オバマ大統領は核政策を「チェンジ」できるか2009/04/07

長崎平和祈念像
4月5日、NATO創設60周年の首脳会議に出席するためチェコを訪問中のバラク・オバマ米大統領は、首都プラハのフラッチャニ広場で演説し、「核兵器のない世界」の実現に向けた決意を示しました。国際社会はオバマ氏の提起を概ね好意的に受けとめ、核軍縮に向けた国際協力の機運が高まりつつあります。今回は、プラハ演説の意義やその背景について考えてみたいと思います。

■原爆投下の責任を認める
まず第一に、オバマ氏は「核兵器を使用したことがある唯一の核保有国として、米国には行動する道義的責任がある」と、広島・長崎への原爆投下の責任を認めました。米国の歴代政権は原爆投下を日本の無謀な戦争を止めるため必要だったと正当化しており、これまで決してその責任を認めませんでした。オバマ演説はこの道義的責任を認め、核廃絶の「先頭に立つ」とはっきり宣言しています。そのことだけでも今回の演説は画期的だと評価したいと思います。

■脆弱なNPT体制
第二には、この新たな核政策がオバマ氏の個人的信念や理想に由来するだけではなく、米国にとって必然であったということす。
現在、核を規制する制度は核不拡散条約(NPT)しかありません。そもそもNPTとは、核兵器保有国が米ソ(当時)2国から英、仏、中と拡がるなかで、それ以上の核拡散を防ぐための妥協の産物として生まれました。67年1月時点で核兵器を保有していた米ソ英仏中を「核兵器国」として認め、その他の「非核兵器国」の核保有を禁じたのです。「核兵器がこれ以上拡がると大変なので核兵器は持たないことにしましょう。核兵器国もちゃんと核軍縮をしますから。非核兵器国の核開発を厳しく監視するかわり平和利用を認めます」という内容です。
この条約には当初から、5国だけ核保有を認めるのは不平等だという批判が浴びせらました。核兵器国はいっこうに核軍縮の義務を果たそうとはしないのに、非核兵器国はIAEA(国際原子力機関)の査察で厳格に縛られる。NPTに入らず核開発をする国も出てくる。非核兵器国にとってはNPTに協力する必要性が弱い、ごくもろい制度なのです。にも係わらず核の拡散を防ぐ仕組みは他にない。核保有国は核を独占し続けるためにはNPTを守り核軍縮の努力をしなくてはならないわけです。
さらに核兵器をめぐる状況が大きく変わりました。冷戦時代には米ソが互いに1万発もの核兵器を突きつけあうことで奇妙な安定が生まれました。このような核抑止の構造には、相手が一定の合理的・理性的な判断をするだろうというある種の信頼関係が必要です。しかし新たな核保有国が合理的な判断するかどうかは怪しい。核が抑止力としての役割を果たせるか分からなくなってきたわけです。まして国土や国民を持たないテロリストが核を持てば抑止もヘチマもありません。

■核抑止力から核不拡散へ
このような状況の中で、抑止力としての核の必要性よりも、核の拡散防止の重要性が高まって来たわけです。すでに冷戦終結後こうした議論がはじまっていました。96年にはリー・バトラー元米戦略空軍司令官ら世界の17ヵ国の元将官60人による核兵器廃絶を求める声明を発表され、98年にはカーター元米大統領など46ヵ国117名の文民指導者の声明も発表されました。その後、ブッシュ政権の単独行動主義政策の下で冷静な議論はすすみませんでしたが、07年にはキャシンジャー元国務長官ら米政界の重鎮4人による提言(フーバープラン)が出され、再びこうした動きがはじまろうとしていました。オバマ氏のプラハ演説もこうした流れの中にあるものです。冷戦型の核抑止力が有効性を失い、核不拡散・反テロのためにも核軍縮をすすめる必要が高まっているわけです。

■米国民が核を手放せるか
第三には、それでもなお道は険しいということです。
オバマ氏は、①ロシアとの核軍縮条約締結、②CTBTの批准実現、③兵器級核物質の生産停止条約交渉の妥結、など多くの具体的目標を掲げました。しかしどれをとっても実現は容易ではありません。なにより長年、核大国の位置に安住してきた米国民にとって核兵器は肯定的な存在だということです。オバマ大統領は米国民を説得することが出来るのか、そこがカギになるかも知れません。長年、核を振りかざしてきた米国の取り組みがどこまで世界の信頼を得られるかも分かりません。オバマ氏がこの困難な道をどう切り開くのか米国の核政策の「チェンジ」に大いに期待したいと思います。

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