「児童ポルノ禁止法」改正問題の論点メモ2009/12/10

うちの子です。児童ポルノかな?
 12月9日、法務担当の近藤議員と児童ポルノ問題にこだわって取り組んで来た保坂前議員が、民主党の小宮山議員、枝野議員とあい、今後の方向性等について協議した。
 選挙前に自公の旧与党が提出した児童ポルノ禁止法の改正案と民主党の改正案の修正協議が、政権交代を間に挟んで、概ね合意に至りつつある。こうした、状況を受けて、社民党としても態度を決めなくてはならない。
 児童ポルノの取り締まり強化自体には誰も異論がないが、場合によっては表現の自由への規制となるなるおそれもあり、このバランスが難しいところだ。
 具体的な対応については別途にまとめる予定だが、現段階での社民党としての基本的な考え方をとりあえず下記のようにまとめた(12月10日の常任幹事会で報告)ので、ご参考まで。
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2009年12月9日/社民党政審事務局

「児童ポルノ禁止法」改正問題の論点メモ

1、慎重審議の必要性
 児童ポルノの撲滅が国際的な重要課題となるなかで、日本においても児童ポルノ禁止法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律)を改正して、児童への性的虐待を防止することが強く求められている。しかし、児童ポルノの取り締まり強化が、運用次第で表現の自由を侵害するおそれも指摘されていることから、法律の改正にあたっては慎重な対応が求められる。旧与党案(自公案)をベースとした児童ポルノ禁止法改正案(修正案)には、いまだ疑問点が残り、社民党としてはこれを委員会審査を省略して拙速に成立させることには同意できない。改正論議の開始当初とは政治状況も大きく変わっており、当初の民主党案をベースに内閣提出法案とすることを検討すべきである。

2、定義の明確化・用語の改正等
 いわゆる「3号ポルノ」の定義を明確化(改正案第2条3関係)することは評価できるが、「性的な部位」としてあらたに「臀部」や「胸部」を加えるなど規制対象の範囲を広げていることには疑問がある。「性欲」というごく主観的な内容に関するものであるから可能な限り限定的に規定するべきではないか。例えば学術的・芸術的・文化的な価値のあるものを除外することを明記するなど、実態に即してより明確な規定とするべきである。

3、所持の禁止規程等の新設
 児童ポルノ等を所持・保管した者に対する罰則(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)が新設(改正案第7条関係)されているが、捜査当局による恣意的な運用によって表現の自由が侵されるおそれがいぜん否定できない。修正によって「自己の意思に基づいて保管するに至った者」、「当該者であることが明らかに認められる者」に限定するなど、実質的に「取得罪」とほぼ同様の立証が課されることとなったことは評価できるが、民主党案が当初規定(民主党案第7条)していた「有償」や「反復」といった要件を加えることがより望ましいのではないか。

4、被害児童の保護に関する制度の充実・強化
 被害児童の保護のための措置を講ずる主体や責任の所在を明確化し、被害児童の保護に関する施策や、フォローアップ体制を強化(改正案第3章関係)することは評価できる。改正案は関係行政機関の規定について社会保障審議会、犯罪被害者等施策推進会議が連携して検証・評価を行なうこととしているが、具体的な連携のあり方等について所管庁間の対応について確認し、具体的な認識を共有しておく必要がある。

5、インターネットの利用に関わる事業者の努力規定
 インターネット事業者の捜査機関への協力や、管理権限に基づく情報送信防止措置等を講ずることが、努力規定として定められている(改正案第16条3関係)が、通信の秘密を侵し表現の自由を侵害するおそれはないか。児童ポルノ掲示のために使用されているサーバーの管理者等はともかく、アクセスプロバイダまで対象とすることは、インターネット関係事業のすべてに負担を課すこととなり、対象が広範すぎる。

6、施行期日等の規定
 施行期日に関して、法律施行前に取得した児童ポルノの所持・保管については対象とすべきではなく、廃棄・削除義務を課すことで十分である。改正案では「当分の間」は適用しない(附則第1条関係)ことととしているが、立法者の意図をより明確にするためには「当分の間」との文言を削除すべきである。

7、「児童ポルノに類する漫画等」に関する調査研究
 旧与党案では、検討条項として「漫画、アニメーション、コンピュータを利用して作成された映像、外見上児童の姿態であると認められる児童以外の者の姿態を描写した写真等であって児童ポルノに類するもの」について調査研究を推進することが規定(附則第2条)されていが、これは「児童の権利を擁護する」(現行法第1条)という法の本来の目的を超えてるものであり、この法律の枠組みとは別のものと考えるべきだ。こうした認識を確認し、本改正案が表現の自由の規制に至るのではないかとの懸念を払拭する必要がある。保護法益を混同するべきではなく、附則や附帯決議にこれらを盛り込むことも避けるべきだ。

8、保護の対象とする年齢
 「児童」という特質を前提とする法であることを踏まえれば、民法上の成人年齢や結婚可能年齢、児童ポルノ禁止条約(児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約)や児童ポルノ禁止法が規定する「児童」の年齢等の差について整理していく必要があるのではないか。

以上