沖縄基地問題検討委員会への提案2010/03/08

提出後記者会見
 3月8日夕の沖縄基地問題検討委員会に阿部知子議員及び服部良一議員からの提案を提出した。
 提出したのは
○阿部・服部議員連名の「沖縄基地問題検討委員会への提案」
○阿部・服部議員連名の「普天間飛行場のグアム及び北マリアナ諸島への移設についての考え方」、同名のプレゼン資料、添付資料
○阿部議員の「私案」
○服部議員の「私案」
 2つの「私案」は平野官房長官に手渡し、内容については公表しないこととした。具体的な地名を含む「私案」はその内容が表に出ると、具体的な検討作業が困難となるためである。
 阿部「私案」は、国外への移設を実現するまでの間、普天間飛行場の機能を沖縄県外の地域の既存施設で分担して引き受けることとして、負担をなるだけ多くの地域で分かち合う内容。ヘリ基地機能のみを移転するのではなく、キャンプシュワブの地上舞台もセットで移転するという案だ。
 服部提案は、国外移設を前提に、沖縄に比較的近い無人島への移設を経過措置として提案する内容だ。
 全体は膨大な分量になるので、とりあえず最も基本となる「沖縄基地問題検討委員会への提案」(阿部議員・服部議員連名)を紹介したい。
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2010年3月8日 

沖縄基地問題検討委員会への提案

衆議院議員 阿部 知子 
衆議院議員 服部 良一 

 基本政策閣僚委員会の下に設置された「沖縄基地問題検討委員会」は、12月28日以降、積極的な議論を重ねてきた。社民党としても党内にプロジェクトチームを設け、本委員会の議論に並行して活発に検討作業をすすめてきたところである。これらの議論を踏まえ、本委員会委員阿部知子及び服部良一から、以下のように提案する。

○基本的考え方
 そもそも本委員会が設置された目的からしても、もっとも重要なことは沖縄県民の負担軽減である。沖縄の負担軽減を第一に考える以上、いかなる場合にも沖縄県内に新たな施設を提供すべきでないし県内施設の機能強化も認めるべきではない。辺野古への「代替施設」建設が選択肢とならないことは当然である。
 第二に、いわゆる「抑止力」の維持についても配慮をする。社民党としては、冷戦時代以来の我が国の安全保障政策の枠組みを根本から見直し、北東アジアに多国間の集団安全保障システムを構築しつつ、日米安保条約を経済や文化面での協力を中心にした平和友好条約に転換していくことを主張しているが、5月末までという限られた期間にこの議論を行ない結論を得ることは事実上困難と考えられる。国民的議論をすすめながら一定の方向性を出したうえ、米国の理解を求めていく必要があり、在日米軍の全体のあり方については中長期的な課題として取り組んでいく必要がある。
 第三には、米軍基地の恒久化につなげてはならないということである。戦後65年を経てなお日本には85の米軍基地が存在しているが、このような不正常な状態を固定化させるべきではない。地域の安全保障環境の改善をはかりつつ、在日米軍基地の整理縮小をすすめるべきであり、基地の拡大や恒久化につながるものとはすべきでない。
 なお、返還される施設・区域については日本政府が環境調査・浄化を行ない、跡地利用等についても責任を持って支援することは当然である。

