法原則禁止」ということになるんだろうけど、報道自身にややフライング気味かもしれない。
 まだまだ、「一元化」の中身や、具体的な意思形成方法、国会運営の中身等々どうなるのかほとんど決まっていないのが現実。本当に議員立法禁止なんてことにもなりかねないのも事実だから、そうならないように声を大きくしていくことは必要かもしれない。そしてなにより質の高い議員立法をすすめていくことが一番ではないかな。
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2009年9月18日
民主党・会派所属国会議員各位
  関係 各位

  政府・与党一元化における政策の決定について

幹事長 小沢一郎

 日々の党務ご精励に敬意を表し、感謝申し上げます。
 鳩山政権発足にあたり、政府・与党一元化における政策の決定について、別紙の通りとすることといたしましたのでご報告申し上げます。
 議員各位におかれましては、必ずお目通しをいただきますようお願いいたします。

(別紙)

政府・与党一元化における政策の決定について


1、民主党「次の内閣」を中心とする政策調査会の機能は、全て政府(=内閣)に移行する。
①一般行政に関する議論と決定は、政府で行う。従って、それに係る法律案の提出は内閣の責任で政府提案として行う。
①選挙・国会等、議員の政治活動に係る、優れて政治的な問題については、党で議論し、役員会において決定する。その決定にあたっては、必要に応じて常任幹事会あるいは議員総会で広く意見交換を行う。従って、それに係る法律案の提出は、党の責任で議員提案として行う。
2、各省政策会議
①副大臣が主催し、与党委員会所属議員(連立各党)が参加する。その他与党議員も参加可能とする。
②政策案を政府側から説明し、与党議員と意見交換する。
③与党議員からの政策提案を受ける。
④提案・意見を聞き、副大臣の責任で大臣に報告する。
⑤政府の会議として、議事録要旨の公開など透明性を確保する。
⑥政府の会議なので、団体ヒアリング等については、対象の選定基準と与党議員の発言に十分留意する必要がある。
⑥部門会議は設置しない。
3、大臣チーム
①大臣・副大臣・政務官で構成。
②各省政策会議で、提案・意見を聴取し、大臣チームが政策案を策定し、閣議で決定する。