1、A案: 在沖縄海兵隊の国外全面移転
 社民党は、日米関係を日本にとっての重要な二国間関係と認識しており、日米安保条約を直ちに変更する必要があるとは考えていないし、在日米軍の存在についても当分の間必要であると理解している。しかし、沖縄における米海兵隊の存在は、海兵隊という軍隊のそもそもの性格、在沖縄海兵隊部隊の現実の体制や機能から考えて、日本にとって必要不可欠な「抑止力」とはいえないと考える。検討委員会での議論でも納得のいく説明は得られなかった。
 仮に、在沖海兵隊の全部が撤退した場合にも沖縄県には、8000人以上の陸海空軍が存在し、極東最大の空軍基地である嘉手納飛行場や、原子力潜水艦が寄港するホワイトビーチ地区等も残る。海兵隊の撤退で地域の安全に大きな問題が生じるとは考えられない。  日本国外に撤退する場合の海兵隊部隊の移転先は米国政府が決めることだが、例えばグアム島やテニアン島などが候補地となりうるだろう。「沖縄からグアム及び北マリアナ・テニアンへの海兵隊移転の環境影響評価/海外環境影響評価書ドラフト」(米海軍・米グアム統合計画事務所/09年11月)では、グアムに在沖海兵隊全部と同規模の部隊を受け入れることが検討されている。グアムのカマチョ知事は「現行計画を超える兵力の移転は受け入れがたい」と述べたが、これはインフラ整備が追いつかないことが主な理由であり、道路や電気など社会資本整備で協力することが出来れば十分に交渉の余地があると考えられる。テニアン島は現行計画(グアム統合軍事開発計画/2006年7月)では訓練地として使用する予定とされているが、テニアン市のデラクルス市長は部隊自身の受け入れも可能としている。北マリアナのフィティアル知事も歓迎を表明しており、テニアンをはじめとした北マリアナ諸島への移転も現実的な選択肢である。
 すでに日米両政府間の「再編実施のための日米のロードマップ」(2006年5月)と「在沖縄海兵隊のグアム移転に係る協定」(2009年5月)に基づき、海兵隊の相当部分の移転の準備がすすんでいるが、この規模を拡大し実質的に全部が日本国外に移転することをまず第一に提案したい。この一部をテニアンなどの北マリアナ諸島に移転することも考えられる。この際、グアムへの移転を支援する現行の日米政府による枠組みを活用し、追加的な支援策を検討する必要がある。

①在沖縄海兵隊の全部が国外に撤退する。
②日本政府がグアムの受け入れ体制の整備を促進するために行なっている支援策について追加的な措置を実施する。
③テニアン等の訓練場整備費用、施設整備費用についても同様の支援策を実施する。
④受け入れ地のインフラ整備や地域振興等の民生面での協力を行なう。
⑤高速輸送船の提供と運用など、日本側が海兵隊訓練移転のためのインフラを提供する。
⑥返還された施設・区域の一部は日本政府の責任で使用もしくは管理し、必要に応じて米軍の訓練・補給のための共同利用、緊急時の一時利用を可能とする。
⑦「抑止力」の観点から返還される施設・区域(キャンプ・シュワーブを想定)の一部に日本の島嶼防衛部隊(陸自西部方面普通科連隊等)の移駐を検討する。

2、B案: グアムなどをキーステーションとしてローテーション部隊を日本本土で受け入れ
 沖縄駐留の海兵隊は、家族連れで2~3年の長期滞在するPCS(Permanent Change of Station)と、原則単身で赴任する6ヵ月ローテーションのUDP(Unit Deployment Program)の2タイプがある。PCSの兵員の多くは2006年の合意に基づいてグアムへ移転することが決まっており、現行案のまま実施した場合でも在沖縄海兵隊の多くはUDPとなると想定される。
 UDPの隊員は6ヵ月ごとのローテーションで運用され、沖縄に着任した海兵隊も沖縄を始点にオーストラリア、フィリピン、タイ、韓国などの訓練場や世界中の任務地へ派遣されており、必ずしも沖縄に常駐しているわけでもない。
 このローテーションの起点(キーステーション)をグアムなど日本国外に移したうえ、定期的な巡回パターンから沖縄を外し訓練等は日本本土で受け入れることを提案したい。普天間飛行場は閉鎖され、沖縄の海兵隊施設は全面返還となるが、代わりに日本立ち寄り時の訓練や補給の拠点となる施設・区域を日本本土に提供し、必要に応じて演習場等の一時利用も可能とする。

①第3海兵機動展開部隊(ⅢMEF)のUDPの起点を国外(グアム)に移転する。
②ⅢMEFのUDPの日本における展開地点を沖縄から日本本土に変更する。
③UDPの展開時に利用する滞在施設等を日本本土で提供し、必要に応じて演習場の一時利用を可能とする。
④普天間飛行場の第36海兵航空群は国外に移転することとするが、その一部及び支援部隊が常駐する施設を日本本土に提供することを検討する。
⑤日本政府がグアムの受け入れ体制の整備を促進するために行なっている支援策について調整を行なう。
⑥テニアン等の訓練場整備費用、施設整備費用についても支援策を検討する。
⑦受け入れ地のインフラ整備や地域振興等の民生面での協力について検討する。
⑧高速輸送船の提供と運用など、日本側が海兵隊訓練移転のためのインフラを提供する。
⑨返還された施設・区域の一部は日本政府の責任で使用もしくは管理し、必要に応じて米軍の訓練・補給のための共同利用、緊急時の一時利用を可能とする。
⑩「抑止力」の観点から返還される施設・区域(キャンプ・シュワーブを想定)の一部に日本の島嶼防衛部隊(陸自西部方面普通科連隊等)の移駐を検討する。
⑪受け入れ地のインフラ整備について日本政府が責任を持ち、新たな地域振興策を策定したうえ、住民の理解を得る努力を行なう。

3、C案: 在沖縄海兵隊基地機能の日本本土への移転
 最終的には普天間飛行場の国外移転を求めていくことは当然だが、それが実現するまでの間の普天間飛行場の危険を除去するために、辺野古の「代替施設」に移転する予定の普天間飛行場の機能を、そのまま沖縄県外に移設することも検討する。この場合、在沖海兵隊の他の要素との連携の必要に配慮する必要がある。
 一般的に、ヘリコプター部隊が単独で任務に着くことはなく、ヘリコプターが乗せる兵員、任務地まで移動するための揚陸艦や輸送艦、訓練設備や演習場、補給機能などの連携が重要であると考えられる。こうした要素間の距離が大きく運用上のデメリットが大きい場合、米国の理解を得ることが困難と考えられるので、あわせて移転先を用意するなどの相応の配慮を行なうこととする。

①沖縄を除く日本国内に普天間飛行場の第36海兵航空群を移転する。
②地理的条件によっては地上部隊等を同時に移転することも検討する。
③訓練移転のための費用の負担について調整(増額)する。
④返還された施設・区域の一部は日本政府の責任で使用もしくは管理し、必要に応じて米軍の訓練・補給のための共同利用、緊急時の一時利用を可能とする。
⑤「抑止力」の観点から返還される施設・区域(キャンプ・シュワーブを想定)の一部に日本の島嶼防衛部隊(陸自西部方面普通科連隊等)の移駐を検討する。
⑥受け入れ地のインフラ整備について日本政府が責任を持ち、新たな地域振興策を策定したうえ、住民の理解を得る努力を行なう。

○移設先候補地について
 移設先候補地の具体的な絞り込みに当たっては、①これまで非公式に検討された経緯のあった、あるいはあったと報じられた場所、②既存の自衛隊基地・米軍基地、③不採算で撤退が検討されるなど受け入れ可能性があると思われる地方空港、を中心に検討した。沖縄基地問題検討委員会の議論のなかで、これまで政府が沖縄県外への移転を真剣に検討したことがないことが分かっているが、沖縄の負担軽減をいうのであれば、沖縄県外への移設についても十分に検討すべきだと考える。限られた時間の中ではあるが、拙速に陥ることなく慎重な検証作業を行なうよう求めたい。
 今回、新たに提供される施設・区域については使用の期限を設け、定期的に延長の必要性について検証することに同意を求めることとしたい。またいずれの場合にも地域住民にていねいに説明し同意を得る誠実な努力が求められる。「望まれないところには配備しない」という米軍の立場を尊重するためにも、地域の同意と理解を得ること原則としたい。
 なお、具体的な移転先名の提案については、別途行なうこととする。
以上

